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【第15回】新卒社員の一生に責任を持つ 宮川バネ工業(株) 代表取締役 宮川 卓也氏(滋賀)(2014.07.16)

宮川社長  宮川バネ工業(株) 代表取締役 宮川 卓也氏(滋賀)

 社屋  宮川バネ工業(株)(宮川卓也社長、滋賀同友会会員)は1953年創業で、初代、現社長の2代にわたって続いているメーカーです。創業以来、永らく中途採用で人材確保をしてきましたが、2000年から新卒定期採用に切り替えました。きっかけは、採用支援をお願いしていた滋賀同友会会員の会社との出会いでした。「中途採用ばかりだと、将来会社が組織になりにくいですよ」とアドバイスされ、当時の社長の悩みに合致した話だったため、さっそく新卒定期採用に取り組みました。

一から会社を見直す

 しかし、そのためには新卒者向けにパンフレットを作らなくてはなりませんでした。「自社を正しく理解してもらい、良い印象を持ってもらうための原稿を書くにも大変苦労しました。自社の数少ない良いところ、リクルーターの方に自信を持って訴えられること。なかなか浮かんできませんでした。初任給も他社の金額を横目に決めますが、そうすると今いる社員との矛盾が出てきてしまいます。新卒採用をするためには、給与体系そのものを見直さなくてはならなくなりました」と宮川氏は振り返ります。また、初めて合同企業説明会にブース出展しましたが、行列のできる他社ブースを横目に、だれも来ないブースで孤独な思いをすることばかり。採用支援会社の社員の方が気の毒に思って、ときどき雑談をしに来るほどでした。

 それでも、今のままではいけない、会社らしい会社にしなければとの強い思いで数年続けられるうちにアピールの仕方もなんとなくわかってきたり、いわゆる就職難の状況も出てきたりで、少しずつ話を聞いてくれる学生さんが現れました。この時点では、会社が選ぶどころではなく、何とか入社して欲しいとの一心で一生懸命説明をし、めでたく初めて新卒の採用ができました。しかし、一難去ってまた一難。当時はまだ「経営理念」も「指針書」もなく、とても新卒者を育てられる環境が社内にはありませんでした。

経営指針書が生きてくる

業務の様子  採用しては退職、採用しては退職の状態が続く中、2005年に滋賀同友会に入会し、さっそく「経営指針を創る会」に参加。なんとか創り上げた指針書を発表しました。しかし、その効果が表れるのにもやはり時間がかかります。2005年の時点で、入社3年目の新卒者の離職率は何と50%。「女性の新卒採用をしたものの数年で寿退社ということもありましたが、それにしても高い離職率でした」と宮川氏は言います。

 その後、紆余曲折を経て入社後3年以内の離職率は40%、30%と低下し、「指針経営」を始めてから約9年目の現在では、25%(4名中1名)となりました。今回の1名も内定辞退であり、実質的には離職率0と言えるかも知れません。
 
 今では、従業員40名の会社に、説明会を開催すると15名くらいの学生が参加されるようになりました。「企業規模から言って毎年1人採用させていただくのがやっと。やむなく選考して不採用とさせていただくことがとてもつらいです」と宮川氏。今では各部門のリーダーは2000年以降に新卒採用した社員がしっかり務め、会社の中枢を担うようになって来ています。またそのうち6名が独自の後継者育成システムにも積極的に参加して、次世代経営幹部として頑張っています。

新卒採用から学ぶこと

 宮川氏は新卒定期採用を中心にすることの意義として、下記4点にまとめています。

1)新卒者にとって、入社した会社がすべてであり、成長するのもしないのもすべて自社の責任と考えることで、経営と社員教育に大きな責任感と緊張感が生まれ経営者が本気になれる。ベテラン社員ばかりだと、つい「社員はわかってくれているはず」という甘えがでるが、新卒の場合は繰り返し、丁寧に説明する必要を痛感する。これは従来からいる社員も同じであることは後から理解できた。

2)社内での教育の取り組みにもよりますが、間違わなければ成長スピードが比較的早く、順調に育つ。従来からいる社員は以前のいい加減な社長を知っていますから、共感してくれるまで大変時間がかかる。

3)新卒者の生涯を引き受けるという視点から、経営者は長期にわたる経営の維持・発展の戦略をきちんと考えなければならない。「指針経営」にも本気になれる。 
 
4)給与、労働環境、福利厚生などいわゆる衛生要因の整備が進み、従来からいる社員の満足度も向上する。マスコミや一部の業種では「アベノミクス効果」など景気の良い話があるようだが、下請け中小製造業ではネガティブな話が目立つ。そのような環境の中でも、何とか雇用を維持し、社員が成長していける環境をつくり続ける決意ができる。

その人の人生に責任を持つ

 「今非常に頑張ってくれている新人社員がこんなことを言いました。『この会社に決めたのは、社長が新卒の一生に責任を持つとおっしゃったからです。とても感動しました』。経営者の責任は重大だと、気を引き締めています」と宮川氏は語ります。

会社概要

設 立:1953年
資本金:4,000万円
年 商:7億円
事業内容:各種薄板バネ・コイルバネ・プレス加工品・マルチ加工品・金型
従業員数:45名
所在地:滋賀県東近江市園町31-1
TEL:0749-46-0193
URL:http://www.m-b-k.co.jp/

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