シリーズインデックス:共に育つ

【第33回】私はナンバー3の経営者 (有)工藤板金工業 専務取締役 市川 恵子氏(青森)(2012.12.12)

市川専務 (有)工藤板金工業 専務取締役 市川 恵子氏(青森)

実家の仕事を手伝って

商品  (有)工藤板金工業(市川恵子専務、青森同友会会員)は、市川氏の父親、現会長である工藤幸雄氏が創業、今年で創業50周年を迎えた青森県八戸市にある屋根板金工事業の会社です。今年3月に、市川氏の弟である工藤亮夫氏に社長を事業承継しました。市川氏は結婚後数年して、子育てをしながら実家を手伝う形で、同社の社員となりました。

 当時は忙しく、昼夜をいとわず仕事をこなす働き盛りの父と職人集団の中で育った市川氏はその環境に自然にとけ込みました。そして通常業務のほかに、昔気質の父親と数年後に入社した弟の仕事上の行き違い、親子対立を仲介する役割として、また、そのような環境の中で仕事をこなしている社員とのクッション役としての立場を徐々に自覚しはじめ、会社のなかでは欠くことのできない一員となっていきました。

社内ナンバー3で経営指針を創る会へ

 父親が十数年前に体調を崩してから、少しずつ当時専務だった弟と経営する立場の責任を感じながら仕事をこなしてきましたが、まだ甘えがありました。普段から「お前たちは二人で一つなのだから、協力しあって会社を運営しなさい」と言われていました。父親が健在のうちに後継者となる姉弟がしっかりとその責務を受け止め、次代に受け継ぐ準備をしようと考え、4年前に市川氏は青森同友会の「経営指針を創る会」に参加しました。

 本来ならば、「経営指針を創る会」に参加するのは次期社長となる弟の専務が受講するのが正しい方法でしたが、現場経験しかない段階で弟の専務が取り組むのは不可能と判断し、経営指針づくりは社内でナンバー3の立場である市川氏が受講しました。市川氏は「私の一番の目的は経営者として学び、会社に持ち帰り、専務とともに会社を引き継ぐ意識をつくること」と語ります。そのときに考えていた問題意識は、市川氏自身の経営幹部としての意識改善を社内に持ち帰り、弟とともに社内体制の改革、社員が仕事に誇りを持って働ける環境の確立、社員間のコミュニケーション、5カ年計画で事業承継を実現する目的を明確に持つことでした。実際に、半年間の受講期間中には経営に対する話し合いを父親と弟、そして市川氏と3人で交わす機会も増え、父親の今までの経営に対する思いを弟とともに深く理解する、またとない機会となりました。その結果、親と深く関わってつくった指針書はぶれることなく今に至っています。「創る会」では社歴もつくりました。「社歴をつくる過程で、『これまで我が社に関わって支えてくれた方々がこんなに多いのか』と、驚きと感謝の気持ちがわき上がってきました」と市川氏は言います。

 半年間でわかったことは、小さな作業場から始まった会社にいて一緒に労苦を共にしてきた社員は大切なパートナーであり、会社の改善と向上は社員の人間性の高まりそのもの、会社の歴史そのものということでした。市川氏は自分の役割を自覚して、父親と弟を助け、父親が大事に育ててきた社員と共に学び、企業人として人間性を高め、お互いを尊重し合う魅力ある職場づくりに率先して取り組み、社員の夢をかなえてあげたいと心から思うようになりました。

昭和の家業から、平成時代の企業へ脱皮

社内の様子  経営者として信念を持ち、常に謙虚な態度で学ぶ姿勢がなければ間違った判断をしてしまう恐れがあります。お客様や社員の立場になって考え、生涯勉強、学ぶ姿勢を心がけて人との関わりを築いて行くことが大切だと「経営指針を創る会」の中で市川氏は学びました。また、経営指針づくりで分かったことの一つに父親時代の職人育てと、自分たちが考える社員育ての違いがありました。

 父親の時代の職人は、昼夜をいとわず一緒に仕事をこなす職人が目をかけられ、一人前に成長しました。市川氏は「昭和時代の家業から平成時代の企業へ」を念頭に、先輩社員とともに働く現場教育を柱にしながらも、日ごろ社員と接する中で、プライベートな社員の生活まで心を砕き、相談に乗ったり、アドバイスをしたり、気にすることが必要だと考えました。仕事でもお互いを尊重しあい、できないことは社員相互がカバーしあえるように助け合い、努力する雰囲気を社風として確立することが最重要と考えたのです。数年前からは思い切って新卒採用に切り替え、新入社員には同友会のマナー研修から始めました。社内研修や入社1年目で板金技能を競う「職業訓練生技能競技大会」に参加することを義務づけ、3年後には技能士の資格取得など、プロとしての自覚と誇りを早期に身に付けられるような社内体制、社風を創り出そうとしています。父親が採用したベテラン職人は社内では「匠」と位置づけして、後進への技術指導担当として、現社長が採用した中堅社員は新人の相談役兼指導係として、社員間のコミュニケーションを大切に、次代に技術をつなぐ体制づくりをしています。

これから三代75年、社員の成長に将来を託す

 今年3月に事業承継ができました。そのときに「素直で謙虚になれ」「常に努力は怠るな」「稲のごとくなれ」「受けた恩は心に刻め」「社員あっての会社、社員の子どもが入ってくれる会社をめざすこと」との会長の人生訓が、後継者と社員全員に伝えられました。「今回の事業承継を契機に、今後会社を維持し存続していくには、今までの基盤を大切にしつつ、時代にあった会社づくりが必要」と考えています。父親の経営姿勢の根底に『常に新しい事に挑戦し、ものを創り上げる喜び、達成感、満足感』が脈々と流れていることを事業承継の過程で知りました。父親の経営姿勢を受け継ぎつつ、これからは社員全員で考え、創造し、喜びを感じあえる会社にしたいと思っています」と市川氏。同友会でつくった経営理念をもとに、会社を受け継ぎ、社員とともに誇れる仕事をつくり、社員の安定した生活を確保すること。そして施主に喜ばれる工事をして、屋根板金工事専門業者としてプロに徹し、地域に必要とされ、貢献できる会社になる。そしてまた、独自商品の開発を行いたいと市川氏は考えています。

 「三代75年」、この言葉は事業承継でよく言われますが、この先、「三代75年」を目標に、同社の軌跡を残していく覚悟を事業承継に立ち会った後継者と社員全員が確かめ合いました。
社員とともに

会社概要

創 業:1962年
設 立:1968年
資本金:800万円
年 商:2億1,000万円
事業内容:屋根工事、板金工事、建築工事業
従業員数:13名 
所在地:青森県八戸市河原木字北沼22-17
TEL:0178-29-1855
FAX:0178-29-1833

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