【第18回】一人ひとりの美しい人生の実現に貢献-(株)石森屋材木店社長 石森 修一郎氏(福井)

~木のにおい、ぬくもり、光沢、肌触りを伝えたい~

(株)石森屋材木店 社長
石森 修一郎氏(福井)

21世紀への贈り物

 「アドレナリンをすべて使い切った。完成した時は寝込んでしまった」と当時を振り返る石森修一郎(株)石森屋材木店社長(福井同友会会員)。心血を注いで取り組んだ素晴らしい小学校が昨年、ついに完成しました。今、地域や専門家の間でも話題となっているものです。天然素材をふんだん使ったこの木造校舎はSPC工法(木質2方向ラーメン架構)という最新の木質構造が生かされています。

 木質集成材の梁(はり)と柱だけで構成し、強度も十分、明るく自由な空間をつくり出しています。ここでは、エコロジカルな環境をとことん追求し、優しい天然木が縦横に使われています。風力・太陽光、水力を生かした設備や自然の草木や生き物と共生するビオトープも備えられています。「子供たちが行きたくなる学校」、「21世紀から未来への贈り物としたい」がテーマでした。現在の石森屋材木店の事業の方向を象徴する建物です。

こだわりをもって攻めの経営

 石森氏は、明治初年の創業から数えて5代目。先代から永平寺御用達も拝命し、建築木材の製造・販売はもちろん、全国の社寺仏閣の建築、公共建築、一般住宅なども数多く手がけてきました。社寺建築にはすばらしい匠の技を持った越前と井波の宮大工(昨年大洲城を建築)がこれを支えています。

 一方、この10年ぐらいの経営環境はとても厳しく、天然林の伐採禁止や木材価格の高騰を背景に業界の淘汰も進んでいます。生き残りをかけて自社の改革・革新に取り組んだとのことです。

 打開の道は新しい構造技術の導入と建築業界への提案、そしてそれを支える若い社員たちへの期待でした。97年、社内改革とあわせ、こだわり続けてきた「健康」と「エコロジー」をキーワードに、攻めの経営に大きく転換。新たな挑戦がいま続いています。シックハウス対策対応の木質建材の提案はもちろん、業界でもパイオニアとなる木質構造のSPC工法やスーパーメタル工法の開発と普及に大きく踏み出しましたのです。SPC工法でつくった家は100年の構造耐久性や阪神大震災の4倍の震度まで耐える強度を持っています。また、この工法はライフスタイルに合わせて自由な改築ができ、お客様に生涯利益(建替え負担を軽減)を提案するものとなっています。

社員との学びあいを大切に

 この新しい分野の営業は、過去の自社を知らない10年未満の若手社員ががんばっています。新しい分野に踏み込んだことで、設計事務所や工務店への営業努力がこれまでに増して重要になっています。そのため、教育には特段の力を注いでいます。

 ISO9001の取得では全社員が内部監査員の資格を取りました。毎週2回、就業前の早朝7時~7時55分は技術研修に当ててきました。工法の理論学習を徹底し、新商品の開発をめざしています。講師は、その大半を社長自身が務めています。その準備と努力には、毎回大変な思いをしているとのことでした。同友会も15年、福井同友会設立当時から参加し、役員も経験した石森氏は人材育成を何より大切にする経営者です。

自然体での地域貢献

 さて、石森氏は私的に留学生のための寮、「同学会館」を20年近く運営しています。家賃はわずかに月2,500円。もともと地元大学校からの依頼を受けて、使っていなかった社員寮を改造し、提供しています。中国を始めアジア各国の学生がこれまで40人近く利用したそうです。12月には恒例の餃子パーティーが行われ、当社の「キツツキホール」には留学生や地域の人たちが大勢あつまります。そこでは、石森氏のフルート演奏も恒例です。地域貢献もさりげなく、自然体の方です。

会社概要

 創業:1868年
 従業員数:27名
 資本金:2200万円
 年商:12億円
 事業内容:大規模木造建築、寺社仏閣建築、木工事、
       健康建材販売及び製材
 本社所在地:吉田郡松岡町兼定島14-36-7
 TEL:0776-61-2222
 FAX:0776-61-2224
 URL:http://www.ishimori.jp/
 関連会社:(株)石森屋ホームサービス、(有)石森屋ウッドワークス
 
 ミッション・ステートメント
  我が社は21世紀の地球環境、人類未来を守る「森林」の保全に貢献する
  ため「木構造の振興」の重責を担っている。その為、環境保全木質構造
  プロフェッショナル集団として常に最先端の技術ソフトシステムを構築
  しつづけ、常に世の中に必要とされる企業をめざす。