【第10回】美味しさの感動を提供する 小金屋食品(株) 代表取締役社長 吉田 恵美子氏(大阪)

吉田社長

小金屋食品(株) 代表取締役社長 吉田 恵美子氏(大阪)

こだわりの納豆をつくる小金屋食品

 大阪では、めずらしい納豆屋さん。大阪大東市で50年以上、こだわりの納豆をつくっている小金屋食品(株)。社長の吉田氏は、創業者の父親から納豆づくりを引き継ぎ、現在こだわりの味を全国に広げようと、催事などで西へ東へと走り回っています。最近では情報誌やテレビなど、メディアに多く取り上げられています。

 普段から人懐っこい笑顔で話す吉田氏は、いったん納豆の話になると、より一層嬉しそうな顔で話をします。そんな吉田氏の一番の印象は「こだわりの人」。吉田氏を筆頭に、社員がこだわって生み出している卸商品と直販商品があり、そのすべてがこだわりの商品です。そのなかでも、ひと際こだわりの納豆があります。それは、稲わらに自生している納豆菌を引き出してつくった、天然納豆菌100%の納豆「なにわら納豆」です。

「なにわら納豆」ができるまでの物語

社内01

 おいしい納豆づくりに、生涯をかけてきた父親が、2004年に病に倒れ、亡くなりました。最後まで納豆づくりにこだわり続け、病床で意識がないなかでも、納豆のできを気にしていました。そんな父の最後の言葉が「あのな、もう一個つくりたい納豆があるねん」。
 それまで会社に携わっていなかった吉田氏は、猛烈に悩んだ末、同社を継承する決断をしました。はじめの1年は、経営を学ぶためにいろいろなセミナーや交流会に参加しました。そんな中、大阪同友会に出合いました。しかし、売上は上がらず、経営はどん底の状態が続きます。

 もう一度会社を徹底的に見直して、見つけたキーワードが「手づくり」でした。価格ではなく、価値で勝負する。そのために、今まで機械でつくっていた工程を廃止し、手づくりに切替えました。

そんなときに父親の残した最後の言葉「もう一個つくりたい納豆がある」を思い出しました。「お父さんがどんな納豆をつくりたかったのかは、わからないのですが、お父さんの思い出や日々の言葉、小さいころから見てきた背中を思い、出した答えが大粒国産大豆と天然菌による昔ながらの納豆でした」と吉田氏。

 なかなか思ったように発酵せず、苦労を重ね、試行錯誤の結果、完成したのが「なにわら納豆」でした。その「なにわら納豆」を看板商品に、青空市やマルシェなどにも積極的に参加し、「小金屋の納豆」という名前を売り出しました。また、チラシも手づくりにこだわり、地域の方に向けて、工場直販会なども実施しています。

 今までの「BtoB」から、「BtoC」への思いが大きくなり、2009年には大阪府経営革新計画認定を受け、その一環で工場の一角に直売所「納豆庵こがね屋」を立ち上げました。お客さまの声が直接聞けるようになったことで、吉田氏やスタッフの意識が変わっていきました。「もっと美味しい納豆を、感動を与えられる納豆をつくりたい」と考えるようになったのです。「今では、確認することはできませんが、お父さんのつくりたかった納豆は、これだったのだと信じています」と吉田氏は語ります。

 この納豆のネーミングは、大阪の納豆にこだわり「なにわ」と「稲わら」を組み合わせ、「なにわら納豆」としました。

もうひとつのこだわりは「大東市の名産」

 竹姫納豆

 吉田氏のこだわりは、納豆だけではありません。「大阪市内や他府県での催事などで、よく『東大阪の小金屋さん』と言われます。『いえ違います、大東市の小金屋です』と訂正するのですが、ほとんどの方が大東市を知りません。自分が生まれ育った大東市が、こんなに知られていないことが、悔しくてたまりません。大好きな大東市のことを、もっと知ってほしいといつも思っていました」と吉田氏。
 
 あるとき、大阪府の地域振興プロジェクトに参加し、大阪産業大学とNPO法人で、新しい納豆をつくることになりました。吉田氏は大東市にこだわり、大東市で取れる間伐材の竹筒を容器として、そのなかで発酵させる商品をつくりました。その名も「竹姫納豆」。現在、同社での主力商品の1つとして好評を得ています。

社員とともに

 大阪にこだわった「なにわら納豆」と大東にこだわった「竹姫納豆」。どちらも、一度食べるとファンになるという自信の商品です。
 また、大東市の居酒屋や食に携わる人たちと共同で、納豆の美味しい食べ方や納豆料理など、数多く開発しています。「近い将来『大東市の名産は納豆』と言われる日が、くるように感じます」と吉田氏は言います。
 
 同社の経営理念に「美味しさの感動を提供する」という言葉があります。この「感動」とは、納豆に対するこだわりと吉田氏をはじめ社員の笑顔が生み出しています。
 
 「大東市のこだわり納豆」。同社はこれからもお客様にワクワクしてもらえる会社として歩み続けます。

経営理念

一、私たちは納豆つくりを通して日本の食文化を豊かにいたします。
一、私たちは美味しさの感動を提供し続ける企業を目指します。
一、私たちは納豆つくりで働く喜び・誇りを共有しあいます。

会社概要

創 立:1967年
設 立:1974年
従業員数:7名
事業内容:納豆製造・卸
所在地:大阪府大東市御領3丁目10-8
TEL:072-871-8456
URL: http://koganeya.biz/