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【第18回】誇りを持ち頑張って働ける会社に (株)湯佐和 代表取締役 湯澤 剛氏(神奈川)(2012.08.29)

湯澤社長 (株)湯佐和 代表取締役 湯澤 剛氏(神奈川)

急きょ事業を引き継ぐ

従業員のみなさん  横浜市と鎌倉市の市境に位置する大船(鎌倉市)で30年以上にわたって居酒屋を経営する(株)湯佐和(湯澤剛社長、神奈川同友会会員)は、現在神奈川県内に16店舗展開しています。同社の居酒屋には、毎日約1,000名(牛丼吉野家は除く)のお客様が来店されていますので、年間延べ36万人の地域の方々から愛されています。

 湯澤氏は大学卒業後大手飲料メーカーに入社し、営業やマーケティング・人事部門などで13年間勤務し、活躍してきました。しかし1999年、創業者であった父が突然の病で逝去し、元々事業を継承する予定はありませんでしたが、金融機関などからの強い要請もあり、やむを得ず事業を引き継ぐことに。父親への反発があり事業は絶対に継がないつもりでしたので、父親の会社や店舗には一切行ったこともなく、さらには多くのメンバーや組織を動かした経験がないまま、急きょ継ぐことになりました。

絶望的な状況下で経営がスタート

 継いでみてはみたものの、当時の会社は、多額の有利子負債と債務超過を抱え、経理部長や営業部長・マネージャーなどの幹部社員は存在せず、20店舗で店長も2人のみという状態でした。さらに毎日が資金ショートの連続で、国税局の取り立て、そして天気によって売上が大きく変動するために天気予報におびえる日々が続いていました。各店舗はさまざまな問題が発生するも注意・指導ができないままの放置状態が続き、売上は右肩下がりの絶望的な状況下での経営がスタートしました。

 どん底で苦悩した中、「迷っていることが一番問題で危険。覚悟を決めて一歩を踏み出す」という1つの答えを出しました。まずは今の最悪の状況をきちんと直視すること、そして期間を定めて、その期間は迷わず全力で取り組むことを決心しました。期間は1827日(5年間+うるう年2日)と定めて、その1827日分の日めくりカレンダーもつくりました。

一点突破から全面展開

 八方ふさがりから脱却するための取り組みがはじまりました。前職の経験からマーケティングは学んでいたので得意でした。そこで限られた時間と資源を一つにつぎ込み、一つだけうまく行っているものをつくろうと志向しました。なけなしの500万円で、若い社員を採用し、従来の店舗とは異なる新モデル店舗(開運居酒屋 七福)を立ち上げました。しかしそのすべてをかけた新生店舗は鳴かず飛ばずで、売上不振に陥ります。

 問題点を振り返ると、社員と真剣に向き合っていなかった自分自身、そして総花的な店舗運営が課題であることに気づきました。そこでターゲット層をしっかりと絞った土俵設定とそのコンセプトを社員と徹底的に話し合い再スタートを切りました。すると売上・利益ともに大幅アップを実現し、この方向性を確信しました。

 その後モデル店舗を機軸に、3カ月に1回、各店舗を改装していく全面展開を図りました。改装後の各店舗は、みるみるうちに売上・利益をアップさせていき、過去最高利益を更新し、多額の有利子負債は大幅に減少していきました。もう支払いに追われることも天気予報におびえることもありません。

社員や地域から必要とされている会社であったこと

 ところが、過去最高利益を出した直後に大問題が発生しました。一つは、新聞掲載される食品事故を発生させてしまい、多くのお客様や関係者に迷惑をかけてしまったこと。もう一つは火事で店舗が全焼し、社員を亡くしてしまったことです。

 連続した問題から会社と事業の売却も考え、経営から手を引こうとしました。しかしある若い社員から「自分たちの会社をそんな簡単に考えないでほしい」と言われ、湯澤氏ははっと気づきます。今まで多額の借金があるため利益第一主義で突っ走ってきたので、ある意味、「自社の借金を返済するために社員には頑張ってもらい申し訳ない」という後ろめたい気持ちがありました。そんな社員から「自分たちの会社」という一言が出たことにびっくりしたのです。

 また、ある店舗を撤退するとき、お客様の老夫婦から「私たち年金生活者が安くて美味しいお寿司を食べられるお店でいつも楽しみにしているのになぜ閉店するのか」という苦情の手紙をいただきました。湯澤氏は、自社の借金を返済するため10年間突き進んできましたが、「社員や地域から必要とされている会社」であったことに初めて気づいたのです。

人を生かす経営は中小企業の強み

従業員のみなさん2  そのころ湯澤氏は神奈川同友会に入会し、「労使見解(中小企業における労使関係の見解)」に出合います。「労使見解」の本質は、なるほどと思うことばかりでした。利益第一主義の反省や結果から、社員・人こそが最大の資産であることを学びました。「人を生かす経営とは道徳的な観点ではなく、あくまで企業を維持・発展させるためのバックボーンである」と湯澤氏は考えています。毎週行っている店長会議では、毎日本部に届くお客様アンケートの結果を共有し、今後の方向性を話しあっています。

 大企業の強み(マーケティング・仕組みづくり)と中小企業の強み(人を生かす経営)を融合させ、将来的には「社員が結果の出やすい仕組みをつくり、そこで誇りを持った社員が頑張って働ける」会社づくりに向けて、湯澤氏は社員とともに一歩ずつ歩み続けています。

会社概要

設 立:1978年
年 商:16億円
従業員数:54名(パート・アルバイト220名)
事業内容:飲食店経営(自社居酒屋11店舗、回転寿司2店舗、牛丼吉野家2店舗、はなの舞1店舗、合計16店舗)
不動産賃貸業
所在地:神奈川県鎌倉市大船1-23-22
URL:http://www.yusawa.com

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