【第31回】自社のあり方から環境経営を考える(株)大伸工業 代表取締役 森 誠志朗氏(山口)

森社長

(株)大伸工業 代表取締役 森 誠志朗氏(山口)

ダイヤモンド工事業

 山口県下関市員光町にある(株)大伸工業(森誠志朗社長、山口同友会会員)は、中国地方・福岡県を営業エリアに、建設業の土木・建築現場におけるアスファルト舗装やコンクリート構造物の切断や穿孔(せんこう)を専門に営業しています。アスファルトやコンクリート構造物の切断に使用されるのがダイヤモンドブレードであることから、業界的にはダイヤモンド工事業(カッター屋)と呼ばれています。

 同社は、1977年に先代社長である森氏の父が起業しました。森氏は、サラリーマンを経て、2000年に入社し、2006年に事業を承継しました。社長承継時は、バブル経済がはじけた後でした。仕事は途切れませんでしたが、地方にも不況の波が徐々に感じられてきたころで、さらに工事量は激減。リーマンショックでは30%近く売上がダウンしました。それまで増収増益を続けてきましたが、大きな改革をする必要性を感じ始めていました。年々と減少していく工事の件数、そして2008年のリーマンショックの影響。わらをも掴む思いで参加した山口同友会の「経営指針塾」で、これからは土木業界だけにこだわらず、建築業界でも切断工事の技術を生かしていくことを決意しました。

環境配慮型経営へ

 カッター切断工事の際に発生する排水に対して、産業廃棄物として排水処理の必要性が求められたときに、一つの大きな転機が訪れます。排水処理対応のために、工事を中断して処分場へ持っていかなくてはならなくなり、会社に大きなコストとロスが生まれていました。

 そこで、会社移転を機に切断工事の際に発生する冷却排水を100%リサイクルする処理施設を全国で初めて自社内に設けました。この自社処分場は、今でも県外の業者からも見学に訪れます。処分制度変更への対応から設けた施設でしたが、このことは、環境に配慮した会社の必要性を森氏に気づかせるきっかけとなりました。自社処分場を作ったことで一番喜んだのは社員でした。「制度が変わる前から、今まで現場で捨ててきた排水に対して何となく後ろめたかった。工事することでお客様に喜ばれ、そこで出た排水も自分の会社できれいにできるようになって嬉しい」と社員に言われ、会社の存在意義と環境を含めた社会貢献のあり方について考えるようになります。

グルービング工事

グルービング工事

 森氏が、8年前から取り組んでいるのが、「グルービング工事」です。グルービング工事とは、道路に対して縦方向に細い溝を掘る工事です。グルービング工事の利点は、カーブのきつい箇所のスリップ事故を防ぎ、細い溝を掘ることで雨天時の水はけもよくなります。また、削ることで表面積も増えるため、道路がラジエーターの役割を果たし、冬場の凍結防止や積雪の際には、雪解けが促進され、道路の安全性が増します。もともとは空港の滑走路で排水性を高めるために始まった工法ですが、現在は一般道や高速道路にも多く見られます。

 森氏は、いち早くこのグルービング工事に着目し、山口県では唯一のグルービング施工業者として数々の現場をこなしています。山口県では、特に山陰側では積雪によりライフラインが途切れることがあります。これらの事態をより早く安全に復旧させるためのお手伝いとして、グルービング工法を積極的に展開しています。

会社概要

設 立:1976年
資本金:1,000万円
事業内容:アスファルト・コンクリート切断、目地切(乾式・湿式)、コンクリート穿孔・ウォルソー工事、テストピース・コア採取、カッター冷却排水処理、乾式グルービング工事
所在地:山口県下関市員光町2丁目14番25号
TEL:083-249-3421
FAX:083-249-3422
URL:http://www.daishinkougyou.biz