【第57回】 地域に根差して新たな事業展開 (有)はすかっぷサービス 社長 大西育子氏(北海道)

大西社長

(有)はすかっぷサービス 社長 大西育子氏

ハスカップとの出合い

 大西育子氏((有)はすかっぷサービス社長、北海道同友会会員)は父親が経営していた運送会社から独立し、「ゆうパック」や「ふるさと小包」の企画などを行い、運送会社から送るものを企画する会社へと事業転換してきました。現在の(有)はすかっぷサービスを1998年に創業、苫小牧市の花であるハスカップのもつ機能性と、見た目の謙虚さに魅力を感じて名前をもらいました。

 ハスカップは甘酸っぱくブルーベリーに似た味が特徴です。ビタミンや鉄分、カルシウムの他に、最近では目の老化や疲れを予防するアントシアニンはブルーベリーの倍以上、リンゴ酸、ミネラルなどといった成分も豊富であることから最近注目を集めています。しかし手摘みで人件費がかかる上、数に限りもあり、加えて果汁も多いために劣化しやすく、価格が高いので大手菓子製造会社でも定番商品にはなりにくい現状です。同社では生ハスカップを冷凍しても品質が損なわれないことを検証し、冷凍した生ハスカップを一年通して発送しています。

同友会と経営理念

 北海道同友会に入会して経営指針研究会に参加したころは「経営理念とは何?というレベルだった」と大西氏は自身を振り返ります。参加するなかで、経営理念として、「①お客さまの『心』と『満足』をお届けする企業を目指します、②地域に根差した特産品の発掘と発信に取り組みます、③基準行動が実行できる会社を作り上げます」を掲げました。

産学連携「HoPE」と共同開発研究事業

 同友会でさまざまな情報を得るたびに「何か新しいものを作れないか」と思いがたかまった大西氏は、北海道同友会で始まっていた産学官連携研究会(通称HoPE)に入会しました。そしてHoPEでの活動を基礎に、苫小牧支部に「北方圏農水産物研究協議会」を設立しました。苫小牧市がハスカップの発祥地であり、ホッキ貝も水揚げ日本一と農水産物に恵まれていることに着目して活動を開始しました。

 第一弾のハスカップの研究では、2007、2008年度に経産省の委託事業に採択され、ESRという計測方法を用いて解明した、生体内酸化ストレスに関与するというハスカップのラジカル消去機能成分を安定化させた加工食品の開発に着手しました。

 さらに、2009年度からは農商工連携事業(新技術革新企業)に認定されました。これは紅茶やジャムなどの従来加工技術に加え、新技術として健康食品・飲料、サプリメントなどの開発にまで進んでいます。

次のステップへ

 「今、こうして事業転換をすすめ商品開発を進められるのは同友会があったからこそ」と大西氏は言います。今後はこれまでの研究や経験、人とのつながりを生かして農商工連携に取り組んでいく考えです。現在、航空会社AIRDOに同社の「ハスカップティー」がオリジナル缶として販売され、機内サービスにも採用されました。地元産品の開発にかける大西氏の思いはさらに加熱しそうです。

会社概要

設 立:1992年
資本金:300万円
年 商:5,000万円
社員数:5名(うちパート・アルバイト3名)
事業内容:商品企画開発(ハスカップ・ホッキ貝・地域特産品)、軽貨物運送業
URLhttp://www.haskap.jp/