【第60回】農業にこそ経営指針が必要 (有)スカイファーム 社長 川西裕幸氏(香川)

川西社長

(有)スカイファーム 社長 川西裕幸氏(香川)

 川西裕幸氏((有)スカイファーム社長、香川同友会会員)は、地元の植物工場での5年間の勤務を経てイチゴ栽培を始めました。2200平方メートルのビニールハウスを建て喜びいっぱいの門出でした。
しかし1年目から壁につきあたりました。高校・大学と農業を学んだ川西氏はその自負もあり、栽培で疑問点があっても自分の判断で通したのでした。その結果が予定の6~7割という収穫量でした。「これではいけない」と近所の農家に教えを請うようになり、その後の収穫量は上向いていきました。

両親の突然の死

 ところが3年目の2001年1月、栽培に携わっていた母親が脳こうそくで急逝、さらに同じ年の9月には父親が交通事故で亡くなりました。どうしようもない絶望感のなかで、両親が抜けた後をアルバイトを雇い、利益を上げるために規模拡大を行いました。4700平方メートルと倍以上の敷地にしましたが、収穫量も利益も想定のようには上がりません。休みなく働いても利益が出ないという状況で、「同業者にも相談できず、もやもやとした日々を過ごしていた」と川西氏は振り返ります。

同友会との出合い

 そんなとき香川同友会への誘いがあり、「異業種交流で悩みから脱却できるかもしれない」と二つ返事で入会しました。学ぶなかで経営者としての自身の経営者としての課題が見えてきました。「例年通りとれたらよい、取れなければ気候のせい、売れなければ市場のせいと思っていたことが実は違うことに気づいた」と川西氏は言います。また従業員に対しては季節労働者というとらえ方で、3~5月の繁忙期以外、長期間の休暇があるため賃金が低く、長年勤めていた従業員が辞めていったことに、「自分が経営者としていかに未熟で、独りよがりだったのか」と気づきました。

 2006年から香川同友会で始まった「経営指針を創る会」の第1期生として参加した川西氏は、農家にこそ経営指針が必要だと痛感。そして「農業を通して心ゆたかな生活を創造します<農業で地域を明るく元気に!」を経営理念に掲げ、経営指針書を作成しました。

実践することが大切

 そして経営指針書はつくってからが大事と、さっそく実践に踏み出しました。地元スーパーに農協を通して出荷していたのをすべて止めました。2カ所の直売所と地元のデパートで「朝採りイチゴ」として販売、また業務用卸としてケーキ屋やレストランと契約して直送で卸すように転換しました。また従業員の年間を通じた雇用と安定した売上の確保のために、直売所ではソフトクリームやかき氷、クレープなどを年間通して販売するようにしました。このアイスクリームは国の農商工連携事業の香川県第1号認定を得ました。

農業が地域を元気にする

 2008年には「経営指針を創る会」を卒業した農家の仲間たちとともに、若手農家と消費者がふれあい「農」を考える団体「香川元気ネットSEED」を立ち上げました。継続的に消費者とつながることに難しさはありますが、「農業が元気になってこそ香川が元気になる」という意気込みで取り組んでいます。また農家が中心になれるブランドづくりにも取り組んでおり、川西氏の地域と農業への情熱は冷めるところを知りません。

会社概要

設 立:2004年
資本金:1,000万円
年 商:5000万円
社員数:8名
事業内容:イチゴの栽培、加工、販売、農業連携のアドバイザー
URLhttp://www.skyfarm.jp/main.html