【第6回】できる できる 必ずできる 北陸トラック運送(株) 代表取締役社長 水島 正芳氏(福井)

水島社長

北陸トラック運送(株) 代表取締役社長 水島 正芳氏(福井)

社屋

 北陸トラック運送(株)(水島正芳社長、福井同友会会員)の設立は1972年。トラックの運転手をしていた父親(現会長)が、水島氏の生まれた翌年に30歳で独立してつくった会社です。現在は輸送一辺倒から脱却し、保管から配送までの物流を効率化。トータルコストの削減を実現する総合物流商社になりました。

 水島氏の入社は1994年。グループ子会社の社長、取引先の物流子会社への出向期間を経て本社専務になりました。かねてより「60歳で社長を辞める」と言っていた父親から社長交代を迫られましたが、伯父に中継ぎをお願いし、社長になったのは2008年の12月でした。水島氏は当時の状況を「自分が何もしなくても会社は回っていて、何をしたらよいか分からない状態だった」と振り返ります。そんな中、同じ青年経営者の熱心な誘いもあり、2009年10月に福井同友会に入会しました。

考えて行動出来る社員へ

社内の様子

 当時の部長や部門長は、日曜日、夜、早朝も構わず一生懸命働く、非常に真面目で忠実な社員でした。しかし、ちょっとした見積もりを書くのも「いくらにしましょうか?」。今まで「いくらにしとけ」と指示を出していた創業者たちの影響がここにありました。

 「この状況で部門が赤字になれば、社員は愚痴ばかりになる」と、水島氏は事前に自分で計算を済ませた上で、必ず「いくらにしたらいいと思う?いくらでもいいよ」と答えるようにしました。すると、最初は悩んでいた社員も「こういう風に考えて、いくらにしようと思うのですが、どうですか?」と持ってくるようになり、今では戦略的な判断や多少のさじ加減はあるものの、大体のものには「これでいいんじゃない」と答えられるようになりました。

 これは見積もりに限った話ではなく、「どうしたらいいでしょうか?」と聞いてきたら、「どうしたらいいと思う?」と聞き返すようにしています。それを続けることで、一人ひとりが考えて行動するようになってきました。

 また、部門単位で表彰する「改善コンテスト」を3年前から始めました。コスト削減やミスの低減だけでなく、みんなで同じ目標を立ててやっていく姿勢を共有するのが一番の目的です。部門間で内容や取り組み状況に差はありますが、年間10万円の金額効果であっても、部門全体の取り組みが活発であれば、金額効果のあったものより高く評価するなど、個人個人の意識改革への貢献度を重視しています。

通達するだけでなく研修も

社内の様子2

 運送会社をやっていると、やはり事故は避けては通れません。社会的な責任はもちろん、件数によって任意保険の割引率が大きく変わるため、会議の内容もどうしても「事故・クレームを減らそう」という一方的な通達ばかりになりがちでした。そこで、毎回そんな会議をしていても仕方がないと、4時間の会議の内1~2時間は必ず研修の場を設けるようにしました。「最も衝撃的だったと思われるのは、旦那さんを高速道路で後ろからトラックに突っ込まれて亡くしている、幼い子どもを持つ女性に講演していただいたとき。この時はみんな泣きながら話を聞いていた。どれだけいい話を聞いても忘れてしまうのが人間だが、少しずつでも残っていけば意識も変わっていくと考え、そういった研修を繰り返している」と水島氏は言います。

 また、あいさつには特に力を入れています。サービス業はあいさつが命、トラックドライバーもサービス業との考えからです。新入社員は必ず研修会場に5日間寝泊りしてあいさつ訓練を受け、設立30周年記念の時には正社員全員が一泊二日であいさつ訓練をするなど、あいさつの大切さをしっかりと伝えています。運送業界では貴重な存在として、あいさつでお客様に褒めていただけることも多く、それが社員の取り組み姿勢を前向きにすることにもつながっています。

ひとつのことが徹底できる体質を

 「100-1は99ではなく0」。同社では、こう指導しています。会社で決めたことが一人でもできていなければ、お客様から「できていないね」と指摘されるからです。しかし、事故・クレームがあるたびにどんどん決め事だけが増えてきたことで、逆に全てが中途半端になっていると水島氏は感じていました。そこで「決め事ばかり増やすのではなく、それができる会社、ひとつのことが徹底してできる体質になれば何でもできる」と、個人個人の意識改革の重要性を重ねて訴えました。

 「とにかくやり続けることが大切。成功している人も途中途中はいろいろな失敗をしているが、成功するまでやり続けることが最終的に『成功した』ということだと思う。それが『私達の信条』にもなっている」と結んだ水島氏。社員と共に育ち続けるため、今日も自身のやるべきことを模索し続けています。

創業精神

<私達の信条>
できる できる 必ずできる
できないと思えば できない
できない事も できると信じ
永遠に自分を進歩させたい
できる できる 必ずできる

会社概要

設 立:1972年
資本金:4,800万円
年 商:63億2,600万円
事業内容:一般貨物自動車運送業・倉庫業、労働者派遣事業
従業員数:530名(正社員:280名、パートアルバイト:約250名、グループ計:約750名)
所在地:福井県福井市上細江町20字1番地
TEL:0776-41-2500
URL:http://hokutora.co.jp/