【第44回】「経営理念」をもとにした継承と進化への挑戦 (有)北の一チェーン 代表取締役 小関 省吾氏・専務取締役 小関 宏氏(宮城)

 小関省吾社長

(有)北の一チェーン 代表取締役 小関 省吾氏

小関宏専務

(有)北の一チェーン 専務取締役 小関  宏氏

競争が激しい仙台国分町で40年

 北の一本店の玄関

 (有)北の一チェーン(小関省吾社長・小関宏専務、宮城同友会会員)は今年で創業40周年を迎える「北の風味・北の風土」をテーマにした居酒屋を経営する会社です。

 青森県生まれの小関省吾社長(以下「小関社長」)は、青森県で和食の世界に入ったのち、料理の師匠を追って仙台にやって来ます。そして1974年、人通りがほとんどない裏通りで2坪の店からのスタートでした。「一客一心」を追求して、のちに30代で5店舗を経営するまでに事業は拡大しますが、小関社長は当時の自分自身を「重度のオーナー病(自己満足の経営・会社の私物化)」を患っていたと自戒を込めて語ります。

 その後、約10年の構想と準備を経て、年商の半分近い投資で「北の一本店」を開店。「北国の情景・懐かしさを感じる店内・北の食材にこだわり北の風味・風土の味を味わっていただく北の一番旨い店づくり」をコンセプトにした店は超繁盛店となりますが、「あの当時は店の面積・借金・社員数・悩みの全てが倍になった」と小関社長は振り返ります。

同友会へ入会し「第8期経営指針を創る会」受講

店内風景 小関社長がこだわって集めた古民家の梁が天井を飾る

 「若さ」「体力」「度胸」「勘」「運」を味方にしても、ワンマン経営に不安でならない日々が続いていた時に、店の常連客で既に会員になっていた経営者から誘われて宮城同友会に入会した小関社長。当時の小関社長を誘った会員は「店の2階部屋から眺めると小関さんは『板場にいる鬼』という感じだった」と語ります。

 悩みと不安から「第8期経営指針を創る会」を受講し、今までのワンマン経営と丸投げ経営(財務・経理を人任せにする経営)から脱却し、「みんなの会社」と思えるような会社づくりを目指して経営理念を打ち立てました。

 その後、毎年更新と発表会の開催を継続しながら、社員一人ひとりが育つ環境づくりのために「あゆみ確認シート」というシートをもとに、定期的な個別面談などに取り組んでいます。

「第22期経営指針を創る会」をきっかけに

 一昨年、後継者である小関宏専務が「第22期経営指針を創る会」を受講しました。「経営者になる自分に足りないものは何か?を学びたい」と思っての受講でしたが、既に小関社長が受講して成文化された経営理念があるため、初日に「経営理念をどうしたいの?変えるの?変えないの?」という問いかけがあり、小関専務は返答に詰まったのでした。

 ただ跡を継げばよいと思っていた小関専務は、「私自身は事業承継をしたうえで何をしたいのか?」を考えざるを得なくなります。

 小関専務は語ります。「まだ明確な答えは固まっていませんが、今回の受講で経営者として父親としての社長への尊敬と感謝、支えてくれている社員への感謝の気持ちが改めて芽生えました。この業界、この場所で40年間商売を続けられているということは、並々ならぬ努力と信念があったからだと思います。人材不足や産地や食材の変化や高騰、地域やお客様の変化など、課題を挙げればきりがありませんが、社長が頑なに宣伝広告をせず、来ていただいたお客様に、活力を与え喜んで帰っていただく『一客一心』の心意気は継承しつつ、新しい北の一を創っていきたいです」。

同友会での学びと実践が課題を乗り越える力に

 現在、小関専務は経営労働委員会の一員として参加しながら、「創る会」同期の仲間と定期的に集まって実践交流を続けています。

 「決して順風満帆ではありません。人材不足は深刻で定休日を余儀なくされていますし、幹部社員の退職などもあります。それでも店を続けられるのは、経営指針に基づいて継続してきた新卒採用によって今年で7年目の社員から昨年入社の社員までが階段式に残ってくれて店を支えてくれていることです」と小関専務は語ります。

 経営理念をもとにした継承と進化への㈲北の一チェーンの挑戦は続きます。

経営理念

【科学性】
私達は、豊かな感性と技術を追求し、北の食文化を守り、育て、伝えます。
【社会性】
私達は、食の喜びと物語を提供し、世代を越えて親しまれる企業を目指します。
【人間性】
私達は、全ての出会いに感謝し、共に学び、夢実現に挑戦し続けます。

会社概要

設 立:1983年
資本金:500万円
事業内容:活力と笑顔を与える飲食店(「北の一本店」「じょじょや」)
従業員数:30名
所在地:宮城県仙台市青葉区一番町4-4-11
URLhttp://www.kita1.com/