【第7回】 人材育成とコミュニケーション力こそ鍵 (株)マルブン 代表取締役 真鍋明氏(愛媛)

真鍋代表取締役

(株)マルブン 代表取締役 真鍋明氏

外食産業を取り巻く経営環境

 愛媛県内にイタリア系レストランを4店舗展開する真鍋明氏((株)マルブン社長、愛媛同友会会員)は、「外食産業を取り巻く経営環境は、消費者ニーズとして『3低=低価格で、テンションが低く(熱過ぎない接客)、リスクの低い店や商品を選ぶ』という傾向にある。定番料理に人気が集まり、外食するときは知っている店に行き、『家飲み』に流れる傾向にあり、当面『3低』志向は続き、消費者の外食頻度もさらに鈍るだろう。また、節約疲れの傾向も見えていて、外食の回数は減っているが、その分、たまに行くなら少し高くてもおいしいものをと考える消費者が増えてきたと感じる」と外部環境を分析します。

理念とビジョンを現場で実現

社屋写真

 真鍋氏が外食業界に入って26年、「今が一番厳しい時代であることは間違いない。お客の財布のヒモは、今後ますます堅くなる。お店を選ぶ目も厳しくなる」と話します。

 この厳しい経営環境に立ち向かうため、経営理念・ビジョンを基本に、変化に対応した経営を追求しています。
 「いつまでも、おいしいが、響きあう、マルブンでありたいと願います」の経営理念や「ありがとうレストラン~外食ビジネスとして“質”において、世界最高水準の会社を目指す~」ビジョンの実現にこだわります。

 具体的には、売上や利益など目先のことにとらわれず、「質を高める=お客さま満足の向上」と「ベクトル(方向性)を合わせる=社員満足を高くすること」を重点に進めています。
 中期的には「最強のチームづくり」を掲げ、平均年齢26歳でパートが8割を占める社員の人間力を高めることを課題にして、理念を柱にした教育をすすめ、接客応対を行っています。

 また商品も、既成品は一切使わず愛媛のおいしい食材に徹底してこだわっていることもお客の支持を集めている要因です。

コミュニケーションを柱に

 いかなる側面でもコミュニケーションが大事だと真鍋氏は考えています。
 例えば、愛媛のおいしい食材を提供する視点から、現在26の農家と直接取引を行っており定期的に食事会を開催するなどしてコミュニケーションを高めています。また、県内で地域のお客を対象に料理教室を年間18回程度開催して、地域とのコミュニケーションを高めています。

 社内では、ディズニー委員会(顧客満足)、マネジメント委員会(PDCA)、業績アップ委員会(利益確保)、新商品開発委員会(料理人育成)、ありがとう委員会(社員満足)の5つの委員会を設け人間力を高める活動を進めています。
毎年の経営指針発表会では、社員全員を表彰する場を設けています。社員一人ひとりの長所を「○○で賞」の形で評価し、日頃の感謝の気持ちを表しています。

 お客とのコミュニケーションでは、「お客さま情報カード」を活用しています。現在9200名程登録されている自社作成の携帯サイトにいただいた、お客からの感想や意見、要望などを集約し、カードにして全社員で情報を共有しています。「青カード」はお褒めの言葉、「白カード」は提案、「赤カード」は意見・要望という具合です。これを導入することで、現場改善のスピードが圧倒的に速くなりました。

 こうした取り組みが社員の人間力の向上につながっています。自主性が育まれ、オリジナルメニューを作ったり、イベントを仕掛けたりと、さまざまなアイデアが社員やスタッフから出てくるようになりました。
 また、10人のお客が来店した時には、徹底的に喜んでもらうようにその中の一人を事前の下調べなどをしてウエルカムボードの製作を行うなど、理念を形にする工夫も社員が行っています。

マルブンの生命線

 「手間はかかりますが、人材育成とコミュニケーション力が鍵。それがマルブンの生命線」と真鍋氏は言います。「時間と回数とお金をかけたものしか、他社と比べて圧倒的な差(強み)にはならない。具体的な基準は『あの店は、凄い』と世間で噂になること」と真鍋明氏は言います。
 外食も現在では不況業種のひとつとなり、経営環境は非常に厳しい中、理念・ビジョンを経営の判断基準として真鍋氏の挑戦にさらに力が入ります。

会社概要

創 業:1923年
資本金:1000万円
業 種:イタリア系飲食サービス(レストラン経営)
従業員数:13名、スタッフ57名
所在地:愛媛県西条市小松町新屋敷甲407-1
店 舗:マルブン小松本店、マルブンダイニングキッチン、
      ピッツェリア マルブン南高井店、ピッツェリア マルブン新居浜店
URL:http://www.marubun8.com/