【第75回】異業種連携で機能テントを開発(株)北信帆布 社長 福島一明氏(長野)

福島社長

(株)北信帆布 社長 福島一明氏(長野)

医療用テントを開発

 長野同友会では異業種連携の取り組みが積極的に行われています。その中心的な存在が福島一明氏((株)北信帆布社長、長野同友会会員)です。同社は農産物や食品の保冷に使うテント冷蔵庫や、ガスを入れて密封し、果実の熟成を促すテントなど、気密性の高い特殊な製品を販売しています。
 最近では、信州大学の医・工・繊維の各学部の支援を受けて災害現場向けの医療用テント開発を進めています。

時代のニーズに対応して100年

柿渋テント

 同社は昨年、創業100周年を迎えました。種油を塗った和紙から首を出して使う折りたたみ式の道中合羽の製作が原点です。その後、それぞれの時代のニーズに合わせて業態を変化させてきました。

 例えば、長野駅-豊野駅(現在の信越本線)に鉄道馬車が敷設された際の馬車の幌、関東大震災で企業が長野に疎開してきた時には臨時社屋・倉庫として使える幕舎、また、昭和1944年に米軍の空襲が激しくなった際の、灯火管制用の黒幕などです。

 福島氏が入社した時は、魚屋の軒先のひさしやトラックの幌を製作していましたが、これもすぐに違う材質にとって代わっていくのを目の当たりにしました。
 そんな中1970年の大阪万博を見学した際、柱を用いず空気を入れたテント構造の巨大建造物に出合い、「テントでハウスができるのか」と衝撃を受けました。これに着想を得て、さまざまなタイプの特殊テントを開発・製造するようになりました。それ以降、大きく売り上げを伸ばしています。

異業種連携で特殊テントを開発

 福島氏の入社当時より、すでに社内では他社との異業種連携が行われていました。
 冬季の信州では、生コン用の砂利や砂を屋外で露出させておくと凍ってしまいます。そこで市内の電気工事店と連携して、電線を通して発熱するシートを敷くことで凍結を防ごうと開発を行ったところ、これが大当たり。当時の異業種連携は「現在の長野同友会で行っている異業種連携の原型だったと思う」と福島氏は振り返ります。
 現在も積極的に異業種連携を行っており、気密性の高い特殊テントも設備業の同友会会員企業との連携で開発しています。

「創造的な人間関係を推進する企業」

社屋

 同社の経営理念は「私たちは仕事を通じ、創造的な人間関係を推進する企業です」というものです。どんなテントを作ったらお客に喜んでもらえるか、困っている場面でテントを使ってもらえないかと常にアンテナを張り、些細と思われるお客の一言からもアイデアを探します。

 また販売する際も、建材業の方と同行して販売するなど、連携することを忘れません。その中で、さまざまな異業種の経営者との信頼関係をつくってきました。

 「経常利益を死守するためにも、新しいモノ作りをするしかない」と語る福島氏。異業種連携とテントのもつ可能性に、さらに夢が膨らみます。

会社概要

創 業:1909年(明治42年)
資本金:1,000万円
業 種:テントの設計・製造・施工、帆布製品の製造・施工
        トータルインテリアの設計・施工、イベント設備の企画・レンタル
所在地:長野県長野市風間下河原2034-19
TEL:026-221-3500
URL:http://www.hanpu.jp/