【第48回】廃食油から地域防犯活動へ (株)グリーンロジスティクス 代表取締役 岩崎浩氏(熊本)

岩崎社長

(株)グリーンロジスティクス 代表取締役 岩崎浩氏(熊本)

地域と共に歩み、地域になくてはならない企業をめざして

工場内

 (株)グリーンロジスティクス(岩崎浩社長、熊本同友会会員)は、1992年に菊池郡大津町にて廃棄物の収集運搬業として創業しました。翌年には熊本県及び熊本市の産業廃棄物収集運搬業許可を取得、2004年には熊本県の産業廃棄物中間処分業の許可を取得し、工場などから排出される産業廃棄物の中間処理、また事業所及び家庭より発生するさまざまな一般廃棄物の収集運搬を行っています。

 また、プラスチックの生産過程において発生するさまざまな形状の廃プラスチックを回収し、マテリアルリサイクル(原料化)とサーマルリサイクル(燃料化)を主体としたプラスチックリサイクル業務も行っています。
 
さらに、2008年には回収した使用済みのてんぷら油(廃食油)から、軽油よりも、二酸化炭素や黒煙を削減できるバイオディーゼル燃料(BDF)の精製を行う(有)百式を設立し、地球温暖化防止と循環型社会の実現に向けて取り組んでいます。 

環境への取り組み通じて生まれた地域との融和

 同社の環境活動として特徴的なことは、バイオディーゼル燃料を活用した地域との関わりです。(有)百式でのバイオディーゼル燃料の精製事業では、運搬車両の燃料費削減をはじめ廃棄物削減とリサイクルの促進を目標に掲げました。その結果、2009年度のバイオディーゼル燃料の使用量は2万5630トンと、前年度の1万5238トンを大きく上回り、軽油の使用量を大きく削減することができました。

 しかしながら、岩崎氏は「バイオディーゼル燃料を使った取り組みを社内だけで終わらせていいのか。せっかくやるのだから地域に貢献できる活動にすべきではないか」と自分自身に問いかけるようになり、社員と共に「何のために誰のためにこの事業を始めるのだろうか」と話し合いました。その結果、バイオディーゼル燃料は小規模生産という性格から、原料の調達は地域限定で行っているので「地域から排出される廃棄物は地域の人たちの役に立ち、地域の目に見える形でリサイクルを行うべき」との考えに至ります。

 同社では、社内の事故防止の一環として2008年1月から、小学校の登校時間のスクールゾーンの安全誘導に取り組んでいました。しかし、下校時間帯に小学生の連れ去り事件が過去に発生したことを知り、下校時間にも防犯活動が必要であると考えた結果、11月から、バイオディーゼル燃料の普及と地域の防犯を融合した「地域リサイクルと地域防犯活動」をテーマに掲げ、地域のための活動に取り組み始めました。

菜の花パトロールがもたらした変化

菜の花パトロール

 まず、バイオディーゼル燃料を使用した同社所有の防犯パトロール車を使った「菜の花パトロール」を毎日朝夕2回実施し始めました。またパトロールマップを作成し、他の事業者にも菜の花パトロールへの参加を呼び掛けていきました。そしてこの活動を通じて社員と地域に変化が表れました。

 活動を行う以前は、お客様と直接接する機会があるのは岩崎氏のみで、地域住民と社員との間に接点がありませんでした。そのため、お客様から褒められるのも叱られるのも岩崎社長一人であったことから、社員は顧客や地域のために働くのではなく、会社(社長)の評価ばかりを気にした仕事になっており、社内のチームワークが疎かになっていました。

 しかし、菜の花パトロールを通して地域の方から直接社員が感謝されたことをきっかけに、「自分たちが主体的に取り組むことによって、地域に影響を与えていける」と、社員の心の中に自信が芽生えてきました。また、大津町PTA母親部会や周辺企業の協力で、廃油の回収ボックスを設置することにより地域との協力体制が確立できてきました。さらに、同社と地域の融和が図られ、社内にチームワークを大切にした風土も生まれてきました。

 「今後、このチームワークを活かして、社員が主体的で全体的視点を持つことができるようになれば、会社・顧客・地域の関係性がもっと良くなる」と、岩崎氏は強い確信を持つようになりました。

地域と共に歩む企業へ

 今後の環境経営について、「バイオディーゼル燃料が地域になくてはならないエコ燃料であることを確立することにより、私たちが地域になくてはならない企業であり続けたい」と将来の展望を語る岩崎氏。
 
現在、菜の花パトロール運動の一環として、地元の小学生と一緒に、大津町名産のさつまいもを使ったチップスを調理した後の菜の花オイルの廃油を利用し、バイオディーゼル燃料精製体験の環境学習会も実施しています。また、バイオディーゼル燃料の原料取引から精製までの工程に障がい者の雇用を目指すなど、同社の取り組みはさらに進化し続けています。

経営理念

1.地域環境コミュニケーションの形成
廃棄物処理事業活動を通じて地域社会に豊かな環境コミュニケーションを形成します。これにより地域社会の一員としてあらゆる要望に対して、私達の企業資源の全てを活用して「私達らしく」応えられる企業であり続けます。

2.学習型企業への発展
全社員が主役の会社を目指します。社員の創意工夫や自主性が十分に発揮できる社風を造り、働く環境の中から互いに学びあい、尊重しあい、活力に満ちた心豊かな人間集団としての学習型企業を目指します。

環境方針 基本理念

株式会社グリーンロジスティクスは、廃棄物の中間処理・収集運搬業務を通じて、人と環境が調和し、共存できる循環型社会への構築に向けての地域環境保全に努めます。

会社概要

設 立:1992年
資本金:1000万円
従業員数:22名
業 種:一般廃棄物収集運搬業、産業廃棄物収集運搬・中間処理業、再生資源卸売業
本社住所:熊本県菊池郡大津町杉水2506
TEL:096-293-0743
URL:http://www.greenlogistics.co.jp/