くろき製茶(株) 社長
黒木 圭一郎氏(宮崎)
都城初の深蒸し茶
都城(みやこのじょう)島津家の藩医であった池田貞記(1733~1802年)翁が、当時、天下の茶どころであった宇治と、周囲を山々に囲まれた都城の地形、地味、風土が酷似していることに気づき、宇治で製茶技法を収得し、それを熱心に人々に伝授したことが、都城茶の歴史の始まりです。
だれにでもおいしく楽しめるお茶をと、深蒸しを都城で最初に取り入れたのが黒木氏の父上。そういった経営理念が受け入れられ、1962年の創業以来、自社ブランド茶「都乃城」を中心に、東京への支店開設や海外との取引も含めて積極的に事業を展開してきました。
しかし、経営環境の変化や、同族経営の甘えから資金繰りが悪化。3年前、社長就任と同時に、取引銀行2行を交えてのリスケジュール(返済計画の見直し・変更)を断行。7年計画での改革に取り組み中です。また、沖縄で行われた「社員教育活動全国研修・交流会」(2002年開催)に参加し、経営者のみが学ぶのではなく、社員と同じ場所、同じテーマで一緒に勉強することで、気づきが生まれ、そこから共に喜びを感じあえる職場がつくられることを確信しました。それ以来、社員との話し合いの場を大切にしています。
待ちの姿勢から攻めの経営へ
5年前からネット通信販売を開始。楽天市場では、自家焙煎緑茶専門店「e茶.com」(イー・チャ・ドットコム)で売れ筋ランキング1位になったことも。ネット販売では、お客様からの注文を受けてから、好みに合わせた焙煎具合で職人が仕上げ、つくりたての香りを届けます。
地元のお菓子屋さんによるお茶を使ったお菓子も詰め合わせ商品として用意されており、茶缶に名前やメッセージの入ったシールをはることもできるなどギフト商品として力を入れています。先週7月29日には、緑茶カフェの3号店がオープンしました(右上写真)。街なかに喫茶店が少なくなったこのごろ、静かにお茶を飲める空間が好評です。
緑茶文化を家庭の中に残すことを目的に、社会参加型事業として「まちの小さなお茶屋さん」もはじめました。自社開発した和紙焙煎器(会員へ貸し出し)を使って自宅で焙煎し、ご近所の人たちとおいしいお茶の入れ方を交流したり、緑茶の販売を行ってもらうシステムで、各地で活躍する小さなお茶屋さんは、全国2万世帯をめざしています。
緑茶文化の伝承が使命
85年に缶入り緑茶ドリンクが誕生して、ちょうど20年。メーカーは次々と新製品を投入し、ペットボトル入り緑茶の販売が緑茶飲料市場を広げています。
若年世代が緑茶を飲むようになったという効果もつかの間、30代家庭を中心に2リットルのペットボトルが食卓に上り、急須を使ってお茶を入れるという習慣が急速に失われていることに危機感を感じている黒木氏。
「これまでは物売りで考えていた。お茶を入れ共に飲むという文化を伝承することを使命と考え事業の再構築に取りかかっている」と語る姿はイキイキとしています。
社員18名が日本茶アドバイーザーの資格を取得。同友会での学びをいかしながら、社員と共に緑茶文化の普及で文化・教育・健康創造業としての再生に挑戦中です。
会社概要
創業:1962年
従業員数:53名(パート・アルバイト23名含む)
資本金:1000万円
年商:6億4000円
事業内容:製茶小売業(10店舗)、緑茶カフェ(3店舗)
所在地:宮崎県都城市早水町14-1
TEL:0986-25-6500
FAX:0986-26-7546
URL:http://www.echa.com/