【第35回】できることの実践からはじまる環境経営 (株)マスナガ  取締役会長 森 弘氏・代表取締役 森 弘国氏・取締役専務 江上 勇次郎氏(熊本)

環境経営への取り組みをはじめるきっかけ

(株)マスナガは、モンキーレンチの仕入れ販売業を営んでいた増永金次郎商店として1949年に創業。現在は、機械部品・機械工具・機具・鋲螺・事務機などの販売を中心に行っています。当時から九州一円を営業範囲として活動するなかで、お客様の要望に「ノー」と言わないスタイルを貫くなか、次第に扱う商品も拡大。ネジの1本、2本でも取り寄せて対応する誠実さを強みに地域からの信頼を得ています。

同社が環境経営への取り組みをはじめるきっかけとなったのは、取引先の環境に対する意識の変化でした。もともと、環境についての取り組みは社内の節電や営業車の荷台の荷物を減らすなど日常的に心掛けていましたが、それを環境保全に関する取り組みを進めるために、社内の環境に関する方針や目標の設定に着手。より具体的に取り組んでいくために2004年にスタートした「エコアクション21」を翌年4月に認証取得しました。今では、多くの企業が取得していますが、県内では5社目の先進的な取り組みでした。

 

環境に配慮した商品への変化

環境マネジメントを進めるなかで、主力として取り扱うネジにも変化が出てきます。それは六価クロムから三価クロムへの移行です。クロムはネジの表面の処理として使われている物質です。六価クロムは、耐食・防食性に優れた性質を持っていますが、強い酸化作用があることが特徴です。また、水に溶けやすい性質もあるため人体や環境への悪影響が懸念されています。

一方、三価クロムは、自然界に存在している元素のひとつで、人体の構成に必須な栄養素でもあり、サプリメントにも含まれています。お客様や環境の立場で考え、現在取り扱っている商品も、小ネジは約7割、ボルトは約3割まで三価クロムへの移行が進んでいます。ただ、どんなに環境へ対応した商品を取り扱っても、お客様の意識改革なくしてはどうしても価格の安い商品を選んでしまいます。だからこそ、環境を意識した商品を選ぶことの大切さを地道にお客様に伝えることを常に心掛けています。

環境改善が経費削減につながった

毎年行ってきた環境目標のエネルギー削減量も行き詰ってきたなか、次に注目したのが社内の電力使用量の見直しでした。まず、照明のLED化による固定費削減に取り組み始めます。LEDの導入はコストがかかりますが経費の試算をする中で、そのコストは約4年で採算に合うことがわかりました。そこで社内に100本ある電灯のLED化を徐々に進め、一年間で80本を変更しました。その前後の電気使用量と比較すると2,117 kWh の使用量の削減につながりました。交換するとしないとでは、約6万円以上の削減効果があったことになり固定費削減として照明のLED化は確実に効果が出ることを実証しました。そのデータを生かし、お客様に自社のLED化の効果を伝えることで環境に配慮した商品の販売促進にも役立っています。このように環境への考え方と本業が結びつくことで、義務感で取り組んでいた社員にも環境経営に取り組むことへの理解が進んでいきました。
 

できることを考え実践すること

さらに、より職場内の環境改善のために、くまもと温暖化対策センターが無料で実施している「簡易省エネ診断」を活用。そのなかの「快適職場診断」は、サーモグラフィーや放射温度計を使用し、職場内の温度差を知ることにより環境について考える機会にする取り組みです。社屋内4カ所のエアコンの設定温度に対する室内の最高温度と最低温度の測定を実施した結果、それぞれの空間内で温度にむらがあり、意外なことにお客様の出入りが多く外気が入りやすい1階店舗よりも2階の事務所の温度差が大きいことが判明しました(図1)。
 

 2階の温度差が大きい理由としてドア下の隙間から冷気が流れ込んでくること、ブラインドを上げている窓からの冷気が主な原因であることがわかりました。対応策としてドア下部の隙間をふさぐ・ブラインドを下ろすことで温度のむらを小さくすることができ、サーキュレータで空気を攪拌してむらをなくすことで環境を快適にできるだけでなく、エアコンの設定温度も下がり、電気代の節約にも期待が高まっています。

現在、営業車の燃費向上のため全社員でのエコドライブに取り組むことなど、社内でできることから環境経営について取り組んでいる(株)マスナガ。今後も自社の実践事例をお客様に伝えることで環境への意識向上を促すだけでなく、事業を通じた「最適生産、最適消費、最少廃棄」の持続可能な循環型社会の構築をめざしています。

会社概要

創業:1949年
資本金:1,200万円
従業員数:16名
事業内容:機械工具、器具、鋲螺、事務機販売等
所在地:熊本県熊本市南区江越2丁目7-8
会社URL http://www.msng.jp