シリーズインデックス:わが社の強みは??

【第39回】オリジナル商品が強みを生む (有)宇賀神溶接工業所 代表取締役 宇賀神 一弘氏(埼玉)(2012.02.08)

宇賀神社長 (有)宇賀神溶接工業所 代表取締役 宇賀神 一弘氏(埼玉)

職人魂で熱い思いをオリジナル商品へ

 板金・溶接を主とし、半導体をつくる装置の加工などを手がけている(有)宇賀神溶接工業所(宇賀神一弘社長、埼玉同友会会員)。大学卒業後、旅行代理店に勤めていた現社長の宇賀神氏は、1998年、28歳の時に実家の同社に入社しました。当時、会社はバブル崩壊後の景気の低迷と重なり、受注は減少傾向にありました。さらに取引先からは「お宅はいくらでできるの?」と安さばかりを追求され、下請け会社同士での合見積合戦は、しのぎを削る限界まで要求されました。

 「下請けの仕事をこなすだけでは、将来はない」と、考えた宇賀神氏は、意を決し次へのステップに踏み出しました。それは、もともと好きだった、ものづくりの分野へのチャレンジでした。「言われたものを作るだけでは、安さ合戦になってしまう。そこで、自分でデザインし、それを自分で製品化できたらと考えました」と宇賀神氏は語ります。

OVEL CHAIR  好きだったとはいえ、デザインの経験がなかった宇賀神氏は基礎から学ぶために、仕事の傍ら、デザイン学校に2年間通いました。5年前から椅子や小物の製作を開始。ステンレス溶接の技術を生かした、スタイリッシュなデザインは高く評価され、コンペを勝ち抜き、やがて2007年のオリジナルブランド「WELDICH」(ウェルディック)の創設に至ります。

 TOKYO DESIGNERS WEEK 2008での総ステンレス製で楕円形の美しさが際立つ「OVAL CHAIR」の出展を皮切りに、同年の「座ってみたい北の創作椅子展2008」では、三個の大きさが違うステンレス球体と波状のフォルムが美しい「SUN&RIVER」が入選。さらに若洲海浜公園でのシーサイドベンチ・シンポジウムではステンレス製の大きな球体と木材の調和が美しい「KAKEHASHI」)が入選するなど、徐々に自社ブランドが認知されていきました。

手で漕ぐ自転車「ハンドバイク」

 こうした中で舞い込んだ、一人の障害者の方からの依頼が、宇賀神氏の可能性をさらに広げました。それは事故により自転車を漕ぐことができなくなってしまった方からの自転車製作依頼でした。依頼者の職業は、自転車専門紙のライター。自転車には人一倍思い入れがありました。当時、足で漕げなくても、手で漕ぐことができ、しかも手の筋力を必要とせず、それでいてスタイリッシュなデザインを望む依頼者の意に適うものはありませんでした。そこでたまたま目にした宇賀神氏のホームページを見て、高い技術力を見込んで依頼してきたのでした。

 「自転車なんて作ったこともないし、無理だと思った」と宇賀神氏は当時を振り返ります。断ろうと思いましたが「イメージしている自転車の製作を、10社以上に無理だと断られました」という依頼者の言葉に考えが変わりました。依頼者の自転車に対する熱い思いが伝わり、ものづくりのチャレンジ精神が湧き上がりました。他の人ができないなら、自分がやってあげたいとの気持ちになり、宇賀神氏の挑戦が始まりました。「誰もやったことのない分野にこそ、可能性があると思ったのです」。

ハンドバイク  デザイナーの柴田映司氏の協力を得ながらスタートしたものの、ゼロからのスタートは困難を極めました。フレームの長さは何ミリが妥当なのかというところから始まり、パーツ一つ一つの大きさを決めるだけでも試行錯誤が続き、図面が完成するまでに半年を要し、1年かけて試作品が完成しました。その後もハンドルだけでも10回も作り直し、握力が弱い人でも握れるグリップにと改善が加えられました。

 こうして完成した手で漕ぐ自転車「ハンドバイク」は既成概念を打ち破るものでした。障害者向けのレース用自転車とは異なり、手の筋力が弱くても漕ぐことができ、また、デザイン性に優れていました。優れたデザインの物事に贈られるグッドデザイン賞2011の受賞にも結びつき、自転車製作により業界内外からの注目度はがぜんアップしました。

自分で考え、作る

溶接現場  この自転車の価格は一台60~75万円しますが、オーダーメイドで、細かいところまで、ユーザーの要望に応えることが可能だという魅力があります。しかし、この自転車の魅力はそこだけにはとどまりません。乗った時の視界が普通の自転車とはまったく異なり、空を見上げるような感覚になる爽快感、スピード感を楽しむことができるのです。従来の自転車とはまったく別の乗り物として、子どもから大人まで楽しむことができる、と可能性を感じた宇賀神氏は積極的に売り込みを開始しました。障害者はもちろん、健常者も楽しめる利点を生かして、公園設計の会社や、街づくりのイベントなどでの営業が軌道に乗り始めました。「自分で考え、自分で作り、そして思い入れがあるからこそ、自信を持って自分から売り込める。これが我が社の強味なのです」と語ります。
 
 また、デザインイベントの出展を通して培った広い人脈から、建築家や、インテリアデザイナー、家具職人など多岐に渡る分野の専門家に声をかけ、共同活動も始めました。「韮崎市地域情報センター」のリノベーションプロジェクトでは、このメンバーが内装設計を受注し、論議を重ねながら一つの空間を作り上げることに成功しました。ここでの評価がまた次へのステップと繋がる手ごたえを感じる宇賀神氏。この春にはこのメンバーで埼玉県立近代美術館での展示会も予定されています。「今はいろいろな種をまいている時期。いろいろなところから芽を出してくるのが楽しみです」と、宇賀神氏は今後への期待をのぞかかせました。

会社概要

設 立:1964年10月
資本金:300万円
事業内容:ステンレス、アルミ等の金属溶接、板金加工
従業員数:5名
所在地:埼玉県朝霞市浜崎4-14-15
TEL:048-486-2720
FAX:048-486-2721
URL:http://www.yousetsu.net

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