シリーズインデックス:共に育つ

【第3回】自主性を育む「共に育つ」の実践 岸田木材(株) 代表取締役 岸田 毅氏(富山)(2012.05.09)

岸田社長 岸田木材(株) 代表取締役 岸田 毅氏(富山)

製材業を取り巻く環境変化

 岸田木材(株)(岸田毅代表取締役、富山同友会会員)の創業は1883年。来年2013年には130周年を迎えます。起源は岸田氏の曾祖父。宮大工に始まり、氷見郡役場・氷見漁港建設、鉄道請負などの土木建築業を手がけ、分社化を経て現在の製材業に変化してきました。

 岸田氏は1981年、26歳で入社。当時の製品は土木材が主力で、トンネルやダム、高速道路の建設材として製材し、大手ゼネコンが主な得意先でした。折しもバブル経済の前夜、公共事業が増えていく時代で、「いかに大量の製品を、低コストで生産するかを、毎日考えていました」と岸田氏は言います。

 その後、公共事業が減り始め、プーチン政権下でのロシア材の輸入関税の大幅アップなどもあり、製材業をとりまく環境が激変。年々、利益が出すのが難しい状況となり、同業者の廃業や倒産も相次いでいきました。

経営理念を創り、方向性を見いだす

 同友会には地元の先輩経営者の熱心な誘いもあり、2002年に入会。「経営を学びたい、特に経営指針づくりに興味がありました」と岸田氏は言います。2004年には「第10期経営指針を創る会」を受講し、経営指針を成文化しました。

 この時につくった経営理念は、従来からあった理念と文言は似ていますが、そこに込められた事業への思い、社会への思い、社員への思いは、比べようもない熱いものとなりました。同時に、歴史分析や環境分析などをしっかり行ったことで、自社の方向性や戦略が明確になり、同時に経営者としての決意が強固なものになっていきました。

 同社では現在、富山県中小企業経営革新計画の承認を受けて、国産材の有効活用に取り組み、森林価値の最大化に取り組んでいます。氷見市はその気候風土により古くから木がまっすぐに育つ豊穣な土地として知られ、電柱として重宝されていました。そのまっすぐな「ひみ杉」を余すところなく生かすことで、森を守り育てていくことをめざしています。

常に悩んでいた「人」の問題

 業績が良いときも、そうでないときも、常に悩んでいたのが「人」の問題です。「まさに3Kの製造現場。そして職人気質の社員が多く、『仕事は盗んで覚えろ』式。求人しても応募が少ないし、採用しても続かない。その繰り返しでした」と岸田氏。新卒採用は17年前にスタートしましたが、「数名は幹部社員として育ってくれましたが、多くは定着しませんでした。外部の社員研修もよく利用しましたが…」と振り返ります。

 また会社の方針や部内のルールについても、前向きに取り組む社員がいる一方、見向きもしない社員もおり、「徹底できない」ということが常態化していました。

「共に育つ」取り組みをスタート

合同説明会にて  そこで、経営指針受講の年、同友会の社員研修会に社員と一緒に参加します。これが契機となり、「共に育つ」取り組みが始まりました。共育委員会が担当する「中堅社員研修会」「マネジメント(幹部社員)研修会」「経営者大学(富山大学と連携)」、共同求人委員会での新卒採用や「新入社員研修会」など、ほとんどの中堅・若手社員が同友会で学ぶようになりました。一昨年からは、共育委員長として委員会をリードし、多くの会員の参加を呼びかけています。
 また、会員の取り組みに学び「社内委員会制度」を立ち上げます。安全委員会、共育委員会、改善委員会、品質改善委員会、生産委員会、森林パートナー事業部の6委員会に全ての社員が所属し、月1~4回、就業時間後に活動しています。

東海氏と岸田氏  入社歴15年の東海豊氏(生産部、仕入れ部)は、5年前に中堅社員研修会を受講、マネジメント研修会にはここ3年連続受講しています。「毎年参加するたびに新たな気づきがあります。会社は違っても同じ立場の方と悩みや問題を語りあうことで、幹部社員としての自分の立ち位置が分かり、課題も発見できます。経営理念や社長の思いが理解できるようになるにつれて、それを中堅や若手社員にどう伝えていくかを考えるようになりました」と東海氏は語ります。

森林パートナー事業部は経営理念の具現化

木霊の森  少しずつ、一人また一人と、経営理念に対する理解が深まるにつれ、そこに向かって自分たちは何に取り組んでいくのか。社員が一緒に語り合い、考えていく中で、コミュニケーションは確実に深まっていきました。

 富山県氷見市上田地区にある「木霊(こだま)の森」には、下草刈りや倒木の撤去など、森を整備する森林パートナー事業部のメンバーの姿があります。2008年10月、同地区の森林を向こう10年間借り受け、風雪被害などで荒れた森の再生をめざした取り組みが始まりました。その中心となったのが中堅社員などの若手メンバー。毎月第2土曜日などに活動を行っています。地域の方々や子どもたちを対象にしたイベントも開催。森や木に親しみ、自然や郷土を愛する心を育てています。この取り組みは、まさに経営理念の具現化であり、社員の成長を促し、地域を守り、命を育む大切な場として、社員の自信とやりがいにつながっています。

経営理念

1.私たちは、木に新たな命を吹き込む創造を通じて「木材の素晴らしさと安心」を提供します。
2.私たちは、「植林から製材までの循環」の中で、地球環境の保全と住環境の充実を目指します。
3.私たちは、コミュニケーションを大事にし、ともに学び助け合い、お互いの幸せの実現を目指します。

会社概要

創 業:1883年
資本金:4,800万円
事業内容:地域材、ロシア・アメリカ・カナダからの輸入材を製材加工
1.住宅資材…ひみ杉の柱(管柱・通柱・化粧柱)
2.土木建設資材…土留矢板・杭(松・杉)・桟木
3.産業資材…梱包材・オガ粉(茸・畜産・工業用)・ウッドチップ(製紙用・工業用・バイオマス発電)
従業員数:29名
所在地:富山県氷見市十二町万尾前247-1
TEL:0766-91-0093
URL:http://www.kishidamokuzai.co.jp/

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