【第29回】「ちょっと先」の未来を見る (株)徳島機械センター 専務取締役 新田 国男氏(徳島)

新田国男氏

(株)徳島機械センター(新田国男専務、徳島同友会会員)は、建物解体工事と産業廃棄物処理業を行う会社です。1948年に砂利運搬業より創業し、重機土工(バックホー(油圧ショベルの一種)での土堀り)を経て、現在の建物解体工事と産業廃棄物処理業という業種に至りました。建物を壊して処理するというのではなくきれいに解体して、ほぼ100%リサイクルを行い、「徳島県3R実践事業所認定」を取得するまでになりました。
 3R実践事業所認定は建設業・産業廃棄物処理業では同社のみが県内で唯一取得。県内の全産業でも上場大手企業3社が取得しているのみとなります。約20名程度の中小企業でも上場大手と同じぐらいの環境配慮を行うことができます。

取り組みのきっかけ

リサイクルクラッシャー

 2003年当時は産業廃棄物を焼却処分する一般的な解体工事業者でした。しかし、時代がリサイクル推進という方向に向かって行くのを肌身で感じるようになってきました。
 そうはいっても建設業は単品生産方式であり、個別対応しかないため現実にはできないだろうと考えられました。リサイクルの取り組み当初は、環境分野を取り組むことで儲かるという理念なき単純な考え方でしたが、県外での先進的な会社見学などをすることで焼却処分ではいずれ破綻・倒産するということに気づかされます。
 その後、産業廃棄物をリサイクルできる処分場建設に着手するのですが、簡単にできるものではありません。建設には最低でも3~5年かかるのが一般的ですが、その時に地元の方から「早よう、処分場つくれ」と一度だけ叱咤激励をいただきました。迷惑な施設である産業廃棄物施設を「早くつくれ」と言ってくれる方のためにも、地元に恩返しのできる処分場にしないと新田氏は決心しました。

挫折の向こう側へ

 2008年4月に念願の中間処理施設(リサイクル施設)の認可取得、さらに3R実践事業所認定も受けたことで機は熟しました。3R認定を受けると官公庁より品質、数量、価格等を考慮の上、認定製品の優先的な調達に配慮するなどのインセンティブがあるというのが公約でした。しかし半年後リーマンショックが起こり、全面サポートしますと言っていた金融機関も海外バイヤーも潮が引いたようにいなくなり、かつ廃棄物の流れまでも激変・半減し、さらには公約されている官公庁からのインセンティブは全くありませんでした。ほどなくして役員報酬カットなどの改善策では納まらないほどの赤字(約5000万円)に陥り、2009年10月に「経営者としては失格だ」という人員削減を行いました。
 建設業の中でほぼ100%を目指してリサイクルをするとは大変な作業ですが、新田氏が「人として正しい事をしていれば、必ず世の中に必要な事であり認められる日は来る。だから力を貸してほしい」と熱く社員さんに訴えたことでひとつやってやろうという機運が高まりました。今現在も官公庁からのインセンティブはありませんが、それがなくともリサイクルは定着し会社文化となり、お得意さまも増え、さらに環境の困りごとの問い合わせを受けることで、新たな事業展開にも結びついています。

「もりまも」への参加~森を守る企業へ~

環境保全の仕組み「もりまも」

 3.11の東日本大震災以降、環境問題=エネルギー問題となってしまいました。エネルギー問題以外の環境にも再度着目してもらうため、新たな取り組みが必要となりました。
 ちょうどそのとき、環境省の取り組みで地域事務局である「徳島カーボン・オフセット推進協議会」というところで「もりまも」事業を始めました。「もりまも」とは企業が事前に森を守ると宣言していた商品やサービスに対して、購入金額や本数などに応じて山林保全に寄付を行う活動のことです。「このような取り組みが始まったことで、『カーボン・オフセット』*1や『Fun to Share』*2というような難しい環境用語が並ぶよりも、同じような成果が得られる『地元徳島の森を守ります』という方が多くの方に伝わりやすい。日常行っている業務を行いながら地元徳島の森(環境)を守っていくことはものすごく良いことだなと感じています」と新田氏。
 同社では建物解体1物件あたり500円、再生砕石1立方メートルあたり1円の金額を森に寄付することで、環境保全と新たなPRの方法を確立しています。さらに環境経営に取り組むメリットとして、コストダウンや新たな展開・発見があり、また問題解決へのきっかけとなります。収益性もリサイクルに切り替えたことで年商の1.5%程度(700万円)が純利益として毎年確保できるようになりました。

*1…日常生活や経済活動において避けることができないCO2などの温室効果ガスの排出について、他者が行う温室効果ガスの削減・吸収のプロジェクトに投資することなどにより、埋め合わせをするという考え方。
*2…環境省が提唱する最新の知恵をみんなで楽しくシェアしながら、低炭素社会をつくっていこうよ、という合言葉。

環境活動と経営を両立させることが環境経営

環境問題が起ってから対策を講じることを環境対策、影響の起こる前に環境対策を講じていくのが環境保全、環境活動と経営を両立させることが環境経営です。「温暖化防止の国際会議(COP21)が採択されたこの流れはいずれ中小企業にも波及されます。持続的な環境経営を行うことで、コストダウンよりも大きな雇用創出ができるものと思っています」と新田氏は語ります。

会社概要

創 業:1948年
設 立:1967年
資本金:2,000万円
年商:5億円
従業員数:22名
事業内容:総合建物解体業、産業廃棄物処理業
所在地:徳島県徳島市丈六町森ノ木9番地1
TEL:088-645-2470
URLhttp://tokushimakikai.com/