シリーズインデックス:わが社の強みは??

【第35回】最終消費者の顔が見える卸売業へ (有)和喜多 代表取締役 小原 修氏(千葉)(2012.01.11)

小原社長 (有)和喜多 代表取締役 小原 修氏(千葉)

 (有)和喜多(小原修社長、千葉同友会会員)は飲食店、ホテル、ゴルフ場のレストランなどを主な取引先として、食肉卸売業を営んでいます。

低付加価値商品が大変身

ハム・ウインナー  食肉卸売業界は、近年同業者間の競争の激化、不況の影響による顧客である飲食店などの納品先からの相次ぐ値下げ要請などにより、収益性は悪化しています。代表取締役である小原氏は「単にメーカーから仕入れて各店舗に流すだけでなく、自ら付加価値の高い仕事をつくっていかなければならない」と考えました。

 まず、これまで価格が安く、収益率の低いひき肉としてしか利用価値がなかった売れにくい部位に着目。それを自社で加工する製造ラインを導入し、無添加や肉質にこだわったハム・ソーセージに加工しました。ラベルもオリジナルであり、できあがった商品には同社独自のブランドを冠することが可能です。価格も高いこれらの商品は収益性の引き上げにつながります。売り先もインターネットなどを通じて、新たな最終消費者も視野に入れています。

 ハム・ソーセージの製造ラインという発想は、以前から経営指針書の中にも盛り込まれていたことであり、奇抜なものではありません。しかし新規性が評価され、千葉県の経営革新計画の承認を受けました。さらにこれまで積み上げてきた数字的な裏付けもあり、スムースに設備投資の融資を受けることができたのです。

倉庫機能に着目し、質を落とさずコストカット

工場内  もうひとつの戦略として、加工場の隣地に大型の冷凍・冷蔵設備を設けました。これまでは自社で保管できずに倉庫業者を利用していましたが、トレーサビリティが重視される昨今、完全に自社の設備を使い安全・確実に食肉を保管する体制に切り替えました。

 また、保管可能な容量が大幅に増えたため、ある程度安い時にまとめて商品を仕入れることが可能になりました。メーカーも売りさばくのに苦労している端材を一定の量で仕入れることは、輸送コストや手間が少なくなるため、メーカー側にとってもメリットがあり、以前より商品が持ち込まれるようになりました。

 思いきった設備投資で仕入れ物量は大幅に増えましたが、食肉の品質を落とさずに全体的なコストを抑え、回転率は好調です。

「食文化の未来に貢献する」理念

 こうした戦略はすべて同社の経営理念から生まれています。理念には「食肉文化を通じて『安心・安全』を提供する」「食文化の未来に貢献する」という内容がうたわれています。しかし以前の小原氏は、「同友会で仲間が『30年先の企業づくり』を訴えていてもピンとこなかった」といいます。「自分が生きていないであろう先のことを考えてどうする」という思いがどこかにあったためです。

 ところがO-157の流行や、狂牛病問題、食肉偽装問題など、いくつもの外的障害と業界体質の問題が襲いかかり、食肉業界のいい加減な姿勢があらわになり、会社も大きな打撃を受けました。
 
 「安全なものを食べたい」という人々の欲求の大きさ、今、口にするものが子孫まで影響するという事実を身を持って体感した小原氏は、「なぜ『食文化の未来に貢献するのか』が、すとんと腹に落ちた」と語ります。

 それからは営業・販売・商品戦略が理念と自然にリンクするようになりました。安価なファーストフードの流行など、消費者のニーズはさまざまですが、「ニーズではなくウォンツ(潜在的欲求)」に目を向けることを大事にしています。美味しく安全なものをゆっくりと食べる時間こそ本当に必要とされている、と基本的な考えはぶれません。

食育で本物の「美味しさ」を伝承

 「子どものうちに、添加物まみれのものより本物の方が『美味しい』と感じることができれば、後世にもそれは伝わっていきます」と小原氏。その考えから、最終消費者が直接製造工程に関われる方法も模索しています。現在、調理師協会とのタイアップで、「食育」をテーマに、子供を自社に招いてハム・ソーセージ作り体験教室を開催しようと計画しています。

 「地域に会社を構えさせてもらっているのだから、半径10km以内の人には何をやっている会社なのか知ってもらい、気軽に訪れられる雰囲気にしたい」と語る小原氏。調理場も単なる作業所ではなく、明るくきれいな内装にしています。こうしたことは社員のモチベーションアップにもつながります。

 現在社員のうち4名が調理師免許を取得しており、以前は卸から仕入れる立場で働いていた人材です。彼らに消費者としての目線で、オリジナルでブランド力のある商品開発に着手してもらっていることも強みのひとつです。

理念はひとつ、戦略はたくさん

 今、新たに放射能の問題が報道されるなど、食肉業界は厳しい環境が続いています。しかし小原氏は外的要因のせいばかりにはしていません。小原氏は「不況の時に『選ばれる』企業であるためにすべきことは、大構想を持つというよりは小さな戦略をいくつも持つことだ」と語ります。指針書を頼りに、今日も実践に励む同社の堅実な経営姿勢が垣間見えました。

会社概要

創 業:1988年
資本金:1,000万円 
年 商:2億7,000円
事業内容:食肉卸販売業
従業員数:17名
所在地:千葉市若葉区若松町768-13
TEL:043-421-5599
URL:http://wakita4129.jp/

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