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【第30回】自主性を引出し会社再生に挑む 協栄金属工業(株)代表取締役社長 小山 久紀氏(島根)(2012.11.21)

小山社長 協栄金属工業(株)代表取締役社長 小山 久紀氏(島根)

倒産の危機

社屋  協栄金属工業(株)(小山久紀社長、島根同友会会員)は、人口減少が続く過疎の町、掛合町が誘致したにもかかわらず創業後間もなく倒産した会社を、地元の有志が買い取って1972年に創業した会社です。「協栄」という名前の由来は、「地域の有志(株主)」「地域」「社員」の3つの力を合わせ、繁栄する会社になろうという思いからです。会社では薄物板金加工、パイプ加工、組立など幅広くさまざまな板金加工を現在72名の社員で行っています。

 小山氏は、地元のゴルフ場の倒産により職を失いましたが、縁があって6年前に同社に入社しました。ところが入社した翌年、オーナーが退任したのをきっかけに、主要取引先の大幅な受注減少と外部環境の悪化があいまって経営状況が悪化してきました。「このままではいけない」と、小山氏は、製造の仕事を選んで入社したにもかかわらず、入社2年目で前職での経理の経験が買われて総務に異動、同時に取締役総務部長に就任しました。総務では業績が悪化してきたため苦しくなってきた資金繰りに対して再建計画書を作り金融機関と折衝し、借入の返済猶予をしてもらい、取りあえず乗り切ることができるようにしました。しかし思い切った対策ができなかったため、再建計画と大きく乖離(かいり)した2年続きの大赤字で、ついに1.5億円の債務超過になってしまいました。

辛いリストラ

 このため、30人もの社員を解雇することになりました。小山氏は、「総務担当役員として大変申し訳なく、また情けなく悔しい思いをした」と語ります。一方では残った社員には、賃金カットや賞与なしなど、経費節減を徹底して行いました。当然のことながら士気は落ち、労災の発生は増えるなど社内は混乱し、会社に見切りをつけて退職する者もでてきました。「長年続いた協栄金属工業もこれで終わるのではないかと思った」と小山氏は当時を振り返ります。

想定外の社長要請と社長就任

 そんなとき、突然オーナーから小山氏に「社長をやってくれ」との要請がありました。小山氏は、大赤字になってもだれ一人責任を取らず、何の罪もない社員を30人もリストラする債務超過の会社に見切りをつけ、むしろ辞めようと思っていた矢先のことでした。社長要請を受けて間もなく、夜遅くまで社員が自分の責任を全うするため作業している光景に出合い、自分が責任逃れして辞めようとしていることに気づきます。「このとき『絶対に社員を幸せにしたい。この会社にいて良かったと思われる会社にしたい。それが自分の責任だ』と強く思った。翌朝、工場で社員に声をかけているうちに、『この社員となら一緒に会社を再建できる』と直感で思った」と小山氏。こうして、実に入社4年目で社長に就任しました。

社員の自主性引き出し

 社長に就任し、まず皆に「今後一切リストラをしない」と宣言しました。しかし社員の中では、賃金カットなど労働環境が悪いままの中、依然として不満が渦巻いていました。そこで全社一丸で赤字からの脱却を目標に掲げ「良いと思えば、すべてやってみる。駄目なら止めればいい。お金の心配はするな。すべての利益責任は、自分ひとりで取る」との発言の上、社員と徹底的に話し合い、信頼関係づくりと自主性を引出すことに根気強く取り組んでいきました。

単月黒字で自主性芽生え

社内の様子  このような状況の中コンサルタントの指導のもと現場改善に取組んだ結果、社長就任3カ月で単月度黒字を出すことができました。この時点で小山氏は、社員を信頼することで赤字脱却できることを確信しました。これに伴い、社員からも自主的に新しい提案が出るようになってきました。小山氏は、「自主性のある社員が出てきたことを大変うれしく、頼もしく思うようになりました」と言います。社員からの提案はすべて承認し、自主的に考え判断させ、成功体験が積み重なるように心掛けました。この結果、現場の不満が一気に良い方向に向き、わずか1年で7,500万円の経営改善ができ、赤字脱却の目途が見えてきました。大きな改善ができたので社員の賃金を元に戻し、賞与も支給しました。このころから、皆の顔に少しずつ笑顔が見られるようになりました。「社員が主体性を持ち、目標に向かって取り組む体質に変わりつつあることを実感した」と小山氏は語ります。

経営指針で新たなステージへ

 今年度は、待望の黒字決算が見えてきました。小山氏は、引き続き社員が主体性を発揮できるよう、労働環境の改善や同社が目指す次のステージを早急に示す必要性があると感じていました。そこで、縁あって2年前から経営の学びを深めるために入会していた島根同友会にて、現在経営指針づくりに取り組んでいます。「来年の4月には、社員を巻き込んで経営指針を完成の上、発表会を行い、経営理念と目指す目標を共有化し達成に挑みたい。社員が自分の子供を入社させたいと思う会社。社員の子供が親の仕事を見て、入社したいと思う会社。そして地域の方がこの会社に入社したいと思う会社にすることが自分の一番の役割だ」と小山氏は未来を見据えて語ります。

会社概要

創 業:1972年
資本金:4,500万円
売上高:約7億円
事業内容:薄物板金加工、パイプ加工、組立、ごみ集積箱製造販売
従業員数:72名(内派遣社員3名)
所在地:島根県雲南市掛合町掛合1865
TEL:0854-62-0015
URL:http://www.kyoei-kakeya.co.jp

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