シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第8回】渡す側・受ける側 双方の姿勢が問われる(株)プロスパー 取締役会長 武山 和明氏/代表取締役社長 武山 誠氏(岐阜)(2016.06.01)

 武山誠社長 (株)プロスパー 取締役会長 武山 和明氏/代表取締役社長 武山 誠氏(岐阜)

社屋  「おじいちゃん、僕ね、大きくなったら警察官になって白バイに乗るんだ」「何だって?お前はお父さんの後を継いでこの会社を大きくするんだ!」警察官になりたい…。幼いころ、将来の夢を口にした誠氏に、祖父は間髪入れずこう言って、頭をゴツンと叩きました。「この時、なぜか祖父に悪いことをしたなと思ったんです」と誠氏。同時に、会社を継ぐということを、何となく考え始めます。

 (株)プロスパーは、この祖父が始めた電飾看板の製作からスタートしました。プラスチック製の「サイン」と呼ばれる看板は、木製が主流だった当時、大変珍しいものでした。社員数名の小さな工場は、子どものころの誠氏にとって「遊び場」。「父親から、この会社を継いでくれとは一度も言われなかったし、私自身も継ぐと言ったことは一度もないはず。それでも、職人さんの隣で、廃材を勝手に使っていろんなものをつくり、遊ぶ姿を見た近所の人やお客さんから、『おっ!お前が三代目か。将来が楽しみだな』と声がかかる。そうして周囲が後継へのレールを、ごく自然な形で準備してくれたのかもしれない」と誠氏は言います。

小さな工場では終わらせない

看板  中小・零細企業は、創業家が責任を持って事業を守っていかなくてはいけませんが、では創業家が継ぐのが当たり前かというと、それほど単純なものでもありません。現会長である誠氏の父・和明氏も、最初は会社を継ぐ気にはなれませんでした。大企業に勤めていた和明氏にとって、社員3名の小さな工場を継ぐなど、あり得ない話でした。それでも、迷い、考えた結果、継ぐことを決意します。「そのとき奥さんから言われた『決して数名の小さな工場では終わらせないでね』という言葉が、今も胸に残っている」と和明氏は言います。誠氏も「社員数名の小さな工場だったら、私も父と同様、継ぎたくなかったでしょうね、きっと」と笑います。

 和明氏が同友会で役員だったころ、ある会員が「うちの息子には、こんな会社は継がせたくない」とぼやくのを聞きました。「それくらい、中小企業の経営者は大変な仕事だと言いたいのだろうが、息子にも継がせたくない会社で事業承継ができるはずがないことを改めて思い知った」と言います。

 そもそも後継とは、事業を存続させることが第一の目的です。ゆえに渡す側は、後継者が引き継ぐに足ると思える会社づくりに尽力するのであり、受ける側は、創業家だからというだけでは事業を守れないという覚悟が求められます。

引き継ぐものと変えるもの

作業の様子  誠氏の目に映る父・和明氏は、「極めて平凡で、オーソドックスな生き方をしてきた人」。奇抜なアイデアや大胆な経営手法を取り入れてきたわけではありませんが、少なくとも社員20~30名の規模の会社、これから先も伸びしろがある会社、安定した取引先や顧客がある会社づくりを心がけて経営してきました。
2015年10月、社長に就任した誠氏。だれよりもこの会社を何とかしなければという思いは強いのですが、創業家としての使命感は、一歩間違えると社員のやる気を削いでしまう可能性もあります。

 誠氏が専務取締役になったころ、それを父親に諭されたことがありました。
 
 当時、和明氏は、全社員に対し、敬称をつけずに呼んでいました。和明氏から見ると、全社員年下。和明氏の性格、築いてきた社風、さらには親愛の情もあったでしょう。しかし誠氏の場合は、大半が年上の社員です。日頃は敬称をつけて呼んでいましたが、父親との会話の中で、つい、年上の社員を呼び捨てにしてしまいました。その時、和明氏から叱責されたのです。「お前、それはだめや!役職は下でも、年上の社員はさん付けで呼んでくれ。どこかでその姿勢は社員に伝わる。不満を持つ。やる気をなくす原因になる」と。社員がいかにやる気を出して、この会社で働いてくれるか。それが一番大切です。たかが呼び方一つのことですが、誠さんにとって、今後、どんな会社をつくっていくかを考える貴重な苦言でした。

常にチャレンジしていきたい

試作品の一部  「家業を継いだものとして、常にチャレンジしていきたい」。誠氏は、社長就任以来、新たな道を模索しています。一部のプラスチック素材しか扱えない現状を打破できないか。扱える幅を広げることはできないか。どんなプラスチック製品でもプロスパーに頼めば、何とかしてくれると期待される会社にしたい。そのためには、取引先の要望に応えられるような技術的な挑戦が必要となります。そうして関係業界も他業種も増やす、そして売上・利益を伸ばすことが当面の目標です。

 その一方で、まだまだやるべきことができていない。会社全体が今より少し変わればもっと利益が出せる、その程度の会社だという認識もあります。いつかは社員が胸を張って働ける会社に、そして、社長の長男である誠氏がこの会社を継ごうと決めたように、社員がうちの息子・娘をこの会社に入社させたい、親と一緒に働いてみたいと思える会社にしたい。まずはこれから5年、一歩ずつ前に進む。そんな誠氏の思いと、それを見つめる和明さんの姿。承継を機に、(株)プロスパーは変わり始めたばかりです。

会社概要

設 立:1982年9月
資本金:2,000万円
事業内容:アクリル店舗装備品(陳列什器、案内サイン)、産業機械用樹脂部品製造販売
従業員数:63名(内パート10名)
本社所在地:岐阜県羽島市足近町直道594
売上高:6億7,100万円(2015年)
TEL:058-392-1361 
FAX:058-392-1145

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