【第48回(最終回)】お客様を知り、お客様を思う (有)ガーデンツリー(庭遊館) 代表取締役 尾関 准一氏(岐阜)

尾関社長

(有)ガーデンツリー(庭遊館) 代表取締役 尾関 准一氏(岐阜)

下請けから元請へ

 (有)ガーデンツリーの社長の尾関氏(岐阜同友会会員)は2000年に独立、創業しました。当初はハウスメーカーなどからのガーデンエクステリアの下請工事の仕事を行なっていましたが、元請となる決断をしていきます。その理由は諸々のクレームに対して、下請の立場ではお客様と顔を合わせることがなく、お客様の声が届きにくいことが大きなネックとなっていると感じたからでした。そして、展示場として「庭遊館」をオープン。元請として事業を展開していきますが、商談件数は増えるものの契約数が伸びていかない課題に直面しました。

業界の現状を分析

 そこで、尾関氏は業界の現状分析を試みます。その中で着目したことは、全般的にデフレ基調であって、どの業者も過剰に商品点数を取り扱い、価格訴求したチラシ広告を頻繁に打つといった同質的な取り組みに終始しているということでした。そこで、折り込み広告、特に商品そのものを訴求することを止め、自社のイメージを前面に押し出す広告宣伝に切り替えていきました。そのため、写真の機材、撮影そのものにも強いこだわりを持っています。また、ホームページの更新の頻度を上げ、アクセス数を増やす努力をしていますが、ホームページからの問い合わせに直接答えるのではなく、展示場への来店を促すものとして取り組んでいます。こうして来店者数を伸ばすことに力を注いでいます。

 また、あえて商品点数を絞っていくことに取り組みます。これは「自分に自信のある商品だけを出すと客層が変わる」との確信につながりました。さらに、業界は全般的に「お客様に対して『グレーな仕事』をしている」とも分析しました。例えば、お客様との図面のやりとりに関しても「できたら、電話します」といった慣習です。そこで同社では、施行予定のスケジュール帳をお客様に渡しています。
 
 このような取り組みに至る過程ではさまざまな悩みやもがきがあり、スムーズにたどり着いたわけではありません。さまざまなセミナーなども受講し、最終的に「ランチェスター経営」に行き着きました。そして地域に密着した方向での事業展開を方針として打ち出し、「事業所から一般道路を使って30分以内」のエリアを対象の商圏と定めました。

お客様の声を徹底的に聴く

 エクステリアの施工例

 これらのことを基本において、来店していただくお客様に対して徹底した対話を重ね、お客様の要望を形にしていきます。その項目は多岐にわたり、「家族構成」や「好きな色合い」はもちろんのこと、「利き腕」(扉の開閉に関わる)や家族の各種記念日、場合によっては「夫婦の馴れ初め」なども聞きます。また、「何故このようなお金になっているのか」などの説明を徹底的に行うことにも留意しています。工事の進捗ややり取りをFacebookを活用して行うケースもあり、ITの活用も積極的にしています。さらには家族全員の来店を求め、「家族写真」の撮影も行います。このように遊び心も持ちながら、庭作りをお客様とともに進めていくことを徹底していきます。社員が仕事をするパソコンはデュアルモニターを使用しており、片方の画面にはお客様の家族の写真を映し、絶えずお客様をイメージしながら仕事に取り組んでいます。

企業としてのブランドづくり

 こうした取り組みは社員に対してもレベルアップを求めることになります。まずは言葉遣いとして小さな「っ」を省くこと、専門用語厳禁、また、同社での禁句として「とりあえず」「こんなものです」といった言葉を使わないなどを教育しています。

 また、展示場としては異例の第1・第3土曜日を休みしています。「決断には迷いましたが、休みを理由に他へ行く人は結局よそに行くのだから」とのアドバイスなども受け決断しました。「企業としての『品格』いわば『ブランド』は、宣伝広告では決して創ることができない」と尾関氏は強調し、お客様への満足度の向上こそが企業ブランドの創造であると考えています。

将来を見据えて

 尾関氏は将来に向けて、いわゆる中流層というものが減少し、二極化が一層激しくなっていくと見ています。そうした中で、一般的な所得階層をターゲットとしていくには大きな資金力を必要とします。中小企業はお客様の層を見極め、価格の競争ではなく、より高い満足度を生み出す方向での仕事づくりが求められていると考えています。そうしたこだわりをベースに地域№1を目指しています。「地元(各務原市)のエクステリアが没個性で画一的な商品ではなく、個性が表現されたさまざまなエクステリアや庭で彩られるような街になっていくことを目指していきたい」と尾関氏は力強く語ります。

会社概要

創 業:2000年
資本金:500万円
従業員数:6名
事業内容:外構工事・造園工事・エクステリア設計施工
所在地:岐阜県各務原市
TEL:058-389-5922
URL:http://www.teiyukan.jp/