シリーズインデックス:若者がいきいき働く企業へ

【特別版】“ 親”からの旅立ち~会社・人・地域、幸せを創造するために~ (株)たまゆらの里 代表取締役社長 岡本 尚氏(和歌山)(2015.01.07)

第42回青年経営者全国交流会第12分科会報告より転載

岡本社長 (株)たまゆらの里 代表取締役社長 岡本 尚氏(和歌山)

たまゆらの里ができた経緯

 21歳のときにホテル業界に就職し、仕事も慣れはじめた23歳のころ、父親から東京に呼び出され「ぼちぼち帰ってくるか。土日は和歌山で勤務し平日は大阪で勤務、和歌山と大阪の両立で戻ってこい」と言われました。大きな設備投資をするので戻らなければ自分の存在価値がなくなると思い、すごく悩みましたが戻ることにしました。親会社たまゆらの保養所だった施設は、社員の利用はほとんど無く、代わりに一見のお客様が飛び込みで利用することが増えてきました。宣伝もせず看板も上げていないのに反響があったので、兄の友人を支配人に迎え入れ、1993年6月「手ぶらでアウトドアを!」をコンセプトに開業しました。

地域との共存共栄

 地元の方たちとイベントやコミュニティー活動に取組んでいます。家庭用品等の製造が地場産業で、たわし製造会社と共同で、子どもたちにたわし作り体験を行っています。また、地域の「太鼓文化」を大切にし、小中学生や高校生に演奏を教え、施設で年に4回程演奏会を開催しています。施設横には貴志川というきれいな川が流れていて、あまごという川魚を放流して釣り大会を年に1回開催しています。地元の学校もこの釣り大会を学校行事としていて、お客様たちと一緒に約200名が釣り大会を楽しみます。

 たまゆらの里は情報案内所として、スタッフみんなが集めた情報をもとにお客様に地域の魅力を発信しています。

3つの問題

(1)雇用問題で悩む
 入社してから2年間、私は毎週土日のみの勤務で、支配人とは仕事の連携を取れていました。しかし和歌山に常駐勤務となり、いつしか支配人と意見が合わなくなり、父と兄も説得してくれましたが、結局退社することに。忙し過ぎて教育をする時間も無く、すべての業務を独自で行っていました。また、社員を入れても給料が一定なので忙しい夏前には辞めるなど、離職率の高い日々が続きました。

 2003年に賃金制度を見直し、社員が定着するようになり、そして社員を採用することで、私自身時間に余裕が出始めました。閑散期に企画や営業をすることができ、また業務を任せることで各部署ができて組織化しました。2011年からは高卒の新入社員を毎年採用しています。

(2)売上・利益が伸びず悩む
 閑散期でも集客ができるよう、集客の可能性のある日程に力を入れました。観光資源と結びつけるプラン、大学生向けの学割プラン等を作成し、集客を増やす工夫をしました。一律だった料金体制を5段階に分け、シーズン以外には割安で宿泊できるようにしました。

(3)会社って何?
 親会社に依存して売上を上げることばかり考えており、事業継承のことを後回しにしてきました。例え社長でも議決権がなければ自分自身で決められないことを実感しました。そこで、親会社に頼ってばかりではなく、自分の城は自分で守らなければ!という決意をしました。親会社に頼るのではなく、会社も私も自律していくことに気づかせてくれた兄には感謝しています。

あるお客様との出会い

 繁忙期のある日、お客様から予約した部屋と違うとクレームが入りました。お客様のお一人に車椅子の方がいて、事情を話し当初予約して下さっていたお部屋のお客様と変わっていただくことになりました。

 そして1年後、何気なく宿泊名簿を見ていると、そのときのお客様の名前があり、あいさつに行きました。するとお客様が、「兄ちゃんあのときは悪かった。あのときが家族そろってできる最後の家族旅行やったねん」。部屋の片隅に見えた額縁。私は言葉が出ませんでした。同時に心の鐘がカーンと鳴り、気づかされました。お客様の想い、私たちの仕事の重大さ、何も理解せず仕事をしていたことに。

たまゆらの里の『ビジョン』

 たまゆらの里は、仕事と生活をともに楽しめる職住近接型の村おこしを通して、「みんなが幸せに暮らせる村づくり」をめざしています。

村では、観光を軸として宿泊・物販・飲食・体験・農業・カルチャースクールなどをひとつのエリアに集結させ、そこで働くスタッフや起業する経営者たちが近辺に定住します。村で働く人々が、お客様に喜んでいただける仕事を通して幸せを感じるのはもちろんのこと、買い物や習い事、外食など生活や余暇も楽しめる場です。地域への愛と誇りが高まることで日本や世界各地からいらっしゃるお客様への感謝の念が自然と湧き起こります。それをカタチにすることでお客様の満足・喜び・感動と働く人々の幸せ、さらには村全体の経済的発展という好循環が生まれます。

 現在、日本の地方の多くの地域では寒村化や過疎化が進んでいます。若者は進学や就職を機に都会に出て戻らず、また環境のよい田舎暮らしに憧れてIターンを目指す人々の多くも、結局は地域に馴染めず離れていってしまうのは紀美野町に限ったことではありません。とはいえ、都会で暮らす人々が豊かさや幸せをどれほど感じられているのでしょうか。

 われわれは観光産業と村おこしのコラボレーションを通して「みんなが幸せに暮らせる村づくり」を実現します。同様の課題を抱えた多くの地域に対して新たなビジネスモデルを提案し、日本人の「幸福観」の醸成に一石を投じていきます。

会社概要

設 立:1936年
資本金:1,390万円
事業内容:宿泊運営、開発
従業員数:18 名(その内パート・アルバイト/ 9 名)
所在地:和歌山県海草郡紀美野町長谷宮705
TEL:073‐499‐0613
URL:http://www.tamayura-sato.com/

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