【第47回】いばらない、おごらない。岐ドロ社員必須の心がけ 岐阜ドローイング(株) 代表取締役 高橋 光雄氏(岐阜)

高橋社長

岐阜ドローイング(株) 代表取締役 高橋 光雄氏(岐阜)

 自分がこれから就職するとしたら、自分の会社に就職したいと思いますか?「ぜひ、うちの会社に就職したい」と言い切れますか?高橋光雄氏(岐阜ドローイング株式会社社長、岐阜同友会会員)が大手メーカーを脱サラして事業を興したのは、サラリーマン時代、「こうすれば、もっと社員はやる気になるのに」という残念な場面に何度も遭遇したことがきっかけです。自分が嫌だったことと逆のことをすれば、全社員が能力を発揮し、楽しく働ける会社をつくれる、と確信したからです。

基本は「ほったらかし」

社屋

 1976年3月、産業設備設計専門の会社を設立しました。「当初は自分で全部こなしていたが、あるとき、風邪で1週間ほど欠勤しました。それでも何も変わっていない会社を見て、1人でやる必要はないことを実感し、以後はいろんなことを任せるようにしてきました」と高橋氏。氏の言葉を借りれば、「ほったらかし」です。
 
 一時期、1カ月168時間の勤務を自由に管理する「フリータイム制」なるものまで導入しました。ところがそうして自由にすればするほど、部門の責任者クラスが、規則を作って部下を管理しようとする状態に陥りました。そこで高橋氏は、「それは、うちの会社の方針に反する。私は、そういう気持ちで経営していない」とことあるごとに話し、切り崩しにかかります。「だれだって、規則なんかない方がいいでしょう。自主性を促した方が絶対にいいという自分の思いを伝え続けるしかありません。フリータイム制に関しては、幹部に懇願されて止めましたけどね。ちょっと時期尚早だったかな」。それでも高橋氏は、いつかこの制度が社員の力を発揮する一助となるような「大人の組織」になれることをずっと心の中に描いています。

今よりちょっと上

社内

 同社の社員は、「今よりちょっと良くすること」を意識しています。売上や利益といった数字的な結果だけでなく、社員一人ひとりの人間性といった形に現れにくいこともすべて含めてです。「昨日より今日、ちょっとでも進んでいれば、必ず成果は出てくるはずです。それを見守りながら過度な期待はせず、ひたすら待つんですよね」と高橋氏。
 確かに「今月の売上目標○○円」ならば、結果は一目瞭然です。それに比べて「今よりちょっと上」は、一見、優しい目標であるように見えますが、持続するのはとても難しいことです。同時に経営者側は、社員をきちんと見る目があるかを試される、厳しい目標であるに違いありません。

 もちろん、会社自体も「他社とはちょっと違う」ことを実践しています。その一つは、有給休暇のとり方です。ある社員は、家庭の事情で4カ月間週1回の有休を取得していました。普通そんなことをされたら仕事に支障が出るはずですが、「グループ内、あるいはグループ間で常に仕事の進み具合を話し合うし、上長との連絡も密に行います。一人が休んでも他の仲間がフォローする体制になっているんです」と高橋氏。ともすれば、「一匹狼」に陥りやすい技術者を、コミュニケーションを軸に集団の力に変えているわけです。

 また何と言っても、「社員が楽しく働ける」ことが第一という同社。大掃除は、社員の意見を取り入れて、寒い年末ではなくゴールデンウイーク前に行います。自席のレイアウトは個人の自由にできます。「好きなものに囲まれていた方がリラックスできるし、新しいアイデアも浮かぶものです」と高橋氏。お気に入りのフィギュアや家族の写真を飾ったり、なかには、お菓子専用の引き出しを持っていたりする社員もいます。さらに、社内でお菓子やカップ麺の無人販売も行っていますが、「購入者は、次はどんな商品が欲しいかを投票できます。販売価格も、社内の社会情勢に応じて変動させているんですよ」と、一ひねり加えることも忘れません。「代金の間違い?全くありません。全社員を信頼していますから。信頼できるから一緒に働いているんです」と高橋氏は言います。

独創技術を編み出したい

 特許を取れるようなものを考えても、お客様に帰属してしまう設計の下請けだけでは社員はやりがいを感じないのではないかという危惧から、高橋氏は、ちょっと他ではないような技術、商品ができないだろうかと考えるようになりました。そんな思いを後押ししたのは、皮肉にも、リーマンショック時の「地獄の体験」でした。社員の危機感が高まったことがプラスに作用し、なんと500件以上ものアイデアが出され、その中のいくつかが、今では具体的な形になっています。

 「この仕事を始めた時、人が来ないという苦労を散々しましたから、大事な社員を切るなどということは全く頭にないんです。社員全員が食べられるだけの仕事は何としても探す、生み出すという気持ちは、創業以来全く変っていません。同業の中には、技術者を派遣した方が儲かるという人もいますが、社員をそんなふうに扱うのは、僕のポリシーに反するんです」と、高橋氏の人に対する信念は、あくまでぶれることがありません。
 
 「向上心を持ち続け、人としては謙虚であれ。<不動の信条>」「運動会の綱引き。先ず誰ひとり、手を抜かないこと」…高橋氏の思いは、社員一人ひとりが自分で考える含みを持たせた文章となって、社長自身の手書きで毎月の給料に添えられています。

回覧

会社概要

創 業:1976年
設 立:1981年
資本金:1,000万円
事業内容:産業機械・設備の開発・設計(合理化設備、工作機械、昇降機、3D設計、3DCG)
社員数:51名
所在地:岐阜県岐阜市須賀2丁目3番16号
TEL:058-275-0911
URL:http://www.gifudw.co.jp/