シリーズインデックス:共に育つ

【第35回】 「地木の力を輝かせる」決意を胸に 丸平木材(株) 代表取締役 小野寺 邦夫氏(宮城)(2012.12.26)

小野寺社長 丸平木材(株) 代表取締役 小野寺 邦夫氏(宮城)

3.11東日本大震災~絶望から希望へ~

 「海が来た!」――迫り来る津波を、当時を振り返りながら小野寺邦夫社長(丸平木材(株)、宮城同友会会員)は語ります。1908年に南三陸町で創業、103年歩んだ丸平木材(株)の本社・工場と自宅が大津波に飲み込まれていく瞬間でした。
 裏山に無我夢中で駆け登って目の前に広がったのは一面の海。信じられない気持ちで引いては押し寄せる海の壁を前に「もうどこまで逃げてもダメなのか…」とさえ思ったと、小野寺氏は言います。

 幸いにも家族と社員全員の無事を確認し、震災直後は強気だった小野寺氏も、ひとり会社跡地に座り込んで「自社どころか町そのものがなくなった。ガレキだらけのここからどうやって進んでいったらいいんだ」という絶望感と無力感にかられ、日に日に春が近づく数日間を過ごしました。

 はかなさに沈む心に、南三陸の自然は「そう、はかないもんだよ。はかないからこそ貴重なんだよ。当たり前じゃあないんだから、あなたはあなたの立ち位置で頑張りなさい」と言ってくれた気がしました。「存続は途切れた。存続はもはや目的ではない。何のために、何に向かってやるのか?」を自問自答するなかでたどり着いた答えは、「経営理念」でした。

社員へ、世界へ向けての復活宣言

 二週間後、震災後初めて全社員を招集し、小野寺氏は語りました。

「南三陸町1万7300人のうち1万人が亡くなりました。(※当時の報道。2012年4月時点の発表で死者396名、行方不明者(届出数)612名)。つまり二人に一人も生きていないなかで私たちは残されたのです。たまたまではない。やるべきことがあって残されたと思います。それは経営理念です。私はここから再建に向けて動きます。半年だけ時間をください。心苦しいですが6カ月間だけ失業給付で耐えてください。カタチ上ですが全員解雇します。ただ絶対に9月に復活しますから、そのときは全員戻ってきてください。ただし、もし良い縁で働き口があればそちらに行って構いません。もし待ってくれるのなら、必ず皆さんを呼び戻します」。

 そして、ホームページから「丸平木材、全員無事です。これから再建に向けて動きます。ご安心ください。これからもよろしくお願いします」。たった数行ですが、世界に向けての復活宣言でした。

培ってきたもの

社屋  宮城同友会の「第19期経営指針を創る会」(以下、「創る会」)で修了生の問いかけ全てに「使命のため」と答え続け、「ミスター使命」と呼ばれた小野寺氏。「その使命とは何なのですか?」と問われ、自分自身の生まれた意味も育った意味も「使命イコール会社の存続」という一点のみでとらえていたことに気づきます。存続のために経営理念があるのではなく、経営理念のために存続がある。つまり存続はあくまで手段であることに気づくのです。

 全量を引き受ける覚悟で、ひく木を全て南三陸産に限定し、業界ではあり得ない「感性格付け」を行ない、施主さんに家づくりを山から始めてもらう「森林見学会」を精力的に開催していきました。こうしたブランド化が評価され、2011年3月1日に全国林業技術者コンクールで優勝、「農林水産大臣賞」を受賞しました。「創る会」受講中に命名した「南三陸杉」の名前が、全国に知られることになりました。いよいよこれからと思っていた時に3月11日、東日本大震災が起こったのです。

復活!社員と共に第二創業

社員さんと  9月スタートのつもりが法規制などの問題によって地鎮祭が11月にずれ込んだものの、南三陸支部の仲間を始め多くの人たちの協力で、3月中に何とか工事は終了し、2012年4月11日に遂に復活しました。

 経営理念の「地木の力を輝かせる」とは、「木の本来の良さを引き出していく」ことです。単なる材料として木をとらえれば、競合するものは鉄やコンクリートです。しかし、「木の良さ・木の力」に代わるものは何もない。そこで、人間の都合、効率重視だけの乾燥方法への根本的な疑問から開発された低温乾燥機「愛工房」を導入し、大きく経営理念の具現化への舵を切りました。「材料としての木ではなく“文化”としての木を日本、そして世界に発信していきたい」と小野寺氏は語ります。その第一歩として、10月30日から12月末まで東京でドイツのオフィス家具メーカー「Wilkhahn」とのコラボレーションした企画展示会も開催しています。

 12月に行なわれた「第14期同友会大学」での講義の締めくくりに小野寺氏は受講生に語りました。「確かに学んだことは実践しなければなりません。でも、この同友会大学のテーマにも“学ぶとは誠実を胸に刻むこと”とあるように、『学ぶ』こと自体にも大きな意味があると私は思います。誠実でなければ学べません。この大学も当社から石田部長が参加してくれていますし、社内でも社員が学習会を行なってくれています。本当に嬉しいです。私もこれからもっともっと学び続けます」。

経営理念

・私達は地木の力を輝かせ、「くらしを包むやすらぎと感動」を提供します。
・私達は緑の環を育み、豊かで生き生きとした社会と地球に貢献します。
・私達は「感謝の心」を胸に、真の仲間として夢に向かって共に学び成長し続けます。

会社概要

創 業:1908年
資本金:1,000万円
年 商:2億5,000万円
事業内容:木材製材・加工・販売、建築資材販売
従業員数:21名
所在地:宮城県本吉郡南三陸町志津川字天王山22-1
TEL:0226-46-3113
FAX:0226-46-5844
URL:http://maruhei-wood.co.jp/

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