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【第21回】心の感動を与えるバリアフリー旅館-(有)大石屋社長 増田 幸信氏(三重)(2005.09.07)

  (有)大石屋 社長
増田 幸信氏(三重)

 どこか昭和30年代を彷彿させる二見浦の旅館街の中でひときわ目立つ淡いグレーの純和風旅館、それが(有)大石屋(増田幸信社長、三重同友会会員)です。

 玄関を入るとほんのりとした明かりとりと、派手さのない出迎えに心が癒されます。木や畳の質感を重視し、ゆったりとしたつくりになっており、仲居さんにも気ぜわしさがない、しっとり落ち着いた風情で女性に人気です。

生きる感動を感じられる空間を提供したい

 4年前に改装して以来、客足の絶えることがありません。その原点は、8年余前の車いすを押して北海道からお越し頂いたある一組の老父と娘の宿泊を受けたことにあります。バリアフリーではない不便さ、そして何よりもその老父と娘の姿が、増田氏の父と自分とにダブって見えたことでした。というのも、増田氏の父も10年余り介護を必要とする体だったからです。

 そのことがきっかけで完全バリアフリーの旅館再生へと踏み出す決意を固め、同時に、全国の優れた旅館を調べ、訪ねる旅に出て行くことになりました。機会があれば訪問し、そこの経営者と話しをすることで多くのことを学んだといいます。ところが、全国の優れた旅館を突き詰めていくと、同友会会員が多いことに増田社長は勇気づけられました。特に、長野同友会の岩の湯の金井辰巳社長と今回のリニューアルに携わって頂いた倉橋英太郎氏との出会いが自分の経営者としての生き方や価値観を見直す力を与えてくれ、現在の旅館再生の決め手となりました。

 このような背景で生まれた新生「大石屋」は、宿泊する人にとって「心の感動」や「生きる喜び」を与え、心の癒しや生きる力が感じられる空間を提供する旅館を目指すこととなりました。

自分の思いを直接お客様に伝えるために、ITを活用

   同時に、これまでの旅行代理店依存の体質を変え、自分の思いを直接お客様に伝えるために、コンピュータを活用しての集客に着手。自分の思いをストレートに打ち出すことで「お客様と直接対話する」が今は楽しいとのこと。現在は、ネットからの予約が約70%、後は電話での予約です。最近では、2004年8月から1年間を通じたユーザーアンケートを数値化し、旅行サイトである「じゃらんnet」の部屋施設部門で東海エリア1番となりました。また、今年6月には楽天の「楽天トラベルプレミアムで評価の高い宿」で全国第2位となりました。

 現在は、口コミや紹介の予約が多くなっており、また、リピーターが増えています。増田社長は「来る人にとって本当にいい物を作る。偽物を作らない」という気持ちで行って来ただけと語ります。そして、不思議なもので、マーケットの絞込みの結果、「だんだん同じ雰囲気のお客様ばかりが集まる」ようになってきたともいいます。最近では予約するメールに「母親を連れて親娘で行きます」など、来られる方がさまざまなメッセージを添えて送られるとのことです。

これからも人間臭いおもてなしを

   大石屋は、基本的に畳中心のフロアであり、どこかの旅館にあるスリッパがありません。だから素足で歩くことができます。しかも段差がないのでお年寄りや障害者でも安心して歩けます。圧巻は、エレベーターの中が畳敷きということ(右写真)。兎にも角にも風呂も床も、部屋へ入るのにも段差がないので館内を歩いても気が楽なことが受けています。

 増田氏は「人間の心の機微の大切さを前述の金井社長から教えられましたが、今、その機微の持つ意味が分かりかけてきた」といいます。

 そのため、接客の要となっている社員のみなさんと毎日のミーティングを行い、みんなが同じ気持ちになって接客できるよう研修会などにも力を入れています。特に、「じゃらんnet」や「楽天トラベル」の評価や口コミは、働くみなさんの励みにもなっています。

 最後に、増田氏はこれまでを振り返り、「92年に同友会へ入会して当初はスリーピング会員だったが、その後支部幹事を受け、さまざまな経営者から学んだり、全国の優れた経営者との出会いがあったからこそ今日がある」と語りました。

会社概要
 設立:1887(明治20)年
 従業員数:23名(パート含む)
 資本金:300万円
 年商:2億円
 事業内容:旅館
 所在地:三重県度会郡二見町江569-75
 TEL:0596-43-2074
 FAX:0596-42-1617
 URL:http://www.oishiya.co.jp/
 e-mail:info@oishiya.co.jp

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