【第55回】人を大切にする社風で、地域の暮らしを守る 藤田建設工業(株) 社長 藤田光夫氏(福島)

藤田社長

藤田建設工業(株) 社長 藤田光夫氏

 藤田建設工業(株)(藤田光夫社長、福島同友会会員)は福島県の南部、人口1万6000弱の棚倉町にあります。藤田氏の父親が創業し、藤田氏は5代目の社長です。

公共事業激減の中でも人的リストラせず

 毎年7%ずつ公共事業の予算が削られる状況の中で、2002年に50億円近くあった公共事業関連の売上が、藤田氏が社長になった2006年にはわずか6億円になっていました。しかし人的リストラは行いませんでした。「棚倉町という限られた人口のところにある会社で、地域の人を大切にする以外に人がいない。地域の人をリストラするなんてできない」と藤田氏は言います。

「仕事は仕事でとれ」

 苦境の中で、同社を支えたのは長年にわたり培ってきた技術力でした。同社には創業以来の「仕事は仕事でとれ」という社是があり、「いい仕事をすることで、次の仕事につながる。だからみんなでいい仕事をしよう」ということが先輩から後輩に伝える合言葉になっていました。技術・技能を身につけることを、会社を挙げて応援しており、例えば鉄道工事をするのに必要な資格をもった社員は40名、公共事業が減る中でJR関係の仕事が売上を支えています。

 その他にも水道管などの赤さびを除去する管更生工事や、断熱工事などの「よそがやらない技術」を持った特殊な仕事を行っています。福島県の入札制度は最近、技術者の数や経験が点数化されて、その点数が受注に有利となる変更があり、今後はさらに同社の技術力の高さが実を結ぶチャンスになりそうです。

女性が活躍できる環境づくり

栗子トンネルでの集合写真

 また女性が活躍しているのも同社の特徴です。現在、同社総務課長を務める梶春江氏は出産後にパートとして入社、工事部の仕事に携わるなかで土木施工管理技士資格を知り「これなら私にもできるかもしれない」と2級、1級と順に取得しました。「道路に建てられた公示看板の主任工事技術者に自分の名前を見たときには、驚きと同時に責任を感じた」と言います。

 梶氏は続けてバックフォーやブルドーザーを運転できる大型特殊運転免許の取得、営業部では入札書や契約書の作成、営業物件の資料作成を経験、現在の総務課長に就任しました。女性の挑戦を真剣に受け止めて応援する同社の環境が背景にありました。

男性も働きやすい環境に

 同社では現在、育児休業制度を就業規則に盛り込んでおり、1993年に最初に取得した女性社員を皮切りに、その後、現在まで出産した女性社員は全員育児休暇制度を利用しています。現在も女性1名が育児休業中で、来年2月に復帰する予定です。梶氏は「女性が働きやすい職場は、実は男性社員にとっても働きやすいのではないかと思う。それぞれの社員が違いを認め、尊重しながら楽しく充実した仕事を続けられたら」と言います。

 厳しい経営環境のなかで、人を大切にして地域の暮らしを守る同社への期待はますます高まりそうです。

会社概要

設 立:1952年
資本金:9,036万円
年 商:53億3589万円
社員数:180名(うち女性20名)
事業内容:総合建設業
URLhttp://fujitakk.com