【第1回】昆布巻を世界へ押し出した「応援の達人」 -マルキチ食品(株)社長 金子 宏氏(北海道)

マルキチ食品(株)社長
金子宏氏(北海道)

 
「砂山の砂に腹這い/初恋の/いたみを遠くおもひ出づる日」。

石川啄木が詠った「砂山」はかつて函館市の大森浜付近にありましたが、今は跡形もなく消え、晴れた日には下北半島を、夏の夜にはイカ釣り船の漁火を、本郷新作の啄木像は津軽海峡を飽かずに眺めています。

「日本列島おもしろ企業探訪の旅」。その第1回目に登場していただくのは、大森浜の目の前に 本社工場があるマルキチ食品(株)(金子宏社長、北海道同友会会員)さんです。

函館の特産品にこだわって

同社は、函館の特産品であるイカやコンブにこだわって、昆布巻、松前漬などを製造する食品メーカー。社長の金子宏さん(63)は、現在北海道同友会理事、函館支部副支部長として活躍されている、「ミスター同友会」の一人です。

神奈川県に生まれ、家業のハム会社から、義父が経営する同社へ転じたのが1977年。その年、同友会に入会します。「函館には知り合いが一人もいなかったので、同友会で人を知り、目標とすべき何人もの経営者と出会うことができた」と語る金子さん。会社を変えるのは若い力と学び、水産高校に何度も通って初めて採用した新卒社員が現在の工場長でした。

地域密着型の企業づくり

「常に革新することを忘れずに、オリジナリティに富んだ地域密着型企業をめざす」を経営理念に、4年前にはISO9001とHACCPを同時取得しました。平均年齢25.7歳。自主的に学ぶ社風が息づいています。品質方針に「昆布巻で世界に挑戦!」を掲げ、昨年の「モンドセレクション」では、キングサーモンとフォアグラの昆布巻が見事金賞・銀賞をW受賞しました。

漁協と共同開発で昆布巻用のコンブを種苗から作ったのは23年前。地域の特産品に付加価値をつけるため、同友会の仲間と函館昆布研究会を立ち上げ、昨年5月には、北海道大学水産学部の研究者の協力も得て、文科省の「都市エリア産学連携促進事業」の一環で同友会の仲間と(有)バイオクリエイトという会社をつくり、健康食材として注目のガゴメコンブを使用した栄養補助食品や化粧品も開発しています。

いつも笑顔を絶やさず、口ぐせは「一緒にやってみましょうよ」。金子さんは、会う人を勇気づけ、仕事って楽しいなと実感させてくれる「応援の達人」でもあります。

「潮かをる北の浜辺の/砂山のかの浜薔薇よ/今年も咲けるや」(啄木)

会社概要

 設立:1955年
 社員数:58名
 資本金:4200万円
 年商:6億円
 所在地:函館市宇賀浦町18-10
 TEL:0138-51-3316