【第19回】経営指針の成文化で“魂込めた家づくり”へ (株)Re-size. 代表取締役 野口 晃氏(新潟)

野口社長

(株)Re-size. 代表取締役 野口 晃氏(新潟)

お客様から「雇ってくれませんか」!?

施工したもの

 野口晃社長((株)Re-size(以下、リサイズ)、新潟同友会会員)は高校で建築科を卒業後、地元建築会社に就職し、2008年3月、36歳で独立。経営指針を2013年2月に成文化。経営理念にある「魂込めて全力を尽くす」をお客様に伝わるように心がけ、丁寧な仕事をしてきました。
2013年7月のある月曜日の朝、この間完成引渡しをしたばかりお客様から電話がありました。前職の経験もあり、住宅を引き渡した後の月曜の朝のお客様からの連絡といえば、大半がクレームの電話です。

 その日は、月曜の朝の電話。クレームの電話かと思い電話に出ました。「野口さんちょっとお話が・・」とトーンが低い声で話すお客様。野口氏は「やはり何か失敗したのか?」とクレームかと思いました。

 しかし実は、お客様から「野口さんの仕事の仕方や家づくりの考え方に共感しました。私もそのような会社で働いてみたい。ぜひ御社で雇ってほしい」という連絡でした。お客様は続けて、「本当に良い家を建ててもらいました。私を雇ってといわれて困ると思いましたが、それを他人に伝えたい、役に立ちたい」とお客様は言ってくれました。

 「建主でお客様なのですが、もともと建築を目指されていた方ということもあり、せっかくの申し出を受け、採用することにしました。お客様に『魂込めた家づくり』に共感してもらったと嬉しくなるとともに、(株)リサイズの家づくりの理念を伝える新しい仲間として働ける楽しみでいっぱいです」と野口氏。同社はこれで、社員は1名から2名になりました。1名は前職の後輩だった社員。そして今回、お客様から社員になる1名です。

まったく仕事がなかった創業。同友会に入会。そして社員の採用

施工した家屋

 野口氏は、2008年3月、新潟市で、越後杉と自然素材の家づくりを提案する会社を創業。前職でも営業経験もなく、「仕事は自然に沸いてくる」という感覚で、仕事を待っている状態でした。創業して3カ月が過ぎ、そして半年、注文の電話はいっさい鳴りませんでした。「創業したはいいが、何をしていいか分かりませんでした」と野口氏は言います。

 だれも自分のことを知らない、世間では会社の存在すら知られていないという状況。経営者としての孤独感を感じ始めていた2008年9月、知り合いの経営者に誘われ、新潟同友会に入会しました。仕事がなくすることもないので同友会に行かない理由も無く、結果的に参加し続けるようになっていきました。

 また、仕事がとれず、貯金を切り崩し、継続していくことは難しいと思っている中で、宣伝のためにコツコツ作っていたホームページ。このホームページから初めて新築物件を受注しました。

 その後、同友会で支部や青年部活動、広報情報化委員会などに参加するようになり、さまざまな経営の考え方を学び、同友会の仲間との交流が増えてきました。そうして挑戦や取り組みをしていくと、不思議と仕事も次第に忙しくなってきました。

 ちょうど1人では手が回らなくなってきたと思い、「採用も検討しなければいけないなぁ」と思っていたある日のこと、前職の後輩から10年ぶりに電話がかかってきました。それは「一緒に働きたい」という相談でした。これも何かの縁であると思い、その後輩を採用することにしました。昔は先輩後輩の関係。そして、今は経営者と社員の関係となります。「社員を育てるということや経営者と社員との関係はどうあるべきかなど考え、悩むことはたくさんありました」と野口氏は言います。

経営指針づくりのきっかけは社員の採用から

 同友会に参加し、経営指針をつくることは重要とは思っていましたが、仕事が忙しくなるなどなかなか「経営指針を創る会」の受講に踏み切れず、機会を逃していました。そんな中、経営指針をつくろうと思ったきっかけは、社員を採用したことでした。

 会社の理念や方針など成文化されたものが何もなく、同社の家づくりの考え方や、お客様に対する姿勢など、社長は分かるのですが、社員になかなか伝わりません。当然、自分都合や思いつきで場当たり的になってしまいました。「社員もとまどいましたし、会社がどういう方向に向かっているかなどがぶれていた」と野口さんはいいます。

 野口氏が経営指針を成文化したのは、今年の2013年2月。成文化された経営指針書を、すぐに社員に発表しました。今では経営理念を毎朝唱和し、「良い家、良いものづくりは当たり前、そこに自らの魂を込める」ということを伝えています。野口氏は、「悩んだときに判断できるものが経営指針書であればいいと思っています。今後の目標は、経営指針書に社員自身が宣言した目標や方針を成文化し、実践していくこと。社員のやりがいや生きがいを会社の経営指針として、ともに達成感や充実感を味わいたいと思っています。6年目を迎えたリサイズの経営指針は策定したばかりです。全社一丸となって経営指針の策定と実践に取り組んでいきたい」と決意を語ります。

全力を尽くす「リサイズ」の夢

 全力で家づくりに取り組んでいる野口氏の将来の夢は、「ものづくりの学校(工場)をつくる」こと。家づくりは職人がいて成り立つ仕事ですが、職人は高齢化が進み、跡継ぎがいなくなることも心配されています。そこで、子どもたちに対して、ものづくりの楽しさ・やりがいを体感できる空間をつくり、将来の職人を増やす一助としたいと考えています。

 理念に「魂込めて全力を尽くします」とあり、「お客様へ心地よい暮らしと感動をお届けするために全力を尽くすこと。信頼、挑戦、成長を基に社員一丸となり強く優しい企業を目指すこと」を掲げています。同社は、成約率が8割と非常に高くなっています。野口氏には、一緒に仕事がしたいと思わせること、お客様にもぜひ家を作ってもらいたいと思わせる「魂」がありました。

社員さんと

経営理念

「魂込めて全力を尽くします」

一、お客様へ心地よい暮らしと感動をお届けする為に全力を尽くします。
一、信頼、挑戦、成長を基に社員一丸となり強く優しい企業を目指します。

会社概要

創 業:2008年
資本金:300万円
事業内容:自然素材の家設計・施工、動画製作・配信、木のモノづくり
従業員数:2名
所在地:新潟県新潟市中央区上所1丁目12-16
TEL:025-250-0557
FAX:025-250-0558
URL:http://re-size.biz