シリーズインデックス:わが社の経営理念

【第20回】わずか八部屋に住む寛ぎと癒しの空間の提供を (有)しげの家 社長 志賀 正氏(長野)(2013.09.11)

志賀社長 (有)しげの家 社長 志賀 正氏(長野)

サラリーマンから旅館の二代目へ

 1959年に先代が創業し“小規模高級”イメージで経営してきた温泉旅館。(有)しげの家(志賀 正社長・長野同友会会員)は東京出身で、7年間のサラリーマン生活から一転、旅館の後継者である一人娘と1997年長野オリンピック前年に結婚。しげの家の二代目・専務として入社を決意しました。

 入社当時は右も左も分からないまま忙しい日々が続きました。この時点で経営理念はありませんでしたが「何でもやらなければ」と心掛け、料理を作ることができなくても、実際に他の旅館に泊まりに出かけ、旅館経営に関わる書籍などを通じて学びました。「小規模とはいえ、経営に参画するようになったので、全く分からない財務のことを会計事務所に助けてもらいながら勉強し始めました」と志賀氏は言います。
 
 ちょうどそのころ、長野オリンピックが開催されたためとても忙しく、毎月100万単位の利益が出て、先のことをあまり考えなくても経営が成り立つ時代でした。そうこうしているうちに2001年くらいには売上が頭打ちになりました。しかし、その年の9月に先代の女将が亡くなり、志賀氏に長女が生まれ、売上減はあったものの家庭の事情に追われている現状だったため、あまり危機意識はありませんでした。

突然の社長交代と売上の減少の危機

外観  今まで主要だった接待客が徐々に減っていく中、2002年度には志賀氏が社長となりました。そこでインターネットでの受け入れも始め、家族・女性客向けに料理・客室・受け入れ体制の改善を行いました。志賀氏自身も営業に力点を置き、徐々に減っていた売上分が埋まり、売上増へと転じていきました。「売上減がそれほどでもなかったので、少しやれば上乗せできただけの話でしたが、努力した結果と勘違いし、その時も方向性を再設定することを見逃していました」と志賀氏。

 2003年ころから売上が10%減となり、さすがに危機感を覚えた志賀氏。しかし自分自身の経営姿勢ではなく古かった旅館の建物の方に目がいき、求める人材が採用できないのも仕事が大変だからではないかと思ってしまいました。そのとき、長野同友会会員である須坂市の仙仁温泉岩の湯に宿泊しました。そこでは従業員のお客様に対する接し方がまるで他の旅館と違ったことに驚きました。その旅館経営者が「同友会で経営を学んだ」ことを知り、紹介を得てさっそく入会することを決断しました。

経営指針を知り自らの姿勢を問い直す

 入会して初めて「中小企業経営フォーラム」に参加しました。「今まで旅館組合しか知らなかったのですが、まじめに勉強している会で、話す内容も真摯に感じた」と志賀氏は言います。2回目に参加した例会のグループ討論では厳しい指摘を受け、「帰りたい」とまで思ってしまいましたが、たくさんの気づきを得ることができました。その中で経営指針を確立することの重要性を知り、「経営指針をつくる会(合宿)」に参加を決意しました。

 「今まで売上減をとにかく埋めればいいと少し乱暴な経営をしてきたのですが、『あなたは何のために経営しているのですか』。シンプルかつ根本的なこの質問がきわめて答えにくく、始めの段階でとてもイヤだった」と志賀氏は語ります。聞かれれば答えるし書くことはできるけど、つくりごとばかりになっていて、そこをさらされることになり、「そもそも、なぜこんなことをしなければいけないのか」と感情的にもなりました。また、まわりの先輩たちも考え方を助言する立場なので、答えはだれも教えてくれません。「考えてみれば当たり前のことです。自分の会社の実態や課題は自分で気づくしかないのですから。合宿にて先輩と入浴中までも語り、徹底的に悩みながら作成し発表までいたりました」と志賀氏は言います。

理想とする旅館像を追い求めて

内装  経営指針作成と同時に旅館のコンセプトを一新し、家族・夫婦・女性客をターゲットとしたそれぞれ趣の異なる八様の客室とし、2005年7月に全面リニューアルオープンしました。オープン前の社内ミーティングで理念と経営者としての思いを伝え続け、繰り返し話をしているうちにだんだんと社員と思いを共有することができてきました。

 経営理念は、今日までにさまざまな反省をふまえながら手を加えてきました。これまでは労使で話し合う土台がなく、人としての価値観のみでミーティングを行っていましたが、本当の意味での結束は成り得ませんでした。経営理念の作成により、社員との話し合いの土台ができました。

 「同友会に入会し、経営指針を知り、作成し、土台ができたこと、かえりみるキッカケ、判断材料を与えてもらいました。今でも悩みはたくさんあります。もし同友会に入っていなければ、労使見解(中小企業における労使関係の見解)を知らなければ、そして指針をつくらなければ気づかなかった可能性が大きかった」と志賀氏は語ります。

 既存のお客様から評価を得ている強みに磨きをかけ、「澄むように静かにゆったりと、住むように心からのびのびとできる寛ぎと癒しの空間」を提供することを使命に、志賀氏はこれからも挑戦し続けます。

経営理念

経営理念:しげの家の目指すこと

「私たちしげの家は八室の小さな温泉旅館として、料理、温泉浴、設えの独自性を追求し、もてなしの質を深め、深めていくことで、お客様の心に残る最良の宿泊体験を提供し、仕事の働きがいをつくり、ふるさと戸倉上山田温泉の魅力向上と信州の宿泊文化発展に、貢献していくことを目指していきます」

会社概要

創 業:1959年
資本金:980万円
事業内容:旅館業
従業員数:正規7名・パート11名
所在地:長野県千曲市大字戸倉温泉3055
TEL:026-275-1713
URL:http://www.shigenoya.co.jp/

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