【第46回】未来に種まく、あったか仕事 (株)おくや 代表取締役 松崎 健太郎氏(福島)

松崎社長

(株)おくや 代表取締役 松崎 健太郎氏(福島)

社屋

 喜多方駅から徒歩5分ほどにある「おくやピーナッツ工場」。昨年4月にオープンした蔵造りの店内では、会津産の豆を使ったさまざまな商品が並ぶかたわらで、冬季限定商品のピーナッツ金つばを焼いています。さらに、濃厚ピーナッツソフトクリームの看板や地元で採れた何種類もの豆も並び、さながら「喜多方の豆づくし」ともいえるお店です。

創業10年目の迷いから…

 21歳で起業し、がむしゃらに進んできたという松崎健太郎社長((株)おくや、福島同友会会員)。10年経ったあるとき「あなたはなぜここで豆屋をしているのですか?」という問いに、何も答えられない自分に気づきました。

 そんな中で福島同友会に入会。そしてすぐに「第14期経営指針を創る会」に参加します。経営者の仲間同士、お互いに本気になって「何のために経営しているのか?」を考え、深めていく中で、改めて自分のこれまでに歩んできた道筋を見つめ、理念を成文化しました。「同時に今後10年間の事業計画も一気に作り上げた」と松崎氏は笑います。

「地域の宝」を掘り起こす

商品1

 経営指針を明確にしたことで、「やるべきことが鮮明になった」という松崎氏。会津・喜多方という地域で、重要な産業として息づく農業・農家、そしてそれを取り巻く地域の企業をつなぎ、みんなに喜ばれる仕事をする。そんな理念のもと、これまで地域で培ってきた「地域の宝」の掘り起こしが始まりました。

 同社で販売する商品の素材となるピーナッツは地元の農家70人による「会津豆倶楽部」を組織し、契約栽培をしています。1980年前半まで地域で栽培されていた落花生に注目し、「100年後の会津にも豊かな豆畑が広がっているように今その種をまこう」と農家を回り、契約栽培を広げていきました。震災後の原発事故では、徹底して放射能の数値を測定しました。「農家にひと手間お願いすることで、お客様からの安心感、そして信頼を得ることができ、結果として生産する農家自身にとってもプラスになる事を説明して回った」と松崎氏は言います。

経営理念を形にした「お店」

商品2

 松崎氏は、「このお店は理念が詰まった夢の空間」だと語ります。店舗の奥では、昨年新卒で入社した鷲津さんがピーナッツの加工に汗を流しています。はじめは養護学校からの研修生として受け入れましたが、彼の仕事に対する熱心な姿を目の当たりにし、同社で初の新卒社員として採用しました。一年近く経った今では、接客も含めてこのピーナッツ工房には欠かすことのできない存在になっています。そんな鷲津さんは、この3月に社員みんなの応援も得ながら、遂に運転免許を取得することができたと目を細める松崎氏です。

授産所に委託し、全て手作業での皮むき

 同社で加工するピーナッツの皮むきは全て手作業で行います。そしてその作業は、授産施設に委託して、一つひとつ大切に加工されています。こうして、地域のさまざまな人々との関わりを持ちながら事業を展開させるのが、まさに理念に掲げる「あたたかく」「地域農業・産業に貢献する」ことだと松崎氏。

経営理念を広める

 喜多方の風土に根差した数々の豆を、多くの人々に知ってもらおうと、松崎氏は全国を飛び回っています。その一方で、店舗で販売するピーナッツソフトクリームや金つばなどの商品開発にも力を入れています。
福島同友会の「経営指針を創る会」では毎回アドバーザーとして参加し、受講生と一緒に学び、自社の経営指針を見直す場としても生かしている松崎氏。理念をどう深めて実践いくか、という点でのゴールはありません。

 理念を土台に、喜多方の地に根差したおくやの挑戦はまだまだ続きます。

経営理念

豆商い3つの心
一、「健康で美味しい日本食文化」を伝える心
一、「地域農業・産業」に貢献する心
一、「豊である努力」の上、人に尽くす利他の心

(社是)
未来に種蒔くあったか仕事‐未来に繋がるか、あたたかいか、迷った時の判断基準にしよう‐

会社概要

創 業:1997年(法人化 2009年)
資本金:100万円
年 商:8,000万円
事業内容:豆のお菓子の販売、会津産豆を作る「会津豆倶楽部」契約栽培事業、おくやピーナッツ工場
従業員数:10人(うちパート4名)
所在地:福島県喜多方市字長面3074-13
TEL:0241-25-7915
FAX:0241-23-7916
URL:http://shop.oku-ya.com/