シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第26回】“よい会社に変わり続けること”を変えない!『情』を引き継いだ事業承継 (株)彩―いろどり― 代表取締役会長 林田 達氏・代表取締役社長 林田 選氏(福岡)(2016.10.26)

林田達会長と選社長 (株)彩―いろどり― 代表取締役会長 林田 達氏・代表取締役社長 林田 選氏(福岡)

はじめに

 1977年に福岡市で創業した広告企画制作会社、(株)彩(いろどり)(林田達会長・林田選社長、福岡同友会会員)は創業以来、ワンオーダーですべてを任せられる制作会社をめざし、企画からデザイン、コピー、パッケージ、イラストなど、総合的なクリエイティブ力で、届く、響く、成果を出すデザイン制作を行っています。2014年よりWEB事業部をスタートさせ、「ONE ORDER CREATIVE」を進化させています。

あらかじめ決められた(?)後継者

エントランス  林田達現会長が1977年3月、37歳で創業してから2カ月後、長男の林田選氏(現社長)が誕生しました。現会長の達氏は当時を「とにかく食べさせるために必死で働いた」と振り返ります。

 そんななか、選氏は幼いころから近所のお絵かき教室に通っていました。幼稚園から中学校3年生まで通い、「絵画コンクール荒らし」と言われるほどメキメキと力をつけ、才能を発揮していました。選氏は「今思えば、お絵かき教室は会長に強制的に通わされていたのでは?」と笑いながら当時を振り返ります。しかし、高校受験をする際は、母親の反対を押し切って自ら「デザイン科のある高校に通いたい」と申し出て、見事合格しました。達氏は「この時点で、息子が後を継ぎたいと思える企業づくりをめざした」と考えていました。

「人生はバラ色だ!」のはずが、過酷な修行へ…

 選氏が高校3年生のころ、達氏から「(このままこの道を行けば)お前の人生はバラ色だ!」と宣言されます。選氏はそれを真に受けたわけではありませんが、絵を書くことが何より好きで、「デザイナーになりたい」という思いは変わらず、大学は芸術学部を選択します。

 大学卒業後の3年間は東京の広告制作会社で働き、26歳で(株)彩へ入社しました。一般の社員からのスタートと告げられてはいましたが、「後継者」として“継ぐつもりで帰ってきた”ため、中途採用新入社員として「トイレ掃除を社員に教わった」ことが、苦い経験として今も残っています。

 広告企画制作会社は常に多忙です。社員時代は日夜、仕事に追われ、神経性胃腸炎になったこともありました。しかしこれも会長の方針として“社員の気持ち、苦労を分かるため”、そしてクリエーターとして技術を磨くためにも必要なことでした。クリエーターはいわば「芸術的職人」であり、社長の息子であっても技術がないと認められません。技術がないと社員がついてこないのです。そのため、必死の思いで修行に励みます。「当時は、『全然バラ色の人生じゃない!』と思っていました。もちろん今となってはあの下積み時代があったからこそです」と、選氏は振り返ります。30歳で専務になり、経営指針書作成の責任者を任され、リレーのバトンのように業務が引き継がれていきました。

先駆的な“多事業部制”を三位一体経営と「情」で

 創業当時の広告制作業界は「グラフィックだけ」「パッケージデザインだけ」など、得意分野が会社によって違いました。同社はそれをまとめ上げ、「ワンオーダーですべての広告制作に対応すること」を強みとしています。多事業部制をとり、同社だけで完結できる体制を整えています。組織化が難しいと言われる業界では当時、先駆的な取り組みでした。

 そんななか、社員の離職率の高さに悩んでいた達氏は1991年に福岡同友会へ入会し、同友会が掲げる三位一体の経営(経営指針・採用・社員教育)に取り組みだしました。社員教育については、「どんな人を採用するか」が非常に重要です。これについては経営指針書を各部門が主体的に作成することで、全社的に「どんな人を採用すべきか」を共有することができます。また、経営指針書を社員が主体的に作成すること自体が、社員教育にもつながっています。社員が会社の将来と自分の将来を考えるきっかけとなり、「もっとこうしたい」という意見を、公的に言える環境となっているのです。

 達氏が同友会で学ぶ中で特に強く感じたことは「社員共育は社長教育から」ということです。どんな社員であってほしいかの前に、どんな社長であるべきか。社長から変わることが大事ということです。達氏の父は「仕事ができないのは男じゃない、情がないのは人間じゃない」といつも伝えていました。それは選氏へもいわば家訓として伝わっています。「社員に情をもって接すること、気持ちを理解することが、彩の社員教育の原点」と会長、社長ともに考えています。達氏が選氏に引き継いでほしい思いは「社員を大切にし、育てる経営者」であることです。

「彩はこれからも変わりません」

 選氏が35歳のとき、現在の会長・社長の体制に変わりました。

 支部例会で報告者として登壇した選氏は、傍聴していた社員に対してこう告げました。「彩はこれからも変わりません」。これは、社員に対して情を持つ、向き合う、応援するという会社の思いはこれからも変わらない、ということです。

 広告制作業界はよく転職がある業界です。育った社員が離れていくことは会社として痛手ですが、ステップアップしたいと思う社員の気持ちを大事にし、応援しています。達氏が70歳の誕生日を迎えた際、卒業していった社員約50名が一堂に会して「古希を祝う会」を催してくれました。退社しても縁を切らない、情をもって教育してきたことの積み重ねがもたらした出来事でした。

 ある社員が「待機児童問題」に直面したときのことです。子連れ出勤をし、社内にベビーベッドを設置することとなりました。選氏に不安もありましたが、気づけば社員みんなで面倒を見ていました。新卒者も長く働ける、女性も働きやすい環境をめざし、社員の活躍と成長を中心に考え「よい会社へ変わり続けること」は変わらない、魅力ある会社をめざしています。
達会長と社員さん

会社概要

設 立:1977年
事業内容:広告企画制作(デザイン事業部、商品開発事業部、プランニング事業部、編集企画事業部、WEB事業部)
所在地:福岡市中央区天神5-7-3 福岡天神北ビル5F
従業員数:29名
TEL:092-721-6656
URL:http://www.irodori-in.co.jp

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