【第9回】小水力発電で地域活性化めざす (有)石井設備サービス 代表取締役社長 石井 洋志氏(群馬)

石井社長

(有)石井設備サービス 代表取締役社長 石井 洋志氏(群馬)(2015.06.17

社屋概観

 (有)石井設備サービス(石井洋志社長、群馬同友会会員)は、高崎市で「水」に関する商売をしています。工場などの給排水衛生設備工事を創業当初から行っており、石井氏が入社した2009年以降はコスト低減の提案を積極的に開始しました。現在は畜産に特化した廃水処理のコンサルティングと水処理薬品の販売で実績を上げ、事業の柱となりつつあり、業界内のシェア拡大へと動いています。

小水力発電に取り組んだきっかけ

 父の経営する会社を引き継ごうと群馬に戻ってきたものの、そう簡単に受注できるわけでもなく、自らの力で請けられそうな仕事がないか模索していました。

 そんな折、群馬県の新エネルギー導入可能性調査事業(2010年度、予算50万円程度)に申し込んだところ、応募が2件だけだったこともあり、同社も採択されました。そして、いろいろなところへヒアリング調査に出掛けている中で出合ったのが、現在石井氏が事務局長をつとめている「ぐんま小水力推進協議会」でした。そのメンバーに誘われたのが、小水力発電に取り組んだきっかけです。

 小水力発電そのものの歴史は古く、明治時代にはすでに存在していました。もともとかなり大規模な発電所でない限り採算が合うようなものではありませんでしたが、東日本大震災以降、再生可能エネルギーが急速に見直され、買い取り価格も上がったため、採算がとれ、事業性のある場所が増えました。

「ところが県内では、やればできそうな企業もだれ一人やろうとしないんです。『だったら私が挑戦しよう』と取り組みはじめたわけです」と、石井氏は言います。

新会社を設立

小水力発電

そうするうちに、たまたま群馬県の元企業局長と協議会で知り合いました。たたき上げで調査・設計から運営管理までの実務を一通り経験している数少ない技術者であり、同社に入社してもらいました。今後は自社で調査・設計を行い、昨年設立した別会社「eneco株式会社」で電力事業に取り組んでいく予定です。

 群馬県は小水力発電のポテンシャルが全国で4位と、かなり高いにもかかわらず、なかなか導入は進んでいません。

 その要因の一つに、調査・設計ができる地元企業がほとんどないことがあります。大手コンサルに調査・設計を依頼すると、ビックリするような高額で提示されてしまうのです。

 「そこで、うちのような小さな組織で余分な経費をかけず調査・設計にかかる費用を極力抑えて小水力発電所の建設まで漕ぎ着け、地域の活性化につなげたい。そんな思いでスタートしました」と石井氏は語ります。

今後の展望

 群馬県には、「その気」になれば採算の取れる小水力発電が可能な場所はたくさんあります。しかし、実際に発電所をつくって稼働させるまでには、時間のかかる流量調査や各種申請手続き、そして何より資金調達と、ハードルが多くあるのも事実です。「それを越えられるかどうかは、『その気』がどこまで『本気か』だと思います」と石井氏。

 まずは100~200キロワットの発電所で実績を重ねながら、5年後には3,000キロワットの発電所の実現をめざしています。また、昨年の「群馬ベンチャーサミット」でグランプリを受賞した、家畜糞のメタンを活用して電気エネルギーをおこし、それを農業に活用するという新たな事業も推進。環境負荷の低減を通して社会貢献を果たしていきます。

会社概要

創 業:1989年
事業内容:設備工事の設計・施工(給排水衛生、消防、空調)、機器販売、水処理薬品薬品販売、小水力発電に関するご相談
従業員数:6名
所在地:群馬県高崎市足門町693-1
TEL: 027-372-2839
URL:http://www.ishii-ss.net/