【第15回】「経営者の力で経営する会社」から「社員の力で経営するみんなの会社」へ―(株)オプス 社長 菅原 俊樹氏(宮城)


「他人(ひと)を育てる人』を育てる連鎖で

(株)オプス 社長 菅原 俊樹氏(宮城)

「社員のために生きる」から「社員と共に生きる」へ

 ガラス清掃

 (株)オプス(菅原俊樹社長、宮城同友会会員)は創業から数年は下請け100%の業態で、「売上重視・効率追求型」の経営をしていました。しかし、菅原氏が同友会で突きつけられた大きなテーマは、「なくてはならない会社」「価格決定権を持つ」この2点でした。
 ある時、菅原氏は日々必死に働く社員を見て、「創業時に描いていた会社の未来とは違う。このままで社員は幸せになるのだろうか。自分たちの仕事は報われているのだろうか」と考え始め、「社員の“今”ではなく“未来”を守る」ため、下請けから元請け転換への決心をし、第一歩を踏み出します。菅原氏の「よい社長になりたい、社員を幸せにしたい」と創業時から持ち続けてきた思いが「社員のために生きる」から「社員と共に生きる」へと変化した時でした。
 

「他人(ひと)を育てる人」を育てる連鎖への転換

社屋

 10年前、正社員がまだ10人にも満たなかったころ、菅原氏が全社員と面談をした際にショックを受けたことがありました。それは、「社員同士の中に信頼関係がつくられていない」「会社に尊敬する人がいない」ということでした。以来、(1)幹部が人を育てること、(2)社員同士の信頼関係を築くことの2点を経営の重要テーマに位置付けました。
 当時の菅原氏は「よい社長」とは安い給料で何倍も働く社長だと考え、「私の教えたとおりにやりなさい」と社員全員を直接育成していました。しかし、部下を育てるという一番やりがいのあるところを自分が独り占めしていたことに気付き、現在では幹部の人育て・学ぶ場をつくっていくことが経営者の仕事だと考えるようになり、「他人(ひと)を育てる人」を育てる連鎖をつくる取り組みをしています。
 

現状は上司(幹部・経営者)の力量の投影

 意識的に取り組んだのは会社の会議(社内討論会、幹部会議)と面談(上司・部下との直系面談、社長面談、横の連帯である別系声がけ)でした。会議をお互いに知り合う場、支援する場と位置付けて取り組みました。面談は直系面談、それをフォローする意味で社長面談、別系声がけがあり、会社全体で多面的なアプローチを行っています。菅原氏は「人を育てるには上司(幹部・経営者)の心構えが必要不可欠。現状は上司の力量の投影だと覚悟を決めることなしには、信頼関係は絶対にあり得ないと考えている」と語ります。
 

(株)オプスの経営の原点

 菅原氏は受験での挫折感を胸に20歳の時に上京し、フリーターのような生活の中「自分の将来はどうなるのだろう」と不安な毎日を過ごしました。窓ガラス清掃のアルバイトから正社員に登用され、仕事を通して自信を得た時に初めて将来に向かって生きる希望が湧いてきました。31歳で帰郷し、その経験を生かしたいと(株)オプスを設立しました。
 菅原社長は語ります。「清掃という仕事は老若男女に雇用の窓口を広く持ち、誠心誠意仕事に励めば、きれいにするという目的をだれでも達成できるすばらしい仕事。私の夢は仕事を通じてだれもが自分の大切さを実感でき、人生に自信を持って生きることができる会社をつくること」。
 (株)オプスの「共に生きる経営」の挑戦は続きます。
 

会社概要

設 立 1992年
社員数 約150名(正社員22名)
資本金 1000万円
年 商 3億2400万円(2007年)
業 種 総合ビルメンテナンス(建物の清掃・設備の保守、点検、管理)
    厨房・空調ダクト清掃、高所各種作業請負
所在地 宮城県仙台市青葉区小田原5-1-45
TEL 022-722-9901
URL http://www.opus-gr.com