【第41回】日本一働きたい会社へ(株)ドゥアイネット 代表取締役 土井 幸喜氏(長崎)

土井社長

(株)ドゥアイネット 代表取締役 土井 幸喜氏(長崎)

 受付のインターホンを鳴らすと、「お待ちしておりました」と明るい声で来社を出迎えてくれるのは、長崎市内に居を構える(株)ドゥアイネット(土井幸喜社長、長崎同友会会員)。IT関連で業績を伸ばし続ける会社の土井氏の朝は、10年以上毎日欠かさず行なっている社員へのメッセージ配信から始まります。「押しつけではなく、社員の何かの気づきになってほしい」そう語る土井氏。その後「社員全員と同じ時間を共有する」ための清掃活動を行います。神棚やトイレ掃除は土井氏の担当です。清掃活動が終わって、全員の心をそろえる朝礼から1日がスタートします。

相互の信頼関係が大切

社屋

 18歳の時に出会ったインベーダーゲームでソフトウェアやプログラムの面白さを知り、この道だ!と決めて専門学校へ。その後社会人となりソフトウェア開発業に転職後、二度の勤務先の倒産に遭遇します。その経験から「お客様、そして経営のパートナーである社員に対して誠実に向き合わなければ会社は成り立たない」という考えが根底にあります。土井氏は社員と誠実に向き合うためのポイントとして「相互の信頼関係が大切。社員と対話を重ね、自分を信頼してもらうには、自分が社員を信頼することを心掛けています」と語ります。創業当初は土日も関係なく出勤し、ひとたび出張が入り会社を空けることになると、会社のことが心配で不安になる。「会社を留守にする」という自分への罪悪感にとらわれ、自分が会社にいないとだめだと思っていました。しかし、自分がいなくても会社が回るようにすることも社長業の一つだと気づき、社員とのコミュニケーションを強化していきます。 

当社は「サッカー型組織」

 月に1回の社内研修では、土井氏が参加したセミナーや学んだことの発表のみならず、社員が参加した研修会の報告もなされています。プログラムやソフト開発に必要な技術研修は社員自らがアンテナを張り、参加の意思を伝えるまでになりました。土井氏は続けます。「私の会社は監督の采配で動きが決まる『野球型組織』ではなく、監督として方針は出すけれどあくまでもフィールド上で個々の判断に委ねる『サッカー型組織』だ」と。その結果、社員は以前にも増してお客様のことを第一に考えて行動するようになり、また、チームで話し合い、自発的になりました。そうした社員一人ひとりの成長を間近で見ながら、自分の子供が育つように、土井氏は経営者の喜びを日々感じています。

社員を信頼し思い続ける

 しかし、人財育成が全て順風満帆だったわけではありません。あるとき、採用したスタッフが入社半年で休職となり、また入社4年の別の社員も休職を要求します。それでも土井氏はその社員が職場復帰することを願いました。仕事の内容には一切触れず、その日にあったささいな出来事や世間話を織り交ぜ、「待っているよ」とメッセージを添えて、毎日欠かさずハガキを送りました。自分にできることを続け、社員を信頼し思い続けた結果、社員は回復し、今では元気に活躍しています。「人を育てることの難しさ、深さをあらためて体感しました。そうしたことは逃れられないと心に決め、現在も社員一丸となって業務に取り組んでいます」と土井氏は語ります。

日本一働きたい会社へ

社員とともに

 会社の品質を上げるために取り組んできた成果として、「2009年度長崎県経営品質賞」ならびに、「経営革新賞」を受賞。さらには「2010年度全国企業品質賞最優秀賞」を受賞するまでになりました。「私は『働きやすい会社』という言葉に違和感を覚えていたんです。働きやすい、とはあくまでもこちらから環境を提供し、社員が提供される側になってしまいます。そうではなく社員の主観で『日本一働きたい会社』という会社にしたいんです。仕事を通して成長できる環境、社員が主体の組織。これが、私が描く会社像です」。そう話す土井氏の目には、その理想とする会社像がすぐそこにはっきりと映っているのでしょう。「共育」とは「率先垂範」。社長が学ばずして社員には言えない。自ら学ぶ姿勢、その背中を常に社員に見せ、仕事に反映してきた土井氏の言葉一つひとつに根拠と自信を見ることができます。

 ITの技術やサービスを通して地域密着型で地域に貢献する、という短期的なビジョンに加え、将来的にはITを核とした1つのコミュニティを形成したいという中長期的なビジョンを掲げる同社。その明確なビジョン達成を次の一つの区切りとして、社員と共に土井氏の毎日は過ぎていきます。

経営理念

要望を“かた値”に変える人づくり

行動指針

3つの“DO”
1.Do it now すぐに取り組みます
2.Do myself 自分の力で取り組みます
3.Do my best 一生懸命取り組みます

会社概要

設 立:1997年
資本金:1,000万円
事業内容:コンピューターシステムの企画・設計・開発。自治体オープンソースの導入・開発。AR(拡張現実)スマートフォンアプリ開発。クラウドコンピューティングのコンサルティングなど。
従業員数:16名
所在地:長崎県長崎市千歳町21番6号
TEL:095-843-8214
URL:http://www.doinet.co.jp/