【第12回】伝統と顧客のニーズで新商品(株)鈴木屋 社長 鈴木祥成氏(岡山)

鈴木社長

 (株)鈴木屋 (鈴木祥成社長、岡山同友会会員) は、1923年創業で鈴木氏の曽祖父の代からせんべい一徹に焼き続けています。

余計なものは一切加えない小麦粉のおせんべい

 鈴木屋のせんべいは小麦粉のおせんべい。口に入れるとほろほろと溶けるような優しい口当たり、そして後には、ほんのり甘い素朴な味わいと、素材が持つ豊かな風味が広がります。小麦粉と卵と砂糖をベースに練り上げるシンプルな生地で、香料や着色料等の余計なものは一切加えていません。「大切な人に安心して食べてもらえるもの、純粋においしいと感じてもらえるものだけを作りたい」という強い思いがあるからです。

1日3万枚を早くお客様に届けたい

 社屋1

 毎朝5時半、工場に火を入れ、30分かけてじっくり熱した鉄板で、生地を挟んで焼いていきます。1日に約3万枚焼きあがったものに、丁寧に焼印を施します。「やはり焼きたてが一番おいしいから、早くお客様に届けたい」。鈴木屋では、無添加でもおいしい状態を保てるように、工場内をオゾン殺菌する工夫をし、賞味期限も短めに設定。その日のうちに袋詰めし、出荷します。

 創業以来変わらない味を守りながら、新商品の開発にも地道に取り組み続けています。力となってくれるのは、支持してくださるお客様からの声です。三代目である父親と、自ら物産展の店頭に立つ鈴木氏は、お客様との会話をとても楽しみにしていると言います。「物産展に足を運んでくださるお客様には、リピーターも多く、『おいしかったわ』『毎年楽しみにしているよ』と声を掛けられるたびに、鈴木屋の四代目を継いでよかったと思います」

新商品「どらせん」の誕生

 商品一覧

 こうした展示会等で交わしたお客様との会話の中から、新しい商品のヒントを持ち帰り、そこで生まれたのが、「どらせん」です。
 しっとり柔らかい二枚のせんべいに黒餡を挟んだ、どらやき型のおせんべい。「せんべいが大好きだが、硬いものが食べづらくなった」というお客様の声を形にした商品です。生地に使う卵は卵黄をふんだんに使用して、極上の風合いを出しました。せんべいを挟む黒餡には、勝英地方特産の作州餡を採用。「地元だと、頻繁に生産者を訪ねて素材を確かめることができるから、私たちも自信を持ってお客様にお届けすることができる。生産者と一緒に、いいものを作っていこうという連帯感も生まれるから」と鈴木氏。

 納得のいくまで試作を重ね、ようやく完成した「どらせん」は、2008年の全国菓子博覧会で名誉総裁賞を受賞し、1998年に同賞を受賞した主力商品「恋衣せんべい」とともに、鈴木屋の看板商品になっています。「どらせん」はお土産としても人気が高く、売り切れになることもしばしばです。

商品には絶対の自信がある

 四代目に就任して間がない鈴木氏は語ります。
 「商品には絶対の自信があるが、経営については課題も多く、これからが勉強です。この1年、社員の間でも世代交代が起こり、大幅な入れ替わりがありました。新しい環境のもと、『心ひとつ、一手ひとつ』という鈴木屋の理念を、いかに浸透させていくか。お客様に喜んでもらえる喜びを、社員にも味わってもらいたい、そのためにも社員にも商品に対する愛着と、丁寧なものづくりへの誇りを持ってもらうことが、今一番の課題です」

会社概要

創 業:1923年
設 立:1967年
業 種:せんべいの製造及び販売卸
従業員数:7人
所在地:岡山市北区神田町1-3-21
TEL:086-224-8085
URL: http://www.suzukiya-senbei.com/index.htm