【第31回】北国の雪道を守る技術~消雪作業の節水・節電を実現~(株)ナリキ 専務 成伯 将史氏(富山)

成伯専務

(株)ナリキ 専務 成伯 将史氏(富山)

 (株)ナリキ(成伯 将史専務、富山同友会会員)は、1946年に専務の祖父にあたる成伯成作氏がさく井(井戸堀り)を中心業務とする成伯鑿泉(さくせん)工業所として創業しました。さく井については長年の技術の蓄積があり、狭いところでも井戸を洗浄する優れた技術を開発してきましたが、最近の業務と売上の中心は井戸水を用いて雪を溶かす消雪装置です。大雪の朝でも快適に車を走らせることができる環境を整えています。

得意技を生かす

 せっかく利用できるようにした井戸水を災害のときに生かせないかという考えから、消雪装置用の地下水を飲料水とすべく給水装置を、また消防のために消火栓を取り付け、富山市内の6町内の9カ所にシステムを設置しマスコミでも報道されました。
 
 アイデアはこれだけではありません。消雪装置の遠隔監視システムを開発し、雪が降っても水が出ないときや、雪が積もっていないのに水が出るなどの事態に、必要な操作や工事を迅速にできるようになり、住民の満足度を高めました。遠隔操作のための大型ディスプレイ装置が置かれている同社内では、降雪が予想される前夜から社員が泊まり込み、装置の作動状況を監視しています。

 さらに、自社で制御盤を作り、消雪装置の低負荷運転や周波数制御、電流制御のできるインバーター装置の導入により電力コストを大幅に削減することに成功しました。

 きめ細かな遠隔操作と制御情報をEメールで送信できる方法を開発することによって、さらに節水効果とコスト削減を実現し、2008年には企業のモバイル活用事例を表彰する「モバイル中小企業賞」を受賞しました。

危機感を成長の糧に

図解

 しかし、成伯専務は昨今の深刻な不景気に対する危機感を隠しません。消雪装置は地球温暖化の影響もじかに受けるので、5年、10年先にどうなるかは誰にも分からないという状況もあります。社員数22名の会社で、技術者は6人おり、開発力を支えています。専務自身、土木施工管理、さく井、給水装置工事などに関する国家資格を保有し、技術系社員の営業に対する意識も高いものがあります。

 厳しい経営環境の中、どこに活路を求めていくのかについて、「失敗したら、申し訳ないと謝って工事をやり直す正直さが絶対必要です。失敗して逃げたらその先はありません。苦しくても正直に徹してこそ信頼を得ることができます。そして、営業力と技術があれば、生き残れるのではないかと思います」と力強く語りました。

会社概要

設 立: 1946年
資本金:2000万円
社員数: 22名
業 種: さく井工事・各種ポンプ設備工事・電気工事
所在地:富山県富山市向新庄町1丁目15-54
TEL: 076-451-7868
FAX: 076-451-7929
URLhttp://www.nariki.com/index.html

同友とやま 第279号(2009年3月)より