シリーズインデックス:共に育つ

【第21回】地域や顧客と共に育つジュエリーメーカー (株)石友 常務取締役 向山 孝明氏(山梨)(2012.09.19)

向山常務 (株)石友 常務取締役 向山 孝明氏(山梨)

衰退する地場産業の中で

 近代的な社屋が立ちならぶ甲府市北東部の工業団地。その一角に貴金属製品の製造・卸を手掛ける(株)石友(向山孝明常務、山梨同友会会員)はあります。同社のある山梨県は原石の加工と貴金属加工が一体となった産地で、研磨宝飾製品の出荷額は日本一です。しかし、国内市場の急激な縮小により、山梨県のジュエリー出荷額は1996年に1,397億円あったものが2011年には445億円にまで激減しています。

 同社は衰退する地場産業の中にあっても有名ブランドのOEM製造を主軸に業績を伸ばしています。その取り組みの中軸には「地域や顧客と共に育つ精神」がありました。

ファーストコールカンパニーをめざそう

 国内景気が上向きかけた2005年ごろから、体力を消耗しきった宝飾問屋の倒産が一気に増えました。その際、貸倒れの被害もあり、同社は2005年から2007年まで3期連続の赤字となりました。以前より危機感をもっていた向山氏は赤字を見越して対策を打っていました。そのキーワードは「ファーストコールカンパニー」です。製造依頼元や小売店が困ったときには、真っ先に同社に電話がかかってくる会社づくりです。

 製品を作っても売れない時代。「顧客が本当に欲しいもの、必要とされるものを作れる会社」をめざし、顧客の新商品情報などの秘密を守りながら、スピーディーに対応できる強み(仕入、デザイン、製造、卸、販売ができる)を最大限発揮する体制を整えていきました。

業界では異例 セル生産方式の導入

社員さん  同時に社員一人ひとりの仕事に対するやりがい、働きがいを大切にしようと、ジュエリーの製造工程を改革します。業界では研磨・磨き・留め、などの工程別の分業制が常識ですが、職人がすべてに携わるセル生産方式を2006年に導入。単なるモノとしてではなく「作品」として仕上げ、職人の技術・技能の向上と仕事に対する誇り、やりがいにつなげました。当初は職人が高い技術を身につけると独立してしまうのではないかという懸念もありましたが、これまでに独立した職人はいません。「生産性は大きく落ちましたが、続けることでようやく採算が合うところまで見えてきた」と向山氏は言います。

 また「地場産業に携わる会社として職人を育てる使命がある」として、県内にある全国唯一の公立ジュエリー専門学校から新卒のデザイナーや職人を毎年採用しています。

お客様の近くへ

商品  同社は1994年に現地に新築移転しました。設計当初より「お客様の近くへ」という考え方を大切にした会社づくりを進め、長期的な視点から「宝飾業界をお客様に理解して欲しい。ならばお客様に来社していただこう」との思いで、販売なしの工房見学を数多く受け入れています。製造現場を公開する同業者はまずありません。検品作業や職人の技を間近で見学した方からは「石友さんのジュエリーはどこで購入できるのか」という声が必ずあがります。最終ユーザーである消費者には「石友の製品なら間違いない」という安心感につながり、全国に広がる小売店も自信をもって販売することができます。

 また、26回目を迎える「ファミリーセール」というイベントがあります。当初は社員の仕事や働く現場を家族に知ってもらう場にしようと、販売なしの見学会としてスタートしました。しかし参加者の強い要望から20回目からは販売も行うようになり、事業化しました。開催にあたっては、社員が実行委員会を組み、小グループに分かれて企画を練ります。どのように集客するのか、無料で提供する昼食はどんな素材を使い、メニューをどう設定するのか、スムーズなご案内をするにはどうすべきか、などすべて自主的に検討されています。

 その過程で、新入社員からベテラン社員までアイデアを出し合い、日ごろの悩みも相談しながら、自社の存在意義を深める機会としています。近年では3日間で1000名が訪れ、5,000万円の売上規模に成長しています。

 その他さまざまなイベントを合わせると、年間で3000人あまりが会社を訪れます。営業職、事務職、職人など全社員が関わり、お客様も社員も育ち合う場になっています。

心を入れて創り、心を込めて売る

 同社の経営理念は「心を入れて創り、心を込めて売る」です。同社は理念を実践するために「会社の基本」を重視しています。例えば、社員と雇用契約を結ぶ上で、就業規則、賃金規定を一人ひとりに確実に説明して社内ルールを徹底することや、新入社員には実務研修、現場研修など綿密に組まれた教育マニュアルを実施します。伝票の数字のミスひとつで大きなトラブルにつながることもあるため、実務研修では一人ひとりの「字体のクセ」を矯正するため、数字の書き方から始まります。

 向山氏は「学ぶことの大切さを同友会で学んだ」と強調します。これまでは社員に対し「なぜ理解できないのか分からない」という姿勢でしたが、「人はそれぞれ違う。その違いを認め合ってこそ本当の『共育』が始まる。社員一人ひとりの隠れている能力が発揮できる企業づくりを進めたい」と語ります。
社屋

会社概要

設 立:1972年
資本金:3,000万円
業 種:貴金属製品の製造及び卸売
従業員数:80名(内パート15名)
TEL:055-220-1711
FAX:055-220-1777
URL:http://www.ishitomo.co.jp/

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