【第41回】「受け継ぐ」ことと「発展させる」こと 鈴木建設工業(株) 代表取締役社長 花田 仁氏(青森)

花田社長

鈴木建設工業(株) 代表取締役社長 花田 仁 氏(青森)

会社の外観

 1968年に創業し、米軍三沢基地内の建設工事や公共工事を手がける鈴木建設工業(株)(花田仁社長、青森同友会会員)は、1992年に先代の小笠原貞子氏(現代表取締役会長、青森同友会代表理事)が社長として事業を引き継ぎました。当時の社員数は6~7人。全員が目の前にある仕事に一所懸命に取り組んでいました。当時、現社長の花田仁氏は常務取締役として、企業発展のため、先頭に立って全力を振り絞っていました。「当時は良い意味でも、そして悪い意味でも『俺が会社を支えているんだ』と思っていましたね」と花田氏は語ります。同社の社長は花田氏で四代目、これまで同族継承をしたことがないという特徴があります。小笠原氏から「次はあなたに『社長』のバトンを渡しますからね」と伝えられていた花田氏は、「そのうち順番が回ってくるのだろう」くらいに考え、それまでと変わらずに目の前の仕事に集中して取り組んでいました。

先代とともに同友会へ

 2001年に当時社長だった小笠原氏が青森同友会に入会し、その翌年に同友会の第1期「経営指針を創る会」を受講します。花田氏は当初、「何か新しい勉強会に参加しているな」と認識している程度でしたが、会合に参加するたびに小笠原氏の言動が変わっていき、花田氏も経営者としての成長が得られる同友会に興味を持ち始めました。一方で、「次はあなたが社長」と言われながら、勉強して成長していく小笠原氏と自分との間に距離ができ、焦りを感じ始めたのもこの時期でした。同友会での勉強に興味を抱いた花田氏は、徐々に小笠原氏とともに同友会の例会に参加し始めます。真剣にグループ討論で話し合う参加者を目の当たりにした花田氏は、「『こんなに勉強していたのか』と驚いた」と言います。

経営指針書をつくり上げる

 小笠原氏と共に例会に参加するようになって数年が経つころ、花田氏の中では社長を引き継ぐにあたっての不安感が、勉強するほどに増していました。自分自身の経営者像をしっかりとつかむことができず、不安だけが増していきます。「このままではいけない」と一念発起した花田氏は、第8期の「経営指針を創る会」を受講します。「創る会」では助言者からの鋭い指摘を受け、経営者になるための覚悟の浅さを痛感させられ、それまでの自信が喪失し、受講当初の意気込みも削がれていきました。しかし、同期の仲間からの助けや助言者からの厳しいアドバイスの中に込められた「本気の関わりあい」に気づくにつれ、徐々に経営者としての心構えや、「企業とは」「社員とは」といったテーマを深く考えることができるようになっていきました。小笠原氏からは「理念には自分の想いをしっかりと込めなさい」と言われ、成文化に取り組んだ花田氏ですが、最終的に決めた理念は先代、小笠原氏が成文化した理念でした。これは、花田氏が常務取締役として小笠原社長が成文化した理念を、自身の指針づくりの中でより深く落とし込んでいった結果でした。新たな理念を掲げるのではなく、新たな解釈を加えることで花田氏は経営指針書をつくりあげました。

社員一人ひとりが仲間

 2009年8月23日、花田氏は第8期「経営指針を創る会」の経営指針書発表会に臨みます。その席上で花田氏は小笠原貞子社長に社長交代を申し出ます。それは、これまでの「会社の半分は自分が取り仕切っている。いつかはわからないが、社長になっても大丈夫だろう」という甘えを改め、覚悟を決めた瞬間でもありました。社長に就任した花田氏は「見えてくるもの」の違いに驚きました。新たな課題や実行計画の不達成が目につき、成文化後の2年ほどはヤキモキするばかり。あるとき、その原因が判りました。それまでの花田氏は、常務時代から通して「みんなで決めよう」とは言いながら、最終的には自分の意見を反映させていたのです。実行計画の目標設定などを社員一人ひとり、自らの考えに委ねたところ、決して低い目標でなくとも達成率が向上しました。「上下関係でなく、一人ひとりの仲間として意見に耳を傾け、最も信頼し合えるパートナーだと思ったことが糸口になった。これこそが指針づくりで得た最大の学び」と花田氏は語ります。

変わらないもの・変えなければいけないもの

 現在、同社の社員数は24名。4年後には節目となる創業50周年を迎えます。それまでに社員30名、年商を20億円まで伸ばすことを目標に定めた花田氏は、最後にこう語ります。「当社の経営理念は先代の小笠原現会長が、それまでの経験と自社の歴史を見つめ直し、初代社長の鈴木賢一氏が創業した際の『志』を大切に想いながら作り上げたもの。私にはこれ以上の理念は思い浮かびませんでした。だから、わたしは経営方針に私の自社への想いを盛り込むことにしました。初代の志を大切にしながら、時流に合わせた企業経営をしていくためにも、経営理念は『会社の柱』であり続けると思います。いずれ私も後継者に経営を引き継ぐときが来ますが、後を引き継ぐ人にも経営指針づくりを通して、『変わらないもの』と『変えなければいけないもの』を見極めてほしいと思っています」。

経営理念

【科学性】
私たちは、技術と英知でお客様に感動を頂ける企業を目指します。
【社会性】
私たちは、夢と安らぎのある生活空間創りをもって地域に貢献します。
【人間性】
私たちは、共に力をあわせ幸せの和創りをする集団を目指します。

会社概要

創立・設立:1968年
資本金:3,000万円
売上高:12億円
事業内容:建設工事業、土木工事業、不動産賃貸業
従業員数:24名
所在地:青森県三沢市新町三丁目31番地2201
TEL:0176-53-3078
URL:http://www.suzukikensetsu.co.jp/