シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第14回】会社を引っ張る覚悟は社員にも伝わる (株)金星堂 代表取締役社長 小笠原 貴行氏(三重)(2016.07.20)

小笠原社長 (株)金星堂 代表取締役社長 小笠原 貴行氏(三重)

 (株)金星堂(小笠原貴行社長、三重同友会会員)は、創業1896(明治29)年。なんと今年で120周年になります。1966年に法人化してからも50年、長い歴史を持つ金星堂は5代目である小笠原氏の曽祖父が始めた看板屋です。駅の時刻表や郵便局の看板の作成、トラックに社名を書くなど、手書き看板が認められ、そのころから長蛇の列をつくっていました。

リーダーになんてなれない

社屋  小笠原氏は家族が何代も守ってきた会社を小さいときから見てきたので、将来自分が継ぐのだという意識はありました。ただ、事業継承を意識した当時には、明確な理想も持っておらず、母である現会長が日ごろから言っていた「65歳でハッピーリタイヤしたい」の言葉だけが漠然と心にある状態でした。

 大学を卒業して、すぐさま金星堂に入社するも半年で辞めてしまった小笠原氏は、「周囲からのプレッシャーもあったのだろう。とても忙しく、こんな仕事はもうしたくない」と語ります。また、中学時代の父の会社の倒産の経験から、「自分は経営者、リーダーにはなりたくなかった」と小笠原氏は笑います。その後、名古屋で5年ほど他社に勤め、27歳で金星堂に戻りました。

夢への第一歩

 金星堂に戻った小笠原氏は、業務を一から勉強し、たくさんのセミナーにも参加するようになります。三重同友会へは、現会長がもともと入会しており、小笠原氏もこのころよく顔を出すようになっていました。そうしていくうちに不明確な想いは消え、自分が継いだときのことを考えていました。小さいころから知っている社員に対しても、「もっとこうしたらよいのでは?」と思うことも増えていきました。

 まずは「従業員がこの社長にならついていきたい」と思ってもらえるように、事業方針や経営計画をしっかりたてるようになりました。いつか東京に営業所を持てるくらい大きくしたい。社員に頼られ、社員を信頼することができる社長になりたい。そのためにはキャッシュフロー計画や事業展開、他には何が必要か。

 仕事は社員に任せて、一人で黙々と考えていました。着々と売上が上がっていき、このころには名古屋や大阪、九州で営業所を出すことになりました。小さな三重県から飛び出て、全国に展開する一歩を踏み出したのです。

赤字からの脱出、認められた努力

 順調な時期はいつまでも続くわけがありません。小笠原氏が専務になったころ、リーマンショックが起こります。看板業界も大ダメージでした。少しずつ小笠原氏が社員に任せていた業務が、途端にうまく回らず多額の赤字を出してしまいます。

 そんな同社の情勢も厳しいなか、社員から東京出店のチャンスがあると報告があり、すぐに許可し、念願の東京営業所を開設することになりました。しかし、念願叶ったといえども依然として厳しい状態は続いていました。

 そのときばかりは小笠原氏も休みもなく現場に入り、営業をこなしていきます。しかし、そうすることで初めて気づいたこともありました。現場でうまく指示が回っていないことや非効率な業務の流れ。社内で起こっている不具合の理由や問題点について、それら一つひとつを社員や所長と協力しながら解決していったことで、3年で累積赤字を解消するに至りました。

 このタイミングで現会長から、来月から社長になるように言われます。やっと社長として認めてもらえたのだと嬉しくなりました。「危機はいつでもあるし、問題だらけ。それをどう解決していくかが大切」と小笠原氏は自信にあふれた顔でそう語ってくれました。

事業継承の成功を決めるのは

 本社のほかに5つの営業所を抱える同社。現在では事業の計画についてもそれぞれの営業所内で立てています。社長が考えるのは経営理念と社是のみ。社員に全幅の信頼を置いていることがここからも感じられます。

 「うちの事業継承が成功だったかどうかはわからない。でもそれを決めるのは社員さんと現会長ということは確実」と断言する小笠原氏に、何があっても社長が背負うという覚悟が見えました。
社員みんなと

会社概要

設 立:1965年9月
資本金:1,000万円
事業内容:各種広告、サイン制作、デザインSP、展示装飾、企画施工、LED・ネオン工事、モニュメントなど
従業員数:49名
本社所在地:三重県桑名市江場481
      *ほかに東北営業所、東京営業所、名古屋営業所、大阪営業所、九州営業所
TEL:0594-21-3211(本社)
FAX:0594-21-3214(本社)
URL:http://www.kinseido.co.jp/

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