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【第7回】ビジョンと実践で経営改革 (有)荒木水産 荒木 大輔 氏(長崎)(2011.06.08)

荒木氏 (有)荒木水産 荒木 大輔 氏(長崎)

 長崎県松浦市星鹿町で魚の養殖業を営む(有)荒木水産(荒木大輔氏、長崎同友会会員)。荒木氏は二代目として、毎日朝早くから養殖魚への給餌や、海上生け簀での魚の管理作業に日々励んでいます。

 しかし、水産業の現状は厳しく下火傾向にあり、また大手企業の進出もあって、資本力の勝負となり地元の生産者にとっては不安要素ばかりで、業界には閉塞感が漂っていました。

養殖場  この状況を何とか打破したい。この思いが自社を見直すきっかけでした。

 「出世魚」として知られるハマチ。正月へ向けての3カ月(10月~12月)がシーズンということもあり、月ごとに極端な売上の差があり、年末集中型となっていました。これが経営する上でリスクを高めていると危機感を持った荒木氏は、現在取引のある仲買の方の紹介で販路拡大に取り組みました。これまでの長崎、福岡のみならず、今では大阪魚市や東京の築地にまで魚を供給する生産者へと成長しました。

 「実践!実証!」と荒木氏は語ります。「事前に計画を立て、計算しながら物事をすすめていくことも大事ですが、まずは勇気を振りしぼってチャレンジ(実践)してみること。その結果が確かな証拠となり、また自身の糧として蓄積していくことができると考えるようになった」と荒木氏。経営者としての意識が芽生えた瞬間でした。

産・学・官連携を活用して自社に活路を

ハマチ  試行錯誤を続けながら経営改善に努めても、魚の価格は市場相場に左右されているという現状は変わらず、生産者に価格決定権はありませんでした。「もっと美味しく、かつ質の高いハマチを開発したい」そう考えた荒木氏が門を叩いたのは、長崎同友会の総会に来賓として出席していた長崎大学共同研究交流センターでした。

 面識があったわけでもなく、ほぼ初対面という状況の中、水産学部の紹介を受け、民間企業や県といった枠組みにとらわれず、さまざまなことに取り組みたいという荒木氏自身の思い、熱意をそのまま伝えました。その熱意が伝わり、相互協力関係を築くことに成功しました。荒木氏は「運が良かったのだと思います。また長崎大学水産学部の懐の深さに感謝しています」と語りますが、荒木氏のアグレッシブな行動が呼び込んだ結果でした。

 同社は養殖・新商品開発を、長崎大学水産学部は養殖の検体、検量によってデータを収集、分析、提供するといった関係で相互に研究を深めていく中、驚くべきことが判明しました。

 それは従来の餌(サバに魚粉などを加え配合したもの)に栄養剤を混ぜて与えることでハマチの肉質向上に加え、痛みの進行を抑え、魚独特の臭いの軽減に効果があるというものでした。人がサプリメントなどで栄養を補うようなことが魚にも当てはまるのではないかと考えたことがきっかけでした。提供されたデータを基に、「餌の品質管理、ハマチの状態管理を徹底して行い、細心の注意を払っています。」と荒木氏。今では「大ちゃんハマチ」として地元では定着し、ブランド化が進んでいます。

 また、ブランドとしての需要の高まりによって、生産量が増加すると共に雇用の創出にもつながっていく。「この『大ちゃんハマチ』をきっかけとして、地域のほかの水産物への認知度も上がり、地域イメージの向上のみならず、地域の水産物全体の流通が活発となり、地域経済に良い影響を与えることができるようになった」と荒木氏は語ります。少しずつ松浦の水産業に変化の兆しが見えはじめています。

一流の生産者を目指して

荒木氏02  長崎県では、養殖魚の安全・安心を広くアピールし、養殖業の健全な発展と消費者の健全な食生活の維持を図るために、「長崎県養殖業者認定証」という生産した養殖魚が安全・安心であるという情報能力を有する養殖業者を認定する制度があります。長崎県・長崎大学・消費者団体・流通団体の各業界の代表者で構成される第三者機関からの審査・現地視察、確認を経て認定に至ります。同社もこの申請を行い、認定を受けています。

 「食の安全性が叫ばれ、重要視されている現在、いかにコストを抑え利益を生み出すかということよりも食に携わる者として、お客様に安全な魚を安心して食べてもらえる商品を提供し続け、同時においしさも追求していきます。そのために一流の生産者を目指す!」と目標を掲げた荒木氏。今後はICT(Information and Communications Technology)を活用して自社の製品を全国へ発信し、もっと知ってもらいたいと意気込むその姿は、経営者としてハマチのように「出世」していきたいという気持ちに満ち溢れています。

 自分と消費者には嘘はつけない、自分が生み出すものに妥協はできないという養殖に対して常に真摯な態度で臨み、安心・安全を旗印にアイデアを創出しながら今もチャレンジを続けています。

会社概要

設 立:1999年10月
資本金:500万円
事業内容:魚介類の養殖および販売
従業員数:6名(正社員5名、アルバイト1名)
所在地:長崎県松浦市星鹿町北久保免890-3
TEL:0956-75-1471
URL:http://www.arakisuisan.com/links/overview.php

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