シリーズインデックス:付加価値を高める

【第25回】花に「物語」という付加価値を (株)花とも 代表取締役社長 記州陽子氏(石川)(2010.10.06)

記州社長 (株)花とも 代表取締役社長 記州陽子氏(石川)

地域資源の発掘と異業種コラボレーション

 1977年に花ともを創業、91年に法人化した(株)花とも(記州陽子社長、石川同友会会員)。現在、金沢市とその周辺のショッピングセンターで4店舗の花屋を展開し、顧客の目線で商品づくりにまい進しています。さらに有限会社花座を立ち上げ、地域文化のルーツを探るような着眼点で農商工連携の商品を生みだしています。また、能登地域の生産者、市場、JAなどと協力し、能登榊(さかき)の商品化に向け尽力、お年寄りの生きがいづくりにも貢献しています。

能登産榊(さかき)に着目

榊  国内で消費する榊の95%は中国など外国産です。紀州氏は能登産の榊に着目しました。なぜ能登産か、記州氏の論はこうです。
 「神様というのは地元というか、地から生えたものです。日本人は山や海そのものを神様と捉えるところがあります。仏教は大陸から百済を通じて日本に伝わりました。だから、仏様のお花にオランダ産のカーネーションを供えるのに抵抗はありませんが、神棚に外国産の榊というのは本当に抵抗があります。『神様は土着のものだから、地の物をお供えしたい』、その思いから最初は自分の店で売る分だけあればいいということで、JAや農家を一軒一軒まわり、町の公民館で榊の話をして出荷を呼びかけました。また、供給体制が弱く榊が市場から消えるかもしれないという危機感もありました」

お年寄りの生きがいに

 背中の丸い小柄なおばあちゃんに、こんな仕事ができるのでしょうか。「60歳の息子さんが山へ行って榊を切り出してきます。その山から採ってきたものを水に浸けて束ねて出荷するまでの仕事は、年配の人に一番向いている」と記州氏。昔の人は手先が器用で、おばあさんの出す榊は本当にきれいだとか。一束70円、80円のマージンでも、できばえで5円高とか10円高とか差がつきます。記州氏は「『あの人に負けたくないわ』と励みになって、お年寄り同士の生きがいづくりにもなっている」と言います。

 売手である花屋が提案したことで、「現金に換えられる」という意識も働き、話が進展していきました。榊を商品にすることは、農家の人の収入源として年・数10万円になります。さし木をして榊の新芽が出ている場所もあり、今後は栽培環境を整え、日本全国の花市場で能登産榊が見られるようになることが、記州氏の夢です。

国産のこだわりは店の箔付

こだわりの店内  同店では榊は売れ筋で、大手ショッピングセンター内の店では外国産と能登産の両方を陳列しますが、地元経営のスーパーマーケット内の店には外国産は置かず、能登産の榊が
凛として国産のこだわりを象徴しています。1束150円を3万束、全売上高の3%ではありますが、このこだわりは店の箔付となり、最高のアピールになっています。神社など、固定客も生まれています。
 また、この働きの一環として、JAすずし(珠洲市)やJA内浦町(能登町)には「榊部会」がつくられました。これは金沢大学の「能登里山マイスター」を活用したもので、第1回石川県産業創出プロジェクト(いしかわ産業化資源開発活用推進ファンド事業)の農商工連携事業に採択されました。同社だけがその商品を買うのではなくて、将来的には一大産地にする構想に大学がバックアップしたことで実現しました。

農商工連携でお花とお酒のセット販売

 記州氏は、「花は付加価値を高めやすい商品」と語ります。「中国・中東・南米から計画生産された木々花々が日本に入荷してきます。これに対抗していくとき、地域の伝統や物語を付けて売り出していくことが大事。その付加価値は、大手資本力を持っても形成されるものではありません。土地に育ち、土地に根付いた文化を幼い頃から肌で感じ取ってきた者でなければ、表現できえないものがあるからです」

 金沢は茶道・華道が盛んな所で、かつては花嫁修業の1つでもありましたが、最近はお稽古事が少なくなりました。生きていく、雇用を維持していくのに必死な時代なのです。
しかし、「今は文化的な刺激がなければ、お客様は振り向きません。花々に『物語』という付加価値をつけて、道行く人の心をとらえるのです」と記州氏。

 そうした考えから、藩政時代から栽培されてきた観賞用花木「春待ち桜(切花)」と桜酵母を使った日本酒とのコラボレーションを考案し、県内会員の酒造メーカー・(有)武内酒造店(金沢市御所町)と共同開発して、農商工の連携で商品化しました。

花園地区の伝統、400年後の今も

お酒  前田利常が花園地区に花の栽培を奨励してから、400年後の今でも花の出荷をしている地域で育てた桜をこの商品に使っています。「花屋を始めた頃は、年末に梅ではなくて桜が咲いていたことを思い出しました。伝統的な産地のあるすぐ横に生まれて、これを絶やすわけにはいかないと思い、『よし、年末に桜を咲かせてみよう』ということで花園の生産者のところへ行きました」と記州氏。
 1年目は農業センターに持ち込み、お正月に合わせて開花するか、という研究をお願いしました。そこで、桜の切花とお酒のセット販売を思いつき、そのために酒販の免許も取得して、有限会社花座を立ち上げました。

 記州氏が通っていた「地域経済塾奥能登教室」にて知り合った、能登町の酒造メーカーとのコラボレーションも進みました。桜の撮影中、「なにか寂しい」と思い、椿を足元に差し込んでみました。この椿も桜と同じく商品化しました。商品名を考えているとき、能登の藪椿(やぶつばき)という名前ではピンときませんでしたが、照葉樹が寒暖の差で赤黒く紅葉する状態を生け花の世界で「照葉」ということを思い出し、「能登照葉」と命名しました。記州氏は、伝統の産物を掘り起こし、育てることに挑戦しています。

新たな仕事への挑戦が社員教育

 花屋にはいまだ徒弟制度(とていせいど:親方のもとに弟子入りし、年季奉公をすること)が残っている時代に、有能な人にずっと同社で働いてもらいたいという思いから、給与計算などは社員1名の時から社会保険労務士に委託し、週44時間を実施しました。
「社員が輝いて仕事するステージを作るのが社長の仕事。フェイスtoフェイスで、企業の力を社長(親)が育て、社員(子)は親の姿を見て育ちます。ありきたりの社員教育に追われていてはダメで、意義のある新しい事に社長がいつも挑戦し、社員から一目おかれる存在であることが重要です。どこを目指して、どう地域に密着して生き抜くかを共有し、価値創造で誇りを持てる会社づくりを進めています」と記州氏は語ります。

会社概要

創 業:1977年 
設 立:1991年
業 種:フラワーショップ経営 
従業員数:13名(内パート2名)
所在地:石川県金沢市木越町ヨ71-1
TEL:076-251-0008
FAX:076-251-1333
URL:http://www.hanatomo.info/

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