【第5回】生産者と消費者をつなく掛け橋に-(株)アサノ社長 浅野 正一氏(宮城)

~現金不要の「おさいふカード」で地域密着~

(株)アサノ社長
浅野正一氏(宮城)

 
 大型スーパーや量販店の進出は、地方の中小都市にとっても大きな脅威。そうした中でも、宮城県南地区に7店舗を展開する岩沼市の食品スーパー、(株)アサノ(浅野正一社長、宮城同友会会員)は元気です。

携帯電話でタイムリーな特売情報

 自然の恵みである食材は、天候に左右されやすく、チラシを出そうとすると1週間前には価格動向を予測しなければなりません。予測が外れれば、どこかに無理が生じ、お客様に迷惑をかけることになります。そこで、食材を仕入れてすぐに、特売情報を携帯電話にメールで配信するようにしました。

 チラシに頼った安売り競争に走るのではなく、産地直送の高品質のものをそろえ、携帯電話にタイムリーな情報を送ることで、顧客の信頼を勝ち取ろうという戦略。お客様を店で待つのではなく、リアルタイムに店の情報を送ることで、サービスの充実と差別化を図っています。

「おさいふカード」の導入

 2003年4月には、「おさいふカード」という会員制のポイントカードを導入。このカードは「Edy」(前払い精算型の電子マネー)が搭載されており、入金しておけば現金と同じように支払いに使え、まさにお財布がわり。また、ポイント累積、会員認証などの機能が備わっており、レジの専用プレートにかざすだけで、すべてがワンアクションで済みます。現在、「おさいふカード」を保有する会員の数は1万人を超え、来店客の2人に1人が「おさいふカード」を使っている計算になります。

 来店客にはお年寄りが多く、携帯電話での情報発信や、一般的にもなじみの薄い「Edy」に抵抗がないか心配だったそうです。そして、何よりもまず、社内の理解が得られず、若手社員ほど、「どうせ金儲けのためだろう」という冷ややかな態度だったとのこと。

 しかし、「地産地消の考え方に基づき、生産者が丹精込めてつくった新鮮な食材を、その物語と一緒に消費者に提供していきたい。アサノはその掛け橋となり、『食』を通じて地域を再生したい」というのが、浅野社長の思いでした。

社員との語り合いで思いを共有

 その思いを共有できたのは、浅野社長が「第15期経営指針を創る会」に参加し、経営理念の成文化に取り組んだことが、きっかけ。受講期間終了後も、妥協せず、納得行くまで社員と語り合い、「おさいふカード」のシステムよりも、アサノの店作りのコンセプトを説きました。社員の心が動けば、後は速かった。

 「本当においしい完熟トマトを食べられるのは、期間が決まっています。それを消費者にも分かってもらいたい。そのトマトを食べたければ、また、来年を待つしかない。それが、旬というもの。」食育を通じて、社員も学ばなければなりません。お客様との競争です。

 アサノは、生産者と消費者双方が納得できる新しい流通のシステムをつくることをめざしています。その思いは、今、確実に広がりつつあります。

会社概要

 設立:1971年
 資本金:3000万円
 年商:45億円
 従業員数:175名(パート含む)
 事業:食品スーパー
 所在地:宮城県岩沼市二木2-1-3
 TEL:0223-25-2263
 URL:http://www.f-asano.co.jp/