シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第32回】対立の中での挑戦を続け、新しい整備会社へ 日章自動車興業(株) 取締役会長 小林 邦明氏・代表取締役 小林 勉氏(埼玉)(2016.12.14)

 小林邦明会長と小林勉社長 日章自動車興業(株) 取締役会長 小林 邦明氏・代表取締役 小林 勉氏(埼玉)

思いもしなかった入社

 日章自動車興業(株)(小林邦明取締役会長・小林勉代表取締役社長、埼玉同友会会員)は、40年前に小林勉社長の父、小林邦明会長が創業しました。タクシーや運送、レンタカーなどの法人企業を主とした自動車整備工場として40年の実績と信頼を積み重ねてきました。近年は、現社長の勉氏のもと、新車・中古車販売や自動車保険までを含めたお客さまのカーライフをトータルでカバーする企業へとさらに業務を拡大しています。

 勉氏は大学で電気工学を学びましたが、同社への入社は視野になく、次男でもあり、会社を継ぐことはまったく考えていませんでした。大学卒業後は大手企業でエンジニアとして勤務していましたが、30歳を過ぎて、起業をするほうが向いているのでは、と考え始めたころに父の邦明氏から「会社を継がないか?」と打診を受けます。「社長になれば、自分の思うように会社経営ができる」と言われ、それも悪くないなと入社しました。しかし、すぐに後悔せざるを得ない事態に陥りましたと当時を振り返ります。

日々繰り返される口論と悪化する社内風土

社内の風景01  エンジニアとしての経験から、「これはどうなっているのだ?」と原因を追究しようとしたり「こんなやり方ではだめだ」と、問題点を指摘したりしたことが、当事の社長である邦明氏には受け入れがたく、「オレに口出しするな」と激怒し、入社してすぐに対立するようになってしまいました。

 勉氏は整備のさまざまな資格を取得し、主任から専務となっても邦明氏をはじめとする社内の雰囲気は「専務は現場あがりではないから、だめなんだ」という、空気がまん延していました。当時は長く勤めている職人も多く、それぞれの手順で点検作業などをしていたので、見落としなどのトラブルがたびたび起きていました。そういったトラブルへの改善提案をしても、社員は素直には受け入れず、また社長の邦明氏とも意見が食い違うので混乱が生じ、社内は一つの方向性にまとまらず、雰囲気はさらに悪いものへとなっていきました。

 社内で邦明氏と勉氏の意見が食い違うと、途端に言いあいが始まり「お前を雇ったのは一生の間違いだった!オレに盾つく人間はクビだ!」と社長室のみならず、社員の前でも、大声でののしりあう日々か続きました。当時は独身で同居だったため、その言いあいは帰宅後も延々と夜中まで続きました。

 入社当初から、邦明氏より40歳になったら、社長職を譲ると言われていました。いざその時が近づいてくると、邦明氏に対しての「もう少し頑張ってみれば」という周囲の声に、社長交代は延期と邦明氏は言うようになりました。結局家族会議の末に、奪い取るように実印を渡してもらって、いよいよ勉氏へのバトンタッチとなりました。

指針づくりで気づいた「何のための経営か」

 邦明氏の時代は仕事をさばけなくて断っているくらいでしたが、勉氏が社長に就任したころには、売上は下降線となり、競合するチェーン店も多くなり、昔からの顧客だけではやっていけない状況になっていました。

 どうすればいいのか、模索する中で転機になったのは2008年の埼玉同友会への入会でした。入会後まもなく、経営指針セミナーを勧められ、参加しましたが、当時は会社の雰囲気も悪く、借金を多く抱えた中での受講でした。「何のために経営しているのだ?」と問われて「それは、金です」と即答しました。「そんなんじゃだめだろう」との経営指針セミナーのスタッフから反論に「だって会社がつぶれそうなんですよ!」「いや経営には想いが大切なんだ」「想いじゃ食えない!」と応酬が繰り返されて、それはその後の経営指針セミナーで語り継がれるほどの激しいものでした。

 悩みながら何度も作り直し、やがて社員の気持ちにも寄り添い、自身も納得できる経営理念ができました。

 理念ができて「私もぶれないから、皆もぶれないでくれ」と言えるようになりました。以前は問題が起きたときに、個人のやり方を責めてしまっていましたが、理念に立ち返り「理念と違うのでは?」とみんなの共通の認識ができるようになりましたねと勉氏は言います。   

5Sの取り組みで社内風土が変化

 社内の風景02  その後、社内の5S活動にも取り組み、この取り組みは社内の整理整頓のみならず、さまざまな効果をもたらしました。その中でも社員さんが自信を持てるようになったことは大きいですと勉氏は語ります。現在は毎朝、全員でこの5Sに取り組む時間をつくり、5S活動は日常業務の一部となっています。その評判が広まり、今では月に1、2回の会社見学があります。中でも海外からはすでに10回以上の訪問もあり、回数を重ねるにつれ、社員による企業案内もレベルが上がり、今ではすべての社員が、同じように説明ができるようになりました。整備は直して当たり前という世界で、あまり褒めてもらうような機会がなかったのですが、会社見学に訪れる人が増えていく中で、人から褒められる機会も多くなり、「注目されているな」という気持ちが芽生えてきました。また、この5S活動で社内のコミュニケーションも取りやすくなり社内のムードも明るくなっていきました。

車のトータルサポートをめざして

 また、2年半前から、整備オンリーから脱却をめざして車両販売も手掛けるようになりました。また保険の業務の取り扱いも始め、車に関してのトータルサポートができるようになりました。

 整備だけでは顧客が修理や点検の必要があるときまで、待っているしかなかったのですが、車の販売から携わることで、最初から、さまざまな情報提供ができるようになってきました。社員には「値引きして」と言われるのは正当に評価されていないからだよと言っています。こんなにやってもらって、この値段でいいのと言われるレベルをめざしているのです。

 勉氏が代表になって2年が過ぎるころから 邦明氏は徐々に出勤回数が減って、今ではたまに様子を見に来る程度になりました。父から褒められることはないのですが、「俺らの時代はアナログだったけれど、これからはIT化を進めるべき」などと口にするのを耳にすると、私のやり方を認めてくれているのかなと思いますと、勉氏は笑顔で語りました。父から息子へ託された日章自動車は、新しい社風をつくり、新しい日章自動車へと挑戦を続けています。
社員の皆さんと

経営理念

私たちは5Sを徹底した自動車整備を通して、お客様に万全の安全・安心を提供します
(5S:整理、整頓、清掃、清潔、躾)
私たちは常にお客様の期待を上回るプロの技術集団として、地域社会の発展に貢献します
私たちは1+1=∞(無限大)とするチームワークを
“六方よし”のために発揮し、共存共栄を目指します
(六方よし:お客様、取引業者、会社、社員、家族、世間の全てがよし)

会社概要

創 業:1978年
資本金:1,500万円 
事業内容:自動車整備・販売、各種保険販売 
従業員数:12名
所在地:埼玉県さいたま市南区辻8-24-16
TEL:048-863-8006
URL:http://www.nissho-jidosha.co.jp

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