シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第19回】先代の急逝 支えてくれたのは父と共に歩んできた幹部たちだった (株)都城印刷 社長 田中 賢一氏(宮崎)(2016.08.31)

田中賢一社長 (株)都城印刷 社長 田中 賢一氏(宮崎)

 2011年1月、社長であった父親が事故で急逝し、田中氏は急きょ社長に就任しました。「今まで先代社長が行ってきた決断を今度は自分がしなければいけないと思うと不安でいっぱいだった」と田中氏は振り返ります。「役員をはじめ社員の支えがあり、今がある。今朝は机の上に新規開拓や制作勉強会の報告書が置いてあった。新年度を迎えたばかりだが、今期の経営方針に従って社員が早くも動き出している」―と笑顔で語る田中氏。

 1951年満州から戻ってきた祖父が創業した(株)都城印刷は、製作から製本までを行う総合印刷業です。2009年から「ぷりんと本舗」として、個人のお客さまへのサービスも始めました。屋外広告業登録資格を取得し、簡易的な看板作成や、カッティングシート、レーザー加工などの特殊印刷も行っています。

同友会入会が経営者への第一歩

社内  「同じ業種で勉強してほしい」「他の釜の飯を食べてきてほしい」との先代社長の願いから、2003年に知人の紹介で大阪の印刷会社に就職しました。約1年後、創業者である祖父が病気で他界。祖父を失い、力を落としている父を見て、少しでも早く力になりたいと思い、(株)都城印刷に入社しました。

 今年入社42年になる常務取締役の田之上氏は、入社したばかりの田中氏を見て、「23歳という若さもあるが、頼りないな。大丈夫だろうか」と心配したそうです。そこで、田之上氏は商工会議所やライオンズクラブなど、いろいろな会を見に行き、「年齢も業種も違う経営者が本音、本気で叱咤激励してくれる。同友会ならよい経営者に鍛え上げてくれそうだ」と田中氏に宮崎同友会への入会を勧めました。

 2006年10月宮崎同友会の経営フォーラムに参加し、自分と同じように苦悩している後継者の生の話を聞き、すぐに入会しました。

やりがいを持って働き続けられる会社へ

 当時は若い人が、入社して3年たってやっと仕事を覚えたというころに辞めていくという状況が相次いでいました。若い社員が「労働環境が悪い」「この会社では将来が描けない」とグチをこぼしているのを聞いたこともあります。また、言われたことを言われた通りにこなすという受け身の姿勢が多く見受けられ、「なんとか若い人がやりがいを持って働き続けられる会社にしたい」と決意。社労士の指導のもと、労働環境に関する意見箱の設置や個人面談、ワークライフバランスについての社内セミナーの開催、ノー残業デーの設定などを行いました。また、残業時間の平均化のために、特定の人にしかできない仕事をなくそうと一人ひとりの技術力向上にも取り組んでいきました。

 先代社長は、田中氏が同友会や社労士から学んだことを社内で取り組みたいと提案すると、「いいと思うならやってみろ」と常に受け入れてくれました。また、田之上常務は「ちょっと話をしよう」と幹部を集めたり、社員と話し込みをしたりしました。先代社長と同じように田中氏の提案を決して否定しなかった田之上常務。「やりたいと思って始めたことで失敗しても、それは絶対に取り返せる。失敗を怖がるよりも常に挑戦する社長でいてほしいし、そういう会社になってほしい」と思っていたからです。「田之上常務が社内できめ細やかに目配り、気配りをしてくれたおかげで、情報共有や挑戦する社風ができてきた」と田中氏。

 今では退職する人が減り、毎年新卒採用も行っています。2013年の新入社員研修会&合同入社式に参加した新入社員は、今年宮崎営業所長代理となりイキイキと働いています。

自己変革し、経営者へ

社内2  先代社長が亡くなる前年の12月に、年が明けて2月からは取締役統括部長から専務取締役に就任し、本格的に事業継承をしていこうと内示をもらっていました。これを機に同友会の「第10期経営指針をつくる会」を受講し、少しでも思いに応えられるように精進していこうと決意した矢先、先代社長が亡くなりました。49日の法要を終えてすぐ、不安を抱えながら迎えた第1講。仲間やサポーターが心の支えになっていました。先代の仕事ぶりや交わした言葉を思い出しながら経営理念をつくりあげました。「つくる会」卒業後、この経営理念をもとにした経営指針を毎年欠かさず発表しています。

 田之上常務は「社長は『つくる会』を卒業した頃から、会社のめざすところや社長の思いを迷いなく社員に伝えるようになってきました。今はとても頼もしく感じています。野球に例えると、社長が監督で、私はキャプテン。社長のめざす会社になるために、私はチームをまとめていく役目を担ってきました。安心して定年退職をすることができます」と話します。

 田中氏は、「部長だったころは会社を守る、社員を守るということを上辺だけでとらえていた。社員が定年退職を迎えたときに都城印刷で働いてよかった、充実した人生だったと言ってもらえるような会社にしていきます」と決意を新たにしています。

会社概要

設 立:1980年 
資本金:1,500万円
年商:4億4,600万円
事業内容:総合印刷業
社員数:54名(内パート・アルバイト1名)
所在地:宮崎県都城市早鈴町1618
TEL:0986-22-4392
FAX:0986-22-4891
URL:http://mpcr.jp

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