シリーズインデックス:付加価値を高める

【第39回】「差別化」を超える「新しい価値」 (株)仙仁温泉岩の湯 社長 金井辰巳氏(長野)(2011.01.26)

金井社長 (株)仙仁温泉岩の湯 社長 金井辰巳氏(長野)

岩の湯おもて  (株)仙仁温泉岩の湯(金井辰巳社長、長野県同友会前代表理事)は、長野県須坂市にあります。客室数は18ですが、年間を通しての客室稼働率は95%。世界最大をうたう旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」では、「日本人旅行客が選んだ人気宿2010」の第1位に輝きました。山の中の一軒宿だったところを、1989年に全面改装して、現在の岩の湯が誕生しました。団体客、カラオケなどは入れず、本当にくつろげる宿としてリピーターが絶えません。

経営理念に基づいた日々の実践

 リーマンショック以降、観光業・旅館業も厳しい状況が続き、老舗旅館であっても倒産(廃業)するところがでてきています。

 「現在のような先行きの見えない不透明な時代であるからこそ、やはり経営理念が重要になってきます。確固たる経営理念があれば、そのうえに、長期的なビジョンを持つことができ、それに基づいた戦略をとっていくことができるのです」と金井氏。

 設備投資も控えがちな昨今ですが、経営者自身がしっかりとした経営理念・ビジョンを持っていれば、先を見通すことができ、厳しい状況の中でも、それに対応した必要な設備投資を行うことができます。「どんな社会情勢の中にあっても、ビジョン・戦略に基づき、日々のやらねばならないことを、地道に実践しているだけ」と金井氏は言います。

「楽養(らくよう)」を目指して

洞窟風呂  同社では、2010年春、大きな特色の一つである洞窟風呂の改装を行いました。これまで温泉といえば、じっと座ってお湯に浸かるスタイルでしたが、楽しみながら心も身体も癒してゆくような新しい価値としての 「楽養(らくよう)」を目指し、洞窟風呂の浴槽の深さを通常よりも深くすることなど、必要な要素を入れこんだ工事を行いました。

 そのほかにも、テラスを作るなどの小さな改装も行い、また八反歩(約2400坪)の畑では無農薬野菜にも挑戦しています。以前から行っている森や庭の造園作業については、「全体のおおまかなデッサンが終わり、細かい作業に入ったところです。高木の配置が終わったこれからは、柿などの実のなる木、花の咲く木を植え、『ふるさと』の風景をつくっていきたい」と金井氏は楽しそうに話します。

お客様の深層ニーズは何か

客室テラス  このようなさまざまな取り組みも、「お客様の本当のニーズはなんだろうか」と常に問い続け、自社のお客様像をしっかりととらえることが基本にあります。

 「世の中の情勢が厳しい中、業界ではさまざまなスタイルが試行錯誤されています。またお客様自身も混沌とした世の中にあって不安を抱え、迷っているような状態にあります。旅館に泊まりに来ている家族・グループといっても、ひとかたまりでとらえるのではなく、父親には父親の、母親には母親の、子どもには子どもの、そして友人同士であっても、それぞれの不安や悩みを抱えています。そのようなお客様に対して、どんなお役に立っていけるか、温泉宿の存在意義とは何なのか。ただ立派な施設やお風呂、おいしいお料理だけではなく、人生の中のかけがえのない旅として、どのような1泊をつくりあげていくか、それが一番大事な事だと考え、そのために必要な改装を行い、庭づくり・森林づくりを通して、日々実践しているのです」と金井氏は語ります。

混沌とした時代だからこそ、自社独自の輝きを

 戦後の何もない時代には、ないものを作れば売れる、「十人一色」の時代でした。その後「十人十色」の時代を経て、現在では、何でも手に入るような豊かな時代になり、お客様が時と場合に応じて、選んで使い分けをしてゆく「一人十色」の時代です。

 「お客様の使い分けに対応して、各社が個性を発揮して住み分けるには、理念・ビジョンが必要です。どの会社も同じような色であれば、安い方がいいという話になってしまいます。それぞれの会社が、それぞれ独自に輝いていなければ、お客様も選ぶことができません。経営者は、現在のデフレ社会を「弱った、弱った」と嘆くだけでなく、次の時代に行くための必要なステップと捉え、先を見通していかなければなりません。混沌としているからこそ、この時期に適切な対策が取れれば、それが次の時代に生きてくることになります」と金井氏。

 また、「差別化」という言葉自体は以前から言われていることですが、「差別化」を超える「新しい価値」の創造が求められています。「『新しい価値』が生まれれば、差別化と言うより、他と比べようがないものになります。そんな『新しい価値』を生み出すには、存在意義(アイデンティティ)、自分が何者なのか、何のために、何をしたいのかを深く考え、探ることが重要です。理念は、いわば細くてもろく切れやすい糸ですが、それに経営者が確信を持ち、どれだけ社員と心を合わせて寄り添えるか、一緒にやっていけるか。それによって経営理念は、針金にもなり鋼鉄にもなるのです」と金井氏は語ります。

企業理念

我が社は幸せをアートする

経営理念

我々は日本の風土に合った独自固有の理想土(リゾート)文化の創造を企業使命とし、社会に貢献し人格の練磨向上を図り事業の限りない成長と社員の幸福の実現に邁進する。

会社概要

創 業:1959年7月
資本金:1000万円
業 種:旅館業
従業員数:65名(パート・アルバイト含む)
所在地:長野県須坂市大字仁礼3159
TEL:026-245-2453

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