【第13回】全社一丸で新分野にチャレンジ-蔵前産業(株) 社長 橋本 勝氏(群馬)

蔵前産業(株) 社長
橋本 勝氏(群馬)

 蔵前産業(株)(橋本勝社長、群馬同友会会員)は、工作機械の異常をリアルタイムで知らせる装置を前橋市内のソフト開発メーカーと共同開発。今年2月には、関東経済産業局から中小企業新事業活動促進法に基づく新連携計画の支援対象に認定されました。群馬県では4件が認定されている新連携計画。これを弾みに装置改良を進め、早期の商品化を目指しています。

取引先の海外展開で危機に直面

 同社は、機械加工メーカーとして金型加工や精密部品加工などを主な業務として事業展開。しかし、1994年ごろから家電製品のプレス金型などが海外流出とともに、国内の金型産業が空洞化に直面します。2002年には医用機器部品製造の主力取引先が中国での本格生産を始め、売上高が23%も落ち込む影響を受けます。なかでも主力生産品のX線診断装置の駆動レールは、一気に前年度受注の5%にまで激減。取引先の海外展開による影響は、甚大なものでした。

若い社員の力を生かす

 会歴32年を迎え、今なお同友会で学び続ける橋本氏。学び得たことの一つとして「中小企業の発展は、全社一丸となってチャレンジすること」と語ります。

 その言葉通り、環境に優しい紙容器のプレス金型開発を皮切りに、新たな分野を社員と共に次々と開拓していきます。折り紙ポットの研究では、日本古来の伝統工芸である自由な発想の折り紙に数学的解析を加え、一枚のブランク(展開図)から一体成形される底の深い円筒状の紙容器を開発。製品特許と理論特許を取得しました。

 しかし、「特許取得以上に、この開発による人材の育成が何よりの収穫」と言います。「自分も技術屋だったから」と若い社員の創造性と思い切りの良さを高く評価する橋本氏。一連の開発による社員の成長が、異常診断機を筆頭に、新分野の進出にも生かされています。

社員とともに山頂めざして

 機械システム異常診断機は、経験や勘だった部分を振動と音の解析で科学的に診断することができます。機械加工分野において、精度の高い診断ツールの需要は高く、旋盤加工機、マシニングセンタをはじめ、多くの機械に搭載されることが期待されます。また、機械加工だけではなく橋の強度調査や飛行機の機体損傷の早期発見、地震計など、あらゆる分野にも応用できる可能性があります。新連携計画に踏み切ったのも産官学の協力で精度を上げ、可能性を広げる狙いからです。

 紙金型からの出発が、いまでは宇宙・航空機分野にも進出している蔵前産業。橋本氏は、「世界中のあらゆる産業において、異常診断機が役立つ」と、更なるチャレンジを止めることがありません。これからも試作開発型企業としての発展をめざし、趣味である登山に例えて「社員と一緒に、一歩ずつ上へ進んでいくだけ」と、見上げれば首が痛くなるほどの山頂をしっかりと視界にとらえています。

会社概要

設立:1969年
社員数:35名
資本金:4800万円
年商:5億6000万円
業種:特殊鋼販売、各種金型設計製作・加工
所在地:群馬県前橋市上大島町176-44
TEL:027-261-3552
FAX:027-263-0414
URLhttp://www.maebashi-cci.or.jp/kigyou/scripts/eid_home.php?eid=12