【第18回】経営理念の実践により「最高峰の歯科技能集団」をめざす (有)協和デンタル・ラボラトリー 代表取締役 木村 健二氏(千葉)

木村社長

(有)協和デンタル・ラボラトリー 代表取締役 木村 健二氏(千葉)

社屋

 歯科技工とは、歯科医院からの注文を受けて、模型を元に入れ歯や差し歯などの制作・加工を行う仕事です。1人、2人で仕事を行う事業所が8割を占める歯科技工業界にあって、(有)協和デンタル・ラボラトリー(木村健二社長、千葉同友会会員)は千葉県松戸市に本社を構え、社員59名(うち技工士35名、事務4名、パート20名)を雇用しています。

歯科技工士の明るい将来展望を―付加価値の高い仕事にシフト

 仕事全体の7割を占める健康保険が適用される通常の入れ歯などの範囲の仕事では、仕事量は多くてもダンピング競争が激しく単価の上昇は望めません。特に人口減少などにより歯科医院の経営が厳しくなっている昨今、歯科技工士が明るい将来展望を持つことが難しい現状があります。

 危機感を持っていた木村氏は、1987年会社設立後、1995年ごろから付加価値の高い仕事へのシフトをめざし、「インプラント」技工に事業の重点を移し始めました。 
「インプラント」は骨の中にチタンを埋め込む技法であり、周囲の歯に負担をかけないのが特徴です。高い技術が必要なため通常の入れ歯より費用がかかること、また健康保険適用外のため、この方法が患者さんから選ばれるのは数%です。

患者さんに喜ばれる仕事が自分たちの豊かな生活に

 このような取り組みを行ない始めていた1998年3月に木村氏は千葉同友会に入会。その直後から始まった「経営指針成文化セミナー」を受講して、経営理念・経営戦略を確立できたことが現在の発展につながりました。「ともすると職人集団として自分の技術向上には熱心でも、顧客のことや、社員相互の協力関係についてうとくなりがちな業種です。経営指針づくりを契機に、『何のために働くのか』『どんな会社にしたいのか』を真剣に社内で論議してきました。その結果、社員の間で『自分たちが豊かになるためには、患者さんに喜ばれる仕事をすることが必要』という認識の一致が図られたことが、社員の士気を高める上で大きかった」と木村氏は言います。

インプラントに新素材を導入したパイオニア

社内の様子

 また、インプラント技工物の新素材として、耐久性・生態親和性に優れ、審美ニーズに応えられると注目されていた「酸化ジルコニウム」(=人工ダイヤ)の使用が2005年に国から認可されたことを受けて、いち早くその生産体制の構築をはかるべく、各種CAD・CAMシステムを導入。新素材のノウハウ蓄積や普及活動を通じて、新規取引先の獲得と売上げ拡大をめざした取り組みを行ってきました。

 2005年11月に「酸化ジルコニウム技工物の普及」をテーマとした経営革新計画が承認された後、酸化ジルコニウムの売上げは全体の2割を占めるようになり、計画期間(4年)のうちに全体の売上高は1.9倍、付加価値額1.8倍、従業員数は1.5倍という顕著な成果を挙げ、「2011ちば経営革新優秀企業賞」に輝きました。

残業を減らし豊かな生活を送るためのIT化による効率向上

 また、従来はリーダーの経験や勘にもとづいてのカレンダーやホワイトボードによるスケジュール管理でした。そのため、チーム全体の仕事の把握が困難であり、適正な仕事割ができているのかが不明なことも多く、その結果、予測を誤って日程が厳しくなり、最後は人海戦術に頼らざるを得ず、残業時間の多さにもつながっていました。

 そこで、作業の標準工程を設定し、仕事割のためのデータを整備。標準工程を工程管理ソフトに組み込んだため、工程管理計画作成に要する時間が大幅に短縮され、残業時間の軽減にも貢献するとともに、個人目標を明確にする条件が整備され、チームで仕事を進めるための効率化が図られました。

 こういった努力が、「2008年度千葉県サービス産業生産性向上モデル事業」での採択、2011中小企業IT経営力大賞(国)の受賞にもつながりました。

経営理念の対外発信・情報発信に力を

 木村氏を先頭に、国際的な歯科技工の学術大会の技術コンテストに挑戦(1998年第3回国際歯科技工学術大会でテクニカルコンテスト入賞、1999年ITIインプラント認定審査会でエクセレント賞など)しています。また、学会での研究発表や業界出版物に論文を積極的に寄稿するなど、さまざまな形で外に向かって優れた技術をアピールし、業界の地位向上と社員が自信と誇りの持てる企業づくりに邁進してきました。

 今後はアジアなども視野に置き、歯科技工の「最高峰の技能集団」を作り上げることによる社会貢献をめざして、意欲満々で取り組みを行っています。

社員とともに

経営理念

・持って生まれた個性を発揮し、患者の健康と笑顔を第一に考え、技術の研鑽を 怠らず最高峰の歯科技能集団を目指します。

・すぐれた歯科技工技術と誠意あるサービスを提供する事により、 永く良きパートナーとして、御得意様に喜んで頂ける会社を目指します。

・思いやりを大切にし力を合わせ、豊かな生活と明るい将来を築くことが出来る会社を目指します。

会社概要

創 業:1984年
設 立:1987年
年 商:5億円
資本金:360万円
事業内容:歯科技工(インプラント専門)
社員数:59名
所在地:千葉県松戸市新松戸3-260-1
TEL:047-343-2670
FAX:047-343-2658  
URL:http://www.kyowa-dental.co.jp/
E-mail:kyowa@zat.att.ne.jp