【第42回】ホタルの里で炭焼きに付加価値を 合同会社ツリーワーク 代表社員 佐々木嘉幸氏(青森)

佐々木代表

合同会社ツリーワーク 代表社員 佐々木嘉幸氏(青森)

土木工事主体から炭を活用した事業の拡大を

炭焼き小屋

 青森県中泊町中里(旧中里町)にある合同会社ツリーワーク(佐々木嘉幸代表、青森同友会会員)の本業は建設業ですが、近年の公共工事の減少のなか、土木工事主体から炭を活用した事業の拡大を模索しています。

 以前から里山の山林から薪ストーブ用の木を切り出し利用していましたが、昔この地域にも炭焼き業があったことをきっかけに、春先の閑散期を利用して30年前から炭焼きを始めました。当時は農村地域でも燃料としての需要は少なく売れない時期がつづきますが、近年、木炭は土壌改良や消臭剤、除湿剤、消雪剤・炭入堆肥(たいひ)・水質浄化剤など燃料としてだけでなく自然素材の環境資材として用途が広がってきています。
 炭には石で造る窯の白炭、土で造る窯の黒炭の2種類があり、同社には白炭窯2基、黒炭窯3基があります。炭焼きは盆正月関係なく年中休みなく行われています。

木炭、木酢液を混ぜて造るオリジナル堆肥(たいひ)

 炭を製造するかたわら、炭が環境にも健康にも良いものだと見聞きして、自らも炭関係の学会に入り、専門家の人々との交流もはかりました。結果、炭に関する学術的専門的知識を得て炭の効果を確信した佐々木氏は、オリジナル炭入り堆肥(たいひ)の製造をはじめました。堆肥(たいひ)の原料は、りんごの絞りかす、バーク、モミガラ、鶏糞、牛糞、稲わらなどのバイオマス原料に天然広葉樹由来の木炭と木酢液を混ぜて一年かけてつくる堆肥(たいひ)です。
 農地の連作障害の機能回復効果や、近年その肥料を使ったリンゴ農家から樹根が菌に侵され枯死に至るリンゴの病気「モンパ病」に効果があると聞かされました。一昨年から地元弘前大学と同社の提携で炭入り堆肥(たいひ)がさまざまな農作物に与える影響についての共同研究も始まりました。同大では共同研究費に500万円を投じており、スペイン国立植物研究所にもこの堆肥(たいひ)が送られ、「砂漠に緑を」の国策事業に試験的に使用されています。

木酢液の医薬効果にも注目

木酢液

 さらに、5~6年前から害虫駆除や害獣忌避、加えて医薬効果が注目されている木酢液の製造を始めました。木酢液の強い殺菌効果による病害虫駆除は無農薬志向の農家に支持、利用されています。また、独特のにおいが農地を荒らすネズミやモグラなどの害獣忌避効果をもたらしています。
 木酢液は、鳥取大学では高速道路のいのしし忌避効果を、北里大学では犬、猫忌避剤として研究がなされ、さらに静岡大学ではアトピー皮膚炎の医薬効果が研究テーマになっており、その木酢酸の供給を同社が担っています。
 今年は青森県木炭協会として林野庁から依託を受けた(社)全国燃料協会の要請を受けて、「木酢液の特定農薬化」を図るための実験用木酢液の生産を行うことになりました。このように今、自然素材の炭や木酢液が注目され、最先端の環境素材となり、現在同社の生産する木炭や木酢液も需要が広がりつつあります。

ホタルが飛び交う自然環境を守りながら

火入れ式にて

 中泊町中里は、里山に囲まれた自然環境が豊かなところです。同社のある里には自然林の裏山があり、湧水地から毎年ゲンジボタルが7月中旬に数多く発生します。佐々木氏はホタルが飛び交う自然環境を守ろうと、最近では地元の中里川の砂防ダムにホタルの放流事業を行ってこれまでに2万匹もの放流をおこなっています。
 佐々木氏は自ら水田1ヘクタール、畑4ヘクタールを営農しています。10年前からは自ら造った堆肥(たいひ)や炭を投入しての農法で無農薬有機栽培「木炭ろ過清水育成米」の販売も始めています。

 木炭の原料は全て天然広葉樹の伐採木、佐々木氏の炭窯は5つ、木炭の生産能力は年間約100トン。「炭焼きが産業として定着すれば地元の雇用にも大いに役立つ」と、佐々木氏は常に語っています。天然素材で自然循環する炭の持つ自然環境機能の回復効果を最大限に活用する試みが今注目されています。

会社概要

設 立:2005年9月
業 種:木炭・木酢液・炭入堆肥(たいひ)(特許出願)・ネズミ・蛇等の忌避済製造販売
従業員数:3名(正規)
住 所:青森県北津軽郡中泊町大字中里字亀山602
TEL:0173-57-9003
FAX:0173-57-2833