【第1回】原料急騰には消費者本位の商品づくりで対抗―服部製紙(株) 会長 服部豊正氏(愛媛)

服部会長

服部製紙(株) 会長 服部豊正氏(愛媛)

 

 服部製紙(株)(服部豊正会長、愛媛同友会会員)は、手抄和紙の製造を起源に、家庭紙全般にわたる商品開発を手がけてきました。服部氏が「中国・四国ブロック同友会代表者会議」(6月6日、鳥取県米子市)で報告した概要を紹介します(編集部)。

経営圧迫する原料等の値上がり

 
 ここへきての原料等の値上がりは大変経営を圧迫しています。5月にA重油が1リットルあたり9円50銭上がりましたが、当社はそれだけで利益が100万円吹っ飛びました。1カ月の油代が3年前350万円から400万円だったのが現在は1200万円になっています。

 油の値上がり以上にこたえているのが、主原料の値上がりです。3年前、パルプ1キログラム60円前後だったのが、現在は100円前後、古紙は3年前の11円が現在22~24円です。古紙は大手も大量に集めていますし、中国も集めているので、手に入りにくくなっています。こうした環境変化で、年商32億円の当社で、3億円のコストアップになりました。

使命感に基づく商品づくりで

 
 当然のことながら、コストアップをどう吸収するかが当社にとって大きな課題です。トイレットペーパーやティッシュだけでは生きていけません。当社のコストアップ対策の基本戦略は、地球環境保全のために家庭排水をきれいにする商品を提供することです。ここに至るまでには、同友会入会後20年以上にわたる学びと試行錯誤がありました。

 松山市で行われる同友会理事会への往復の5時間、同じく理事で同業の宇高昭造さん(泉製紙(株)社長)と車中でいろんな話をしたことが、現在の戦略の決め手になっています。
 

 愛媛同友会の元代表理事井浦さんが一貫して「寝たきり老人をなくす」ことを掲げて福祉機器の開発に取り組んでいるのを見て、宇高さんと私は「井浦さんのように目的、使命感を持って商売に打ち込めたらいいね。われわれの業界は価格競争ばかりでなかなか使命感を持ちにくい、なんとかしたい」と話していました。そんなやり取りから私は、“本当に消費者に喜んでもらえる商品をつくりたい”という思いを強くしていきまた。

快適さの追求と地球環境をテーマに

 
 もう1つの決め手は、泉製紙とトイレットペーパーで競争しても技術的には勝てないということでした。16年前、幹部社員と1泊の会議を行い、今後の方向性を討論しました。そこでの結論は、「人間は明るいところが好きだし、快適な生活を望んでいる、そのための商品づくりを柱にしよう」ということでした。

 「アメニティ&エコロジカルライフスタイル」というコンセプトが確定しました。基本戦略が明確になると、いつも問題意識を持って物事を見ることができるようになります。社員も「健康と環境」というテーマをもって会社の方向を考えるようになりまた。

“きれいな家庭排水”で商品開発に力

 
 当社にとっての最大のテーマが「水」です。家庭排水をきれいにするための商品開発にいちばん力を入れています。食器を洗う前に粗拭(あらぶ)きするための「キッチンかたづけペーパー」、廃油を下水に流さないための「かたづけポイ」などを開発。

 環境負荷の少ない洗浄液を採用した商品を「sndek」と名付け、シリーズ化して開発しており、ブランドとして育てたいと考えています。製紙業界は厳しさが続きますが、世の中が求めている商品を開発しウエイトを高めていけば、生きていけると考えています。

会社概要

創 業:1914年
設 立:1950年
資本金:8600万円
社員数:115名
年 商:32億円
業 種:トイレットペーパー、キッチンペーパー、油こし紙、化粧品等製造
所在地:愛媛県四国中央市金生町山田井
TEL:0896-58-3306
URLhttp://www.hattoripaper.co.jp/

※本記事は『中小企業家しんぶん』2008年7月25日号より抜粋しました。